miiboDesigner の岡大徳です。
会話型AIの性能を飛躍的に向上させるRAG(Retrieval-augmented Generation)機能の活用方法をご紹介します。外部知識と会話型AIを連携させることで、より正確で信頼性の高い応答を実現するRAGの仕組みとmiiboでの具体的な設定方法を解説します。初心者から上級者まで、すぐに実践できるノウハウをお届けします。
RAGとは?会話型AIを進化させる仕組み
RAG(Retrieval-augmented Generation)は、AIの回答精度を高めるための重要な技術です。AIが持つ知識を外部データで補強し、より正確な応答を生成できるようにします。
従来の会話型AIは学習済みの知識のみを頼りに応答するため、情報が古かったり、不正確だったりする問題がありました。RAGはこの課題を解決し、最新かつ正確な情報をAIに提供します。
RAGがもたらす4つの主要メリット
正確な情報へのアクセス
外部データから最新の専門情報を取得し、AIの知識を補完します。これにより、古い情報や不正確な回答のリスクを大幅に軽減できます。エビデンスの明示
情報の出典を明確に示すことが可能になり、ユーザーは回答の信頼性を確認できます。「この情報はどこから?」という疑問に応えられます。コスト削減効果
必要な情報だけをプロンプトに追加するため、大量のデータをプロンプトに含める場合と比べて処理コストを抑えられます。AI自身の限界認識
外部データにない情報については「わからない」と回答できるようになり、AIが不確かな情報を提供するリスクを減らせます。
miiboにおけるRAGの仕組みと流れ
miiboのRAGは4つのステップで動作し、シンプルながら強力な仕組みです。各ステップを理解することで、効果的なRAGの設定が可能になります。
4ステップで理解するRAGプロセス
ユーザーが質問
ユーザーから質問を受け取ると、その内容が会話履歴に追加されます。検索クエリーの生成
設定された検索クエリー生成プロンプトに基づいて、最適な検索キーワードが作成されます。これはGoogle検索を行う際のクエリーに似ています。外部データの検索実行
生成されたクエリーを使って、設定された外部データソース(ナレッジデータストア、Web等)から関連情報を検索します。検索結果をプロンプトに追加
検索で得られた情報が「前提データ」または「参考資料」としてプロンプトに自動的に追加され、AIがこれを参照して回答を生成します。
プロンプト設計とRAGの連携ポイント
RAGの効果を最大化するには、プロンプト設計が重要です。特に以下の指示が効果的です:
前提データに基づいて回答してください。
前提データにない情報については、「現在の私の知識では、応答をすることができません」と回答してください。
参考とした前提データのURLがあれば、必ず出力してください。
この指示により、AIは検索結果を優先し、出典情報を明示できるようになります。
検索クエリー生成の最適化方法
検索クエリー生成の設定は、RAGの精度を大きく左右します。以下のポイントを押さえましょう:
明確な指示:「ユーザーの質問から重要なキーワードを3-5つ抽出し、検索クエリーを生成してください」
文脈の考慮:「直前の会話履歴も考慮して、ユーザーの意図を正確に捉えたクエリーを作成してください」
検索範囲の指定:「ユーザーが求める具体的な情報に絞った検索クエリーを生成してください」
miiboで活用できる4種類のRAG環境
miiboでは目的に応じて選べる4つのRAG環境を提供しています。それぞれの特徴と最適な活用シーンを理解しましょう。
1. ナレッジデータストア:自社専門知識の活用
自社の製品マニュアル、FAQなど専門知識を登録し、高精度な回答を提供します。
特徴:
精度:◎(自社情報を直接活用)
手軽さ:◎(ドラッグ&ドロップでアップロード可能)
リアルタイム性:△(手動更新が必要)
保守性:△(定期的な更新が必要)
最適な用途:
製品サポート
社内ナレッジベース
専門知識を要する顧客対応
2. Web検索:最新情報へのアクセス
インターネット上の情報を検索し、常に最新の情報を提供します。
特徴:
精度:○(検索結果に依存)
手軽さ:△(適切な検索設定が必要)
リアルタイム性:◎(最新情報にアクセス可能)
保守性:○(自動更新されるが、検索設定の調整が必要)
最適な用途:
時事問題への対応
一般的な質問応答
幅広いトピックをカバーする必要がある場合
3. データコネクター:各種サービスとの連携
NotionやGoogle Drive等の外部サービスと連携し、情報を活用します。
特徴:
精度:△(サービスのAPI精度に依存)
手軽さ:△(連携設定が必要)
リアルタイム性:◎(常に最新データにアクセス)
保守性:◎(自動同期される)
最適な用途:
チーム間の情報共有
既存のナレッジベースの活用
複数データソースの統合
4. 外部API・DB連携:カスタム統合
独自のデータベースやAPIと連携し、完全カスタマイズされた環境を構築します。
特徴:
精度:?(連携先に依存)
手軽さ:△(技術的知識が必要)
リアルタイム性:◎(常に最新データにアクセス)
保守性:◎(システムに組み込み可能)
最適な用途:
企業固有のデータ活用
セキュリティ要件の高い情報連携
複雑なシステム統合
RAG活用の実践テクニック
知識を得たら実践しましょう。レベル別の具体的なテクニックを紹介します。
初心者向け:基本設定とナレッジベース構築
ナレッジデータストアの設定
PDFやテキストファイルをアップロード(ドラッグ&ドロップで簡単)
分割設定の最適化(1000〜1500文字程度を推奨)
メタデータの追加(検索精度向上のため)
基本的なプロンプト設定
あなたは専門知識を持つエージェントです。
前提データに基づいて正確に回答してください。
前提データにない情報については「わかりません」と回答してください。
検索クエリー生成の設定
ユーザーの質問から重要なキーワードを3つ抽出し、
検索に適したクエリーを作成してください。
上級者向け:複合的なデータソース活用と最適化
複数データソースの組み合わせ
ナレッジデータストア+Web検索のハイブリッド設定
優先順位の設定(まずナレッジデータ→情報がなければWeb検索)
検索クエリー生成の高度な設定
以下の順序で検索クエリーを生成してください:
1. ユーザーの質問から主要キーワードを抽出
2. 会話履歴から関連する文脈を特定
3. 検索効率を高めるための演算子(AND, OR)を適切に配置
4. クエリーの長さは60文字以内に最適化
エビデンスの表示方法のカスタマイズ
回答の後に、以下の形式で情報源を示してください:
【出典】:URL
【該当箇所】:引用テキスト
実践例:製品サポート向けRAGの構築
具体的な製品サポートのRAG構築例を紹介します:
必要書類の準備
製品マニュアル(PDF)
よくある質問集(テキスト)
過去のサポート事例(CSV)
ナレッジデータストアへの登録
各資料をアップロード
メタデータ付与(製品カテゴリ、更新日等)
プロンプト設定
あなたは[製品名]のサポート担当者です。
前提データに基づいて丁寧に回答してください。
解決策は具体的なステップで説明してください。
前提データにない質問には「詳細情報が必要です」と回答し、
追加情報を求めてください。
テストと改善
典型的な問い合わせでテスト
回答精度の評価と検索設定の調整
足りない情報の追加
Q&A
Q: ナレッジデータストアに登録できるファイル形式と容量制限は?
A: PDFやWord、テキスト、HTML、CSV、Excelなど多様な形式に対応しています。容量制限はプランによって異なりますが、基本プランでは1ファイルあたり10MB、合計100MBまで登録可能です。大容量データが必要な場合は上位プランをご検討ください。
Q: RAGの精度が低い場合、どのように改善すべきですか?
A: 以下の順で確認・改善を行ってください:
検索クエリー生成プロンプトの見直し(明確さと具体性を高める)
ナレッジデータの分割サイズの調整(適切なチャンクサイズにする)
プロンプトでの指示の明確化(AIが検索結果を優先するよう指示)
メタデータの追加・最適化(検索効率を高める)
不足している情報の追加(回答できない質問があれば、該当情報を追加)
Q: Web検索とナレッジデータストアを併用する場合、どちらを優先すべきですか?
A: 基本的には「ナレッジデータストア」を優先することをお勧めします。自社の正確な情報を優先的に使用し、情報が見つからない場合にのみWeb検索結果を参照するよう設定すると、最も信頼性の高い回答が得られます。プロンプトに「まず前提データを参照し、情報がない場合のみWeb検索結果を使用してください」と指示することで実現できます。
miiboの詳細なFAQについては、以下のURLをご覧ください: https://daitoku0110.net/faq/
miiboコミュニティ最新情報
miiboユーザーコミュニティでは、RAGの活用に関する様々な情報共有が活発に行われています。最近のハイライトとしては:
「効率的なナレッジデータストア構築」をテーマにしたワークショップの開催告知
金融業界での専門文書を活用したRAG事例の共有
Web検索とナレッジデータストアのハイブリッド活用による精度向上テクニックの議論
特に注目を集めているのは、複数のファイル形式(PDF、Excel、Webページ)を組み合わせた「マルチソースRAG」の構築方法です。異なる形式の情報を効果的に連携させることで、より包括的で正確な回答を実現する手法が共有されています。
miiboコミュニティはこちら:https://www.facebook.com/groups/miibo
まとめ
RAGは会話型AIの性能を飛躍的に向上させる重要な技術です。miiboでは、複数のRAG環境を簡単に構築できる機能が提供されており、以下の利点があります:
情報の正確性向上:最新の専門知識を外部データから取得し、AIの回答精度を高める
エビデンスの明示:回答の情報源を明確に示し、信頼性を担保する
コスト効率の改善:必要な情報のみをプロンプトに追加し、処理コストを最適化
限界の認識:AIが「わからないこと」を適切に判断できるようになる
miiboのRAG機能を活用することで、単なる一般的な会話型AIから、専門知識を持ち、信頼性の高い回答を提供できる高性能AIへと進化させることができます。
まずはナレッジデータストアに重要な文書をアップロードし、基本的なプロンプト設定を行ってみましょう。そこから徐々に設定を最適化していくことで、あなたの理想の会話型AIに近づけていくことができます。
【今すぐ行動】
RAGの力を体験するために、まずは手持ちの製品マニュアルやFAQドキュメントをmiiboのナレッジデータストアにアップロードしてみましょう。そして本記事で紹介した基本プロンプト設定を適用し、実際に質問してみてください。AIの回答精度がどのように向上するか、ぜひ体感してみてください。
→ miiboの管理画面:https://miibo.dev/dashboard
それでは、また次回のニュースレターでお会いしましょう! miiboを楽しんでください!
miiboDesigner岡大徳:https://daitoku0110.net/
miiboガイドページ:https://daitoku0110.net/miibo-guide/
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