令和8年6月24日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第651回)で、先進医療会議から4技術の科学的評価結果が報告されました。先進医療の費用は、保険給付される部分と保険給付されない部分が混在するため、医療機関にとっても患者にとっても把握しにくい構造です。本号では、報告された4技術について、対象患者・実施医療機関・費用の3点を整理します。
今回報告された4技術は、すべて先進医療として「適」と評価され、すでに告示が適用されています。先進医療Aには、自然流産・死産の原因を調べる「流死産絨毛・胎児組織NGS染色体検査」が加わりました。先進医療Bには、転移性脳腫瘍・ユーイング肉腫・心臓疾患を対象とする治療3技術が加わりました。先進医療Bの3技術は、研究費や企業が先進医療に係る費用の全部または大部分を負担するため、患者が支払う先進医療分は0円から5万3千円に抑えられています。ただし、保険給付される部分の一部負担金は、これとは別に発生します。
先進医療A:流産・死産の原因を調べるNGS染色体検査
先進医療Aに加わったのは、流産・死産した組織の染色体を次世代シーケンサー(NGS)で解析する検査です。この検査は第152回先進医療会議(令和8年3月5日)で評価され、令和8年5月1日から告示が適用されています。
先進医療Aは、主に未承認・適応外の医薬品等を使わない技術を対象とする区分です。具体的には、未承認・適応外の医薬品、医療機器、再生医療等製品を使わない技術が該当します。また、未承認・適応外の体外診断薬・検査薬・検査目的の医療機器を使う技術のうち、人体への影響が極めて小さいものも該当します。
流死産絨毛・胎児組織NGS染色体検査は、自然流産や死産を経験した患者を対象とします。検査では、流産・死産した絨毛や胎児の組織から染色体の異常を調べます。解析には「OVUS POC解析システム」を用います。申請医療機関は藤田医科大学病院です。
この検査の先進医療に係る費用は4万8千円です。追加で倍数性検査(染色体のセット数の異常を調べる検査)が必要な場合は1万5千円が加わり、合計6万3千円になります。一方、保険給付される費用と一部負担金は、流産・死産の状況によって次のように異なります。
ア.流産(自然排出)の場合
保険給付される費用:2万円
一部負担金:9千円
イ.流産手術を実施した場合
保険給付される費用:4万7千円
一部負担金:2万円
ウ.死産の場合
保険給付される費用:13万7千円
一部負担金:5万9千円
先進医療B:がんと心臓疾患を対象とする3つの治療技術
先進医療Bに加わった3技術は、転移性脳腫瘍、ユーイング肉腫、心臓疾患の外科治療を対象とします。3技術は第153回・第154回先進医療会議(令和8年4月9日、5月7日)で評価されました。先進医療Bは、未承認・適応外の医薬品等を使う技術や、重点的な観察・評価が必要な技術を対象とする区分です。
整理番号183:初発・再発転移性脳腫瘍に対する光線力学的療法
光線力学的療法は、腫瘍に集まる薬剤を投与した後にレーザー光を当て、腫瘍細胞を破壊する治療です。対象は、開頭腫瘍摘出術を要する転移性脳腫瘍のうち、初発のもの、または放射線治療後に再発したものです。使用する医薬品・医療機器は、「注射用レザフィリン100mg」と「PD レーザ BT」(Meiji Seika ファルマ株式会社)です。申請医療機関は国立がん研究センター中央病院で、告示適用日は令和8年5月1日です。
整理番号184:レゴラフェニブ併用多剤化学療法及びビノレルビン・シクロホスファミド維持療法
この治療は、多剤併用の化学療法にレゴラフェニブ(スチバーガ錠)を加え、その後ビノレルビンとシクロホスファミドで維持療法を行うものです。対象は、初発のユーイング肉腫と、ユーイング肉腫に類似した円形細胞肉腫です。使用する医薬品は、スチバーガ錠、ロゼウス静注液、エンドキサン(錠・注射用)、オンコビン注射用、アドリアシン注射、注射用イホマイドです。申請医療機関は国立がん研究センター中央病院で、告示適用日は令和8年5月1日です。
整理番号185:心臓移植レシピエント由来凍結保存同種組織を用いた外科治療
この治療は、心臓移植を受けた患者(レシピエント)から得た組織を凍結保存し、他の患者の心臓手術に用いるものです。対象は、感染性心内膜炎や人工弁感染などの感染性心臓疾患、肺動脈閉鎖や狭窄を有する先天性心疾患(ファロー四徴症など)、自己肺動脈弁を用いた大動脈基部置換術(ロス手術)などです。また、大動脈基部置換術後や右室流出路再建術後の弁機能不全・仮性動脈瘤に対する再手術も対象です。使用する医薬品・医療機器はありません。申請医療機関は国立循環器病研究センターで、告示適用日は令和8年6月1日です。
費用負担:研究費が先進医療分の患者負担を軽減
先進医療の費用は、「先進医療に係る費用」「保険給付される費用」「一部負担金」の3つで構成されます。このうち患者が支払うのは、先進医療に係る費用と一部負担金の2つです。
先進医療に係る費用は、保険給付されない費用です。この費用について、医療機関は患者に自己負担を求めることができます。ただし、研究費や企業が負担する場合、患者負担は減ります。
保険給付される費用は、通常の診療と共通する部分(診察・検査・入院など)のうち保険者が負担する額です。この部分は「保険外併用療養費」として保険から給付されます。一部負担金は、この共通部分のうち患者が負担する額です。一部負担金には高額療養費制度が適用されるため、自己負担限度額を超えた分は払い戻しなどの対象となります。一方、先進医療に係る費用は高額療養費制度の対象外です。
4技術の費用を並べると、先進医療Bの研究費負担の大きさがわかります。ただし、先進医療分の患者負担が0円でも、一部負担金は別に発生します。
整理番号358(先進医療A):流死産NGS染色体検査
先進医療に係る費用:4万8千円(追加の倍数性検査が必要な場合は合計6万3千円)
保険給付される費用:2万円〜13万7千円(流産・死産の状況による)
一部負担金:9千円〜5万9千円(流産・死産の状況による)
整理番号183(先進医療B):転移性脳腫瘍の光線力学的療法
先進医療に係る費用:51万8千円(全額研究費負担のため患者負担は0円)
保険給付される費用:215万9千円
一部負担金:93万1千円
整理番号184(先進医療B):ユーイング肉腫の化学療法
先進医療に係る費用:377万5千円(全額研究費・企業負担のため患者負担は0円)
保険給付される費用:988万円
一部負担金:420万円
整理番号185(先進医療B):凍結保存同種組織による外科治療
先進医療に係る費用:81万6千円(研究費で76万3千円を負担するため患者負担は5万3千円)
保険給付される費用:454万9千円
一部負担金:196万5千円
上記の金額は、申請医療機関が記載した「典型的な1症例」の費用を四捨五入したものです。そのため、実際の費用は患者の状態や治療内容によって変わります。
まとめ:先進医療4技術の対象と費用を押さえる
中医協総会(第651回)では、先進医療4技術がすべて「適」と評価されたことが報告されました。先進医療Aには、流産・死産の原因を調べるNGS染色体検査が加わりました。先進医療Bには、転移性脳腫瘍、ユーイング肉腫、心臓疾患を対象とする治療3技術が加わりました。先進医療Bの3技術は研究費や企業の負担により、患者が支払う先進医療分が0円から5万3千円に抑えられています。ただし、保険給付される部分の一部負担金は別に発生します。
参考資料:中央社会保険医療協議会 総会(第651回)資料 総-7「先進医療会議からの報告について」(令和8年6月24日)










