2026年(令和8年)7月22日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会第653回で、新たに保険適用される医療機器4製品の区分と償還価格の案が示されました。これら4製品は、経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)、植込型除細動器、開胸手術、冠動脈の画像検査という幅広い場面で使われるため、医療機関は算定ルールを早めに把握する必要があります。本稿では、総会資料「総-1 医療機器の保険適用について」をもとに、4製品の償還価格、新しい機能区分、算定上の注意点を整理します。
4製品は、いずれも区分C1(新機能)として2026年9月1日に保険収載される予定です。既存の2製品は、チャレンジ申請によって有用性加算5%を得て、償還価格が引き上げられます。新規の2製品は、新しい機能区分のもとで、補正加算なしの価格で収載されます。費用対効果評価の対象は2製品(サピエン3 Ultra RESILIAと、Cobaltシリーズのうち2品目)で、企業希望価格を下回る価格がついた製品は3製品です。
4製品の概要:すべてC1(新機能)で9月1日収載
今回の4製品は、すべて区分C1(新機能)に分類され、2026年9月1日に収載される予定です。区分C1とは、新しい機能区分の設定や既存区分の見直しが必要で、技術料は既存のものを用いる医療機器を指します。4製品の全体像は次のとおりです。
① エドワーズ サピエン3 Ultra RESILIAシステム
企業名:エドワーズライフサイエンス合同会社
保険償還価格:4,730,000円(2028年5月31日までは4,940,000円)
算定方式:類似機能区分比較方式
補正加算:有用性加算5%
外国平均価格との比:0.90(期限付価格は0.94)
② Cobalt MRI ICDシリーズ、Cobalt MRI CRT-Dシリーズ(4品目)
企業名:日本メドトロニック株式会社
保険償還価格:2,720,000円~4,960,000円
算定方式:類似機能区分比較方式
補正加算:有用性加算5%
外国平均価格との比:0.46~0.74
③ オスピカ TMA
企業名:平和物産株式会社
保険償還価格:79,600円
算定方式:原価計算方式
補正加算:なし
外国平均価格との比:0.96
④ デュアルビュー
企業名:テルモ株式会社
保険償還価格:132,000円
算定方式:類似機能区分比較方式
補正加算:なし
外国平均価格との比:記載なし
償還価格の算定方式は、2つの方式に分かれます。類似機能区分比較方式は、機能が近い既存の機能区分の価格を基準に、加算を上乗せして価格を決める方式です。原価計算方式は、製造原価や販売費などを積み上げて価格を決める方式です。4製品のうち3製品が類似機能区分比較方式、オスピカ TMAだけが原価計算方式で算定されました。
外国平均価格との比は、日本の償還価格が海外価格に比べて高すぎないかを確認する指標です。外国平均価格は、米・英・独・仏・豪のうち価格が把握できた国の平均で、オスピカ TMAはドイツ1か国の価格のみです。比が1を下回ると、日本の価格が外国平均価格より安いことを意味します。今回、比が示された3製品は、いずれも1を下回りました。
既存2製品:チャレンジ申請で有用性加算5%
既存の2製品は、チャレンジ申請が認められ、有用性加算5%の上乗せで償還価格が引き上げられます。チャレンジ申請とは、保険収載後に集めた臨床データをもとに、企業が改めて有用性の評価を求める仕組みです。2製品はいずれも、2026年6月の保険医療材料等専門組織で臨床上の有用性が認められました。この再評価に合わせて、2製品とも機能区分が見直されます。
エドワーズ サピエン3 Ultra RESILIA:期限付きで2段階の価格
価格:サピエン3 Ultra RESILIAの償還価格は、2028年5月31日までは4,940,000円、それ以降は4,730,000円です。この製品は、大動脈弁狭窄症に対するTAVIで使うバルーン拡張型の人工生体弁(ウシ心のう膜弁)です。基準となる機能区分は「182 経カテーテル人工生体弁セット」のバルーン拡張型(期限付改良加算なし4,510,000円、期限付改良加算あり4,720,000円)で、これに有用性加算5%を加えて算定されました。2028年5月31日までの価格には、一定期間に限り改良を評価する「期限付改良加算」による評価が上乗せされています。
新区分:機能区分182のバルーン拡張型は、「標準型」と「特殊型」の2区分に再編されます。特殊型の要件は、心膜にキャッピング処理とグリセリン処理が施されていることです。
根拠:有用性加算の根拠は、臨床上重要な安全性指標で類似材料より高い安全性が示されたと評価されたことです。企業提出資料によると、TAVI弁のレジストリー(TVT-Registry)で患者背景をそろえた各群4,598例を後ろ向きに比較し、本製品群が前世代品群を上回りました。具体的には、退院時の平均圧較差が低く(9.3 vs 12.1 mmHg)、重度の人工弁患者不適合も少なく(6.6% vs 11.9%)、術後1年時点の全死亡率も低い(7.6% vs 9.6%)結果でした。外科的生体弁の比較でも、RESILIA弁は術後8年時点の重度の構造的弁劣化が少ない結果でした(0.7% vs 9.5%)。
算定上の注意:関連する技術料には、K555-2 経カテーテル弁置換術(経心尖大動脈弁置換術61,530点、経皮的大動脈弁置換術39,060点)が示されています。特殊型を期限付改良加算込みの価格で算定できるのは、留意事項により2028年5月31日までに限られます。
Cobalt MRI ICD/CRT-Dシリーズ:iATP機能で新区分
価格:Cobalt MRIシリーズ4品目の償還価格は、2,720,000円から4,960,000円です。このシリーズは、心室頻拍などを治療する植込型除細動器(ICD)と、両室ペーシング機能付き植込型除細動器(CRT-D)です。各品目の価格は、それぞれの既存区分の価格を基準に、有用性加算5%を加えて算定されました。
Cobalt XT VR MRI:2,720,000円(基準:117 植込型除細動器(Ⅲ型)・標準型 2,580,000円)
Cobalt XT DR MRI:2,800,000円(基準:117 植込型除細動器(Ⅴ型) 2,660,000円)
Cobalt XT HF CRT-D MRI:4,550,000円(基準:144 単極又は双極用・抗頻拍ペーシング機能付き 4,350,000円)
Cobalt XT HF Quad CRT-D MRI:4,960,000円(基準:144 4極用・抗頻拍ペーシング機能付き 4,750,000円)
※資料上の償還価格は、基準価格に5%を単純に掛けた額とは一致しません。実際の算定額は上記の償還価格をご確認ください。
新区分:機能区分117と144には、「内因性抗頻拍ペーシング機能付き」の区分が新設されます。内因性抗頻拍ペーシング(iATP)機能とは、心室頻拍を止められなかった直前の治療結果をもとに、次の治療のパラメータを自動で調整する機能です。この新設により、117は合計6区分、144は合計10区分になります。
根拠:有用性加算の根拠は、臨床上重要な有効性指標で類似材料より高い有効性が示されたと評価されたことです。企業提出資料によると、日本と韓国の38施設・800名を対象としたSPARKレジストリ試験では、植込み後1年間のiATPによる心室頻拍停止成功率が86.2%でした。9か国76施設・1,875名を対象とした研究では、iATPが従来の抗頻拍ペーシングに比べて停止成功率を有意に高めました(オッズ比1.87)。同じ研究で、抗頻拍ペーシング後にショックを伴う頻脈促進が起こる割合も下がりました(調整オッズ比0.43)。
算定上の注意:関連する技術料には、K599 植込型除細動器移植術(31,510点)、K599-3 両室ペーシング機能付き植込型除細動器移植術(35,200点)などが示されています。なお、企業は治療方法の改善も含めた有用性加算10%を希望しましたが、認められたのは5%でした。
新規2製品:新区分で加算なしの評価
新規の2製品は、新しい機能区分のもとで、補正加算なしの価格で収載されます。オスピカ TMAは、原価計算方式で価格が決まりました。デュアルビューは、既存の機能区分を細分化し、その価格をそのまま適用しました。2製品とも、ピーク時の予測販売金額が50億円未満のため、費用対効果評価の対象外です。
オスピカ TMA:術後心房細動の除細動ができる心臓ワイヤー
価格:オスピカ TMAの償還価格は、原価計算方式による79,600円です。この製品は、開胸手術の際に心臓へ留置するワイヤー型の電極で、術後に体外式ペースメーカにつないで一時的な心臓ペーシングに使います。両心房に留置して専用の除細動機能付き体外式ペースメーカにつなぐと、術後心房細動の電気的除細動もおこなえます。
新区分:本製品のために、「249 除細動機能付き体外式ペースメーカ用心臓植込ワイヤー」という区分が新設されます。この区分の要件は、心臓手術中または術後の不整脈治療のために心外膜などへ留置することと、術後心房細動を除細動できる電極をもつことです。
根拠:臨床上の有用性は、企業提出資料によると、旧モデルを用いた145例の前向き非ランダム化比較試験で示されています。術後心房細動の持続時間は、旧モデル群(72例)で12.4時間、従来治療群(73例)で60.9時間でした。有害事象は両群とも0例でした。
算定上の注意:算定できる対象は、留意事項で絞り込まれています。対象は、開胸を伴う心臓手術や胸部大動脈手術を受ける18歳以上の患者のうち、術後心房細動の発症リスクが高いと推定される患者です。さらに、関連学会の定める指針に従って使用することが条件です。算定は、1回の手術につき2個が上限です。
デュアルビュー:OCTとIVUSを1本で撮れるカテーテル
価格:デュアルビューの償還価格は、既存区分と同額の132,000円です。この製品は、光干渉断層法(OCT)と血管内超音波(IVUS)の画像を、1本のカテーテルで同時に同じ位置から取得できます。冠動脈インターベンション(PCI)の治療計画や治療後の確認に使われます。
新区分:機能区分「149 血管内光断層撮影用カテーテル」は、「標準型」と「血管内超音波プローブ一体型」の2区分に分けられます。本製品は、OCTとIVUSを同時に実施できる構造をもつため、一体型に当たります。
根拠:臨床上の有用性は、企業提出資料によると、非臨床試験と文献で示されています。生体ブタ冠動脈とヒト摘出冠動脈を用いた試験では、既存のOCT・IVUSと同等の画像識別性能が確認されました。OCTとIVUSを併用すると、プラークや石灰化の観察精度が上がることも、複数の文献で報告されています。
算定上の注意:関連する技術料には、D206 心臓カテーテル法による諸検査(右心カテーテル3,600点、左心カテーテル4,000点)と、血管内光断層撮影などを実施した場合の加算(400点)が示されています。留意事項の変更はありません。
費用対効果評価と企業希望価格との差
今回の4製品では、2製品が費用対効果評価の対象となり、3製品で企業希望価格を下回る償還価格がつきました。費用対効果評価とは、収載後に費用と効果のバランスを分析し、その結果に応じて価格を調整する仕組みです。対象は、ピーク時の予測販売金額によって区分されます。
費用対効果評価の対象は、サピエン3 Ultra RESILIAと、Cobaltシリーズのうち2品目です。サピエン3 Ultra RESILIAは、予測販売金額が806億円で、H1区分(100億円以上)に当たります。Cobalt XT DR MRIは81.8億円、Cobalt XT HF Quad CRT-D MRIは92.2億円で、いずれもH2区分(50億円以上100億円未満)に当たります。Cobaltシリーズの残る2品目は対象外です。
企業希望価格との差は、加算の種類や率、算定方式の判断に表れています。
① サピエン3 Ultra RESILIA
企業希望:4,730,000円/期限付4,950,000円(改良加算5%)
決定:4,730,000円/期限付4,940,000円(有用性加算5%)
② Cobalt MRIシリーズ
企業希望:2,860,000円~5,170,000円(有用性加算10%)
決定:2,720,000円~4,960,000円(有用性加算5%)
③ オスピカ TMA
企業希望:83,400円(類似機能区分比較方式)
決定:79,600円(原価計算方式)
④ デュアルビュー
企業希望:132,000円
決定:132,000円(希望どおり)
まとめ:9月1日からの算定に向けて確認したい3点
2026年7月22日の中医協総会では、区分C1(新機能)の医療機器4製品が、9月1日に保険収載される予定として示されました。既存のサピエン3 Ultra RESILIAとCobalt MRIシリーズは、チャレンジ申請で有用性加算5%を得て、償還価格が上がります。新規のオスピカ TMAとデュアルビューは、新しい機能区分のもとで、補正加算なしの価格で収載されます。サピエン3 Ultra RESILIAとCobaltシリーズの2品目は費用対効果評価の対象となり、今後の価格調整の可能性があります。
医療機関が特に確認したいのは、次の3点です。1点目は、サピエン3 Ultra RESILIAの高い価格が2028年5月31日までの期限付きであることです。2点目は、オスピカ TMAに年齢、手術の種類、学会指針、個数上限という算定条件があることです。3点目は、182・117・144・149の各区分で見直された機能区分と、新設された249の区分を、レセプトや院内マスタに正しく反映することです。
出典:中央社会保険医療協議会 総会(第653回)資料「総-1 医療機器の保険適用について」(令和8年7月22日)










