AIマルチエージェント時代の到来!miibo Agent Hubで実現した戦国武将AIの自律的議論と驚きの結論
複数の専門AIが織田家の後継者問題を議論、史実とは異なる結論に至るプロセスとマルチエージェント技術の可能性
2025年4月、株式会社miiboがAIエージェント同士が自律的に議論する「miibo Agent Hub」α版をリリースしました。このプラットフォームは複数のAIが互いに会話し合い、人間の介在なしに集合知を形成する新時代のA2A(Agent to Agent)技術を実装しています。今回、「miibo Agent Hub 先行体験コミュニティ」参加者のオトーワン氏が、この技術を用いて織田信長亡き後の「清州会議」を再現する実験を行い、その結果が驚きの展開を見せました。
実験では柴田勝家、丹羽長秀、羽柴秀吉、池田恒興の4人の戦国武将をAIエージェントとして設定し、25,000字に及ぶ白熱の議論が展開されました。各AIは武将の個性や立場を反映した発言を繰り広げ、史実とは異なる「信孝を実質的指導者、三法師を名跡継承者とする統治体制」という結論に至りました。このマルチエージェント技術は、単なる歴史再現にとどまらず、ビジネスにおける専門家チームによる議論や教育現場での活用など、幅広い可能性を秘めています。
miibo Agent Hubが実現する次世代のAI協働環境
miibo Agent Hubは、複数のAIエージェントが自律的に議論しながら協働するマルチエージェント技術を搭載したプラットフォームです。このシステムは2025年4月14日にα版がリリースされ、現在は「miibo Agent Hub 先行体験コミュニティ」の参加者のみが利用できる状態です。
マルチエージェント技術の核心は、AIエージェント同士が直接対話する「A2A(Agent to Agent)」の仕組みにあります。これまでのAI活用は人間との対話(Human to AI)が中心でしたが、A2Aでは複数のAIが互いに会話し合い、人間の介在なしに集合知を形成します。miibo Agent Hubはノーコードでセットアップができ、誰でも簡単に専門AIチームを構築できる点が特徴です。
孫正義氏が「SoftBank World 2024」で予測したように、AI技術は「組織全体の仕事を遂行」するレベルに進化しています。複数のエージェントが「群れ」となって組織的活動を行うこの段階は、AIの進化における重要なステップと位置づけられています。
オトーワン氏による清州会議再現実験の詳細
オトーワン氏は、miibo Agent Hubを使って「清州会議」—1582年に織田信長が本能寺の変で亡くなった後、後継者を決めるために開かれた重臣会議—を再現する実験を行いました。この実験では、柴田勝家、丹羽長秀、羽柴秀吉、池田恒興という4人の重臣をAIエージェントとして設定しました。
各武将には、その人物像に合わせて異なるAIモデルを割り当てています。柴田勝家には直情的で武勇に優れた性格に合わせてGemini 1.5 Flash、丹羽長秀には冷静沈着な知略家としてClaude 3.7 Sonnet、羽柴秀吉には機敏で柔軟な思考の持ち主としてGPT-4o、池田恒興にはバランス感覚を持つ側近としてGemini 2.0 Flashが選ばれました。
各AIエージェントには、歴史的背景や性格、議論における立場などを詳細に設定したプロンプトが与えられました。例えば柴田勝家のプロンプトには「朴訥かつ剛直な口調」「武と忠義を重んじる語り口調」などの特徴や、「織田信孝を後継者とするよう主張」といった行動指針が含まれています。
白熱する戦国武将AIの議論と史実とは異なる結論
AIエージェント間の議論は白熱し、各武将の個性や口調を反映した発言が続きました。主な議論のポイントは織田家の後継者候補として、三法師(織田信秀)、織田信雄(信長の次男)、織田信孝(信長の三男)の三者が挙げられた点です。
柴田勝家は「信孝殿こそが正統の後継者じゃ!血筋もさることながら、既に武勇を備え、家臣の信頼も厚い!」と主張し、丹羽長秀は「三法師(織田信秀)こそが最適な後継者と考えます。信長公の血統を直接継ぐ嫡孫であり、正統性において最も優れております」と反論しました。また秀吉の野心に対する警戒についても、柴田勝家と丹羽長秀で見解に相違がありました。
興味深いことに、この議論は25,000字の上限に達した時点で史実とは異なる結論に至りました。最終的に提案された統治体制案は「信孝殿を実質的な指導者として擁立」「三法師を名跡継承者として丁重に扱い、将来の織田家を担う人材として育成」「重要案件については家老衆による合議制を採用」というものでした。この「名実分離」による統治体制は、歴史の事実(秀吉が主導権を握った)とは異なる展開となりました。
マルチエージェント技術がもたらす新たな可能性
マルチエージェント環境は、歴史上の会議の再現にとどまらず、様々な分野での活用が期待されます。複数の専門AIが互いに意見を交わし、議論し、新たな価値を共創するこの技術は、ビジネスから教育まで幅広い応用が考えられます。
ビジネスシーンでは、複数の専門家の視点からプロジェクト計画を議論したり、異なる立場(営業・技術・財務など)からの製品評価を行ったりすることが可能になります。各分野の専門AIがそれぞれの知見を補完し合うことで、単一のAIでは見落としがちな要素も網羅的にカバーでき、より包括的な提案が得られるでしょう。
教育現場でも、今回の清州会議再現のように歴史的議論をシミュレーションし、学習材料として活用できます。複数の歴史的人物がそれぞれの立場から議論する様子を再現することで、歴史の多面的理解を促進することが可能です。
AIチームが創る未来の可能性
miibo Agent Hubによる清州会議再現実験は、マルチエージェント技術の可能性を体感する貴重な機会となりました。AIエージェント同士が自律的に議論し、一定の合理的な結論に至る過程は、今後のAI活用の新たな地平を示しています。
この技術は、複数の専門AIが連携することで単一のAIでは実現できなかった深い議論や多角的な分析を可能にします。企業内の各部門の知見を持つAIが集まりプロジェクトを議論したり、様々な専門分野のAIが協力して問題解決に当たったりするユースケースが現実のものとなります。
今回のオトーワン氏の実験は、AIマルチエージェント時代の到来を告げる重要な一歩です。この技術を活用し、ビジネスやアカデミックな分野で新たな可能性を探っていくことで、AIと人間の協働による創造的な未来が開けていくでしょう。
オトーワン氏のnote記事:AIマルチエージェント時代の到来!「清州会議」をmiibo Agent Hub(α版)で再現してみた