令和8年7月8日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第652回)で、薬価基準から削除する9品目が報告されました。薬価基準から削除された品目は、経過措置期間が終わると保険請求ができなくなります。本号では、削除される9品目の内容、薬価削除の手続きの仕組み、医療機関・薬局に必要な対応を解説します。
今回の9品目は、製造販売業者の承継に伴う薬価削除であり、変わるのは製造販売業者と品目名だけです。対象は、エイワイファーマの「AY」品9品目であり、陽進堂ホールディングスの「YD」品へ切り替わります。承継に伴う薬価削除は、代替品が存在するため学会確認が不要であり、経過措置期間は令和9年3月末までです。医療機関・薬局は、令和9年3月末までに採用品目と医薬品マスタを「YD」品へ更新する必要があります。
削除対象は「AY」品9品目、「YD」品へ名称変更
削除対象の9品目は、いずれも注射薬・輸液であり、変更されるのは製造販売業者と品目名だけです。以下では、対象品目の内訳、変更前後の対応、変更内容の範囲を順に説明します。
対象品目の内訳は、5成分・9品目です。内訳は、ナファモスタットメシル酸塩注射用が4規格、ヘパリンカルシウム注が2規格、アルギニン点滴静注・ブドウ糖注射液・生理食塩液が各1規格です。
変更前後の対応は、「AY」から「YD」への置き換えで整理できます。変更前の製造販売業者はエイワイファーマであり、変更後の製造販売業者は陽進堂ホールディングスです。9品目の対応は次のとおりです。
(変更前の薬価削除予定品目 → 変更後の品目)
アルギニン点滴静注30g「AY」 → アルギニン点滴静注30g「YD」
ナファモスタットメシル酸塩注射用10mg「AY」 → ナファモスタットメシル酸塩注射用10mg「YD」
ナファモスタットメシル酸塩注射用50mg「AY」 → ナファモスタットメシル酸塩注射用50mg「YD」
ナファモスタットメシル酸塩注射用100mg「AY」 → ナファモスタットメシル酸塩注射用100mg「YD」
ナファモスタットメシル酸塩注射用150mg「AY」 → ナファモスタットメシル酸塩注射用150mg「YD」
ブドウ糖注射液「AY」5% → ブドウ糖注射液「YD」5%
ヘパリンカルシウム注1万単位/10mL「AY」 → ヘパリンカルシウム注1万単位/10mL「YD」
ヘパリンカルシウム注5万単位/50mL「AY」 → ヘパリンカルシウム注5万単位/50mL「YD」
生理食塩液「AY」 → 生理食塩液「YD」
変更内容の範囲は、資料上「製造販売業者及び品目名」に限られています。成分と規格は変更前後で同じです。つまり、今回の薬価削除は供給停止ではなく、同じ医薬品の「看板の掛け替え」にあたります。
承継に伴う削除は学会確認なしで経過措置へ移行
承継に伴う薬価削除は、学会確認を経ない簡素な手続きで進み、告示改正後の最初の3月末まで経過措置が設けられます。この手続きは、令和6年8月7日の中医協総会で示された「薬価削除等手続きの明確化」に基づきます。以下では、手続き明確化の背景、2つの手続きの違い、今回の9品目の日程を順に説明します。
手続き明確化の背景は、後発医薬品の「少量多品目生産」の適正化です。令和6年5月の「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会」報告書は、供給停止・薬価削除のプロセスを明確化・簡素化するよう求めました。これを受けて厚生労働省は、使用期限の設定や経過措置品目への移行を含めて、薬価削除手続きを整理しました。
薬価削除の手続きは、削除の理由によって2つに分かれます。1つ目は、医療上の需要がなくなったなどの理由で、製造販売業者が供給停止を希望する場合です。2つ目は、承継、代替新規、G1撤退に伴い削除が必要な場合です。2つの手続きの違いは次のとおりです。
①供給停止を希望する品目
学会確認:必要(原則2回。シェアが一定割合以下なら1回)
告示改正の時期:毎年3月・11月
経過措置期間:告示改正後の最初の3月末まで
期間の延長:申請があれば中医協報告後、翌年度末まで(1年)
②承継等に伴い削除する品目
学会確認:不要(代替品があるため)
告示改正の時期:定期的に実施
経過措置期間:告示改正後の最初の3月末まで
期間の延長:申請があれば中医協報告後、翌年度末まで(1年)
②の「承継等」には、3つの類型があります。承継は、製造販売業者の変更です。代替新規は、承継ができない場合などに、ほぼ同じ内容の品目を新たに承認・収載し、元の品目を整理する手続きです。G1撤退は、後発医薬品への置換えが進んだ長期収載品(G1品目)について、後発医薬品の増産を調整した上で撤退する手続きです。
今回の9品目は、②の承継に該当するため、7月頃に経過措置へ移行する予定とされました。経過措置期間は、告示改正後の最初の3月末である令和9年3月末までです。この期間中は、「AY」品も引き続き保険請求できます。ただし、製造販売業者が延長を申請した場合に限り、中医協への報告を経て、経過措置が1年間延長される仕組みもあります。今回の資料には延長の記載はないため、令和9年3月末を期限として準備することが基本です。
中医協への報告は、告示改正予定時期の1か月程度前を目安に行うこととされています。中医協への報告は、医療現場にとって切替え準備を始める合図といえます。
医療機関・薬局は令和9年3月末までに切替えを
医療機関・薬局は、令和9年3月末の経過措置期限までに「YD」品への切替えを終える必要があります。切替えで確認すべき点は、在庫と発注、医薬品マスタ、院内への周知の3つです。
在庫と発注では、「AY」品の在庫を期限内に使い切る計画が必要です。期限を過ぎて残った「AY」品は、保険請求の対象外になります。発注先や卸の取扱品目を確認し、順次「YD」品の発注へ切り替えましょう。
医薬品マスタでは、「YD」品の登録が必要です。品目名が変わるため、レセプトコンピュータや電子カルテの登録内容も更新しなければなりません。期限直前の更新はレセプト返戻のリスクを高めるため、早めの登録と旧品目の使用終了日の設定が有効です。
院内への周知では、名称の変更点と期限を関係部署へ伝えることが重要です。成分と規格は同じでも、表示名が変わると処方入力や払出しで迷いが生じます。薬剤部門から医師・看護師などの関係部署へ、対応表とあわせて案内すると混乱を防げます。
まとめ:中身は同じ、期限は令和9年3月末
第652回中医協総会で報告された薬価削除は、製造販売業者の承継に伴うものであり、医薬品の中身は変わりません。対象はエイワイファーマの「AY」品9品目であり、陽進堂ホールディングスの「YD」品へ切り替わります。承継に伴う薬価削除は学会確認が不要であり、経過措置期間は令和9年3月末までです。医療機関・薬局は、在庫・医薬品マスタ・院内周知の3点を、期限までに計画的に進めましょう。
参考資料
中医協 総-6(令和8年7月8日)「薬価基準から削除する品目について」
中医協 総-6参考(令和8年7月8日)「薬価削除等手続きの明確化について」(中医協 総-4、令和6年8月7日)










