令和8年7月8日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第652回)で、再生医療等製品2品目の最適使用推進ガイドライン(以下、GL)と保険適用上の留意事項が報告されました。この2品目は、GLに従って使用することが保険適用上の前提とされ、施設・医師・患者の要件を確認する必要があります。本稿では、2品目のGLの要件と、診療報酬明細書(レセプト)の摘要欄に書くべき事項を整理します。
結論として、2品目とも「GLに従って使うこと」が保険適用の前提であり、投与開始時には要件への該当性を摘要欄に記載する必要があります。1つ目の品目である表皮水疱症治療用のアロステムシートは、日本皮膚科学会専門医が責任者となり、既存治療で効果不十分な難治性・再発性の潰瘍に使います。2つ目の品目である膀胱癌治療用のエドスチラドリン膀胱内注入液は、がん診療連携拠点病院などの施設で、BCG膀胱内注入療法後に残存・再発した上皮内癌の患者に使います。留意事項通知は令和8年7月14日に発出され、7月15日から適用されています。
最適使用推進ガイドラインの仕組み
最適使用推進ガイドラインは、革新的な新薬や再生医療等製品を「恩恵を強く受ける患者」に「副作用へ迅速に対応できる施設」で使うためのルールです。この仕組みは、平成29年9月13日に中医協で了承されました。
GLの作成は、承認審査と並行して進みます。対象となるのは、作用機序や安全性プロファイルが既存品と大きく異なる品目や、より広い患者に使われる可能性が高い品目です。GL案は、関係学会と医薬品医療機器総合機構(PMDA)が検討し、薬事の担当部会と中医協総会で了承を得ます。
GLの要件は、保険適用上の留意事項通知に引き継がれます。留意事項通知は、レセプトの摘要欄にどの要件への該当性を書くかを定めています。つまり、GLは「使い方の指針」であると同時に、「診療報酬を請求するための条件」でもあります。
アロステムシート(表皮水疱症)のGL
アロステムシートは、難治性・再発性のびらんや潰瘍がある表皮水疱症の患者に貼付し、皮膚の再上皮化を促す製品です。使用には、皮膚科専門医の配置と、対象となる潰瘍の適切な選択が求められます。
製品の特徴
アロステムシート(一般名:ニバドストロセル、製造販売業者:イシンファーマ)は、健康な成人の皮下脂肪から得た間葉系幹細胞をシート状に培養した製品です。このシートは、潰瘍に貼ると成長因子などを分泌し、炎症を抑えて皮膚の再生を促すと考えられています。栄養障害型とラミニン332変異による接合部型では、Ⅶ型コラーゲンやラミニン332を補う効果も期待されています。用法は週1回で、潰瘍の面積に応じて枚数を決め、潰瘍を辺縁まで含めてシート同士が重ならないように覆って貼付します。
臨床成績
有効性は、国内の2つの臨床試験で評価されました。第Ⅲ相試験(EB-02試験、6例)では、最終貼付1~5週後の潰瘍面積が治療前より平均54.2%縮小し、統計的な有意差が認められました。第Ⅰ/Ⅱ相試験(EB-01試験)では、評価対象4例のうち2例が事前に定めた有効性の基準を満たしました。安全性では、2試験の計12例で死亡や貼付中止に至った事象はなく、製品との因果関係を否定できない有害事象は1例(C反応性蛋白増加、軽度)のみでした。
施設と医師の要件
施設には、貼付前の調製に必要な機材と、製造販売後調査を実施できる体制が求められます。治療の責任者は、次の3つをすべて満たす医師です。
日本皮膚科学会専門医の資格を有すること
表皮水疱症の診療に必要な学識・技術を習得していること
製造販売業者による適正使用の講習を受講していること
このほか、院内に情報管理の担当者を置くことと、重篤な副作用が出た場合に自施設または連携施設で当日中に検査結果を得て直ちに対応できる体制が必要です。対象患者が小児の場合は、小児治療のチーム医療体制が望まれます。
対象となる患者
対象は、厚生労働省の指定難病診断基準で診断された栄養障害型、接合部型、単純型(重症汎発型に限る)の表皮水疱症患者です。対象となる病変は、既存治療で効果不十分で、継続的に潰瘍がみられる難治性・再発性の病変に限られます。なお、接合部型と単純型は臨床試験での使用経験がないため、臨床上の必要性を十分に検討します。
一方、次の患者・部位は貼付の対象外です。
本品の成分に過敏症の既往がある患者
皮膚悪性腫瘍が確定、または疑われる部位
皮膚移植、ジェイス、バイジュベックゲルで治療中の部位
感染が疑われる部位
潰瘍が閉鎖している部位
使用上の留意点
貼付期間は、原則として12週までです。12週までとする理由は、臨床試験で12週を超える使用経験がないためです。12週を超えて継続できるのは、治療上の有益性が認められる場合に限られます。貼付中は月1回程度、潰瘍面積の縮小割合などで効果を判定し、漫然と続けないようにします。潰瘍が閉鎖したら、その病変への貼付を終えます。また、1回あたり16枚を超える貼付も試験での経験がないため、有益性と危険性を慎重に評価します。
取扱いでは、保管温度と貼付後の管理に注意が必要です。製品は-80℃で保管し、解凍後60分以内を目安に貼付を終えます。貼付前には、ワセリンなどの撥水性外用薬を洗い流します。貼付後少なくとも48時間は、シートを剥がさず、入浴や貼付部位へのシャワーを避けます。
エドスチラドリン膀胱内注入液(膀胱癌)のGL
エドスチラドリン膀胱内注入液は、BCG膀胱内注入療法後に残存・再発した上皮内癌を有する高リスク筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)の治療薬です。使用には、がん診療の拠点となる施設要件と、遺伝子組換え生物を扱うためのカルタヘナ法への対応が求められます。
製品の特徴
エドスチラドリン膀胱内注入液(一般名:ナドファラゲン フィラデノベク、製造販売業者:フェリング・ファーマ)は、インターフェロンα2bの遺伝子を組み込んだ、増殖しないアデノウイルスを主成分とする製品です。この製品を膀胱内に注入すると、膀胱の粘膜細胞(尿路上皮)がインターフェロンα2bを作り出し、抗腫瘍免疫の増強などにより腫瘍細胞を死滅させることが期待されています。用法は、成人に1回75mLを3カ月間隔で膀胱内に投与します。
臨床成績
有効性は、海外と国内の第Ⅲ相試験で評価されました。主要評価項目は、上皮内癌(CIS)を併発する患者での、初回投与後3カ月までの完全奏効率です。海外試験(米国、103例)の完全奏効率は53.4%(95%信頼区間43.3~63.3%)で、信頼区間の下限が事前に定めた閾値27%を上回りました。国内試験(20例)の完全奏効率は75.0%(95%信頼区間50.9~91.3%)で、信頼区間の下限が事前に定めた閾値2%を上回りました。国内の閾値が低く設定されたのは、国内にこの患者に有効な薬剤がなく、膀胱全摘除術に至る患者を少しでも減らすことに臨床的意義があるためです。海外試験では、完全奏効した患者のうち36.4%が、初回投与後24カ月時点でも完全奏効を維持していました。
安全性では、両試験とも死亡に至った有害事象はありませんでした。主な副作用は、発熱、注入部位からの分泌物(滴下投与部位分泌)、尿意切迫、排尿困難、疲労・倦怠感などです。国内試験(2025年10月23日データカットオフ)で報告された重篤な有害事象3例は、いずれも製品との因果関係が否定されました。
施設と医師の要件
施設は、BCGによるNMIBC治療が実施可能で、かつ次のいずれかに該当する必要があります。
厚生労働大臣が指定するがん診療連携拠点病院等
特定機能病院
都道府県知事が指定するがん診療連携病院
外来腫瘍化学療法診療料1、2または3の施設基準を届け出ている施設
抗悪性腫瘍剤処方管理加算の施設基準を届け出ている施設
あわせて施設には、添付文書に従った保管体制(貯蔵方法は-60℃以下)、カルタヘナ法の第一種使用規程に沿った取扱い体制、製造販売後調査の実施体制が求められます。
治療の責任者は、研修歴の要件と、講習・法令理解の要件をともに満たす医師です。研修歴の要件は、次のいずれかです。
初期研修修了後に5年以上のがん治療の臨床研修を行い、うち2年以上はがん薬物療法を主とした臨床腫瘍学の研修であること
初期研修修了後に4年以上の泌尿器科学の臨床研修を行い、うち2年以上は膀胱癌のがん薬物療法を含むがん治療の研修であること
講習・法令理解の要件は、製造販売業者の講習を受講していることと、カルタヘナ法を理解し第一種使用規程に従って取り扱えることです。このほか、情報管理の担当者の配置と、重篤な副作用に対して自施設または連携施設で入院管理や検査を速やかに行える体制が必要です。
対象となる患者
対象は、BCG膀胱内注入療法後に上皮内癌が残存・再発した高リスクNMIBCで、BCGの再導入が適さない患者です。一方、次の患者は対象外です。
筋層浸潤性膀胱癌の患者
低リスク・中リスクのNMIBC患者
BCGの治療歴がない患者
BCGの再導入が適応となる患者
BCG治療後に腫瘍の残存・再発が確認されていない患者
上皮内癌を併発していない高グレードTa/T1病変の患者
上部尿路がんを併発している患者
本品の成分に過敏症の既往がある患者(禁忌)
対象患者の選択では、膀胱全摘除術の機会を逃さないことが重要です。全摘除術が遅れると、筋層浸潤癌や遠隔転移へ進む可能性があるためです。
使用上の留意点
投与中は、定期的な検査で高グレード病変の再発がないかを確認します。この確認は、臨床試験で3カ月ごとの各投与前2週間以内に尿細胞診と膀胱鏡検査(必要に応じて生検)を行っていた手順を参考にしたものです。投与後3カ月の時点で高グレード病変の再発がみられた場合は、再投与が適切と判断される場合に限り再投与します。臨床試験では5年を超える継続投与の経験がないため、長期投与の必要性は慎重に判断します。また、BCG以外の治療薬を使った後の患者では有効性・安全性が確認されていないため、本品への切り替えが適切な場合に限り投与します。
取扱いでは、カルタヘナ法の第一種使用規程を守る必要があります。調製は他の区画と区別した作業室で、投与は区別した治療室で行います。投与後は、排出物を介した第三者への伝播を防ぐよう患者を指導します。患者が他の医療機関を受診する場合に備え、本品を投与された患者であることを伝えるよう指導することも求められます。
保険適用上の留意事項(レセプト摘要欄)
保険適用上の留意事項では、2品目とも「GLに従って使用する」ことが基本的な考え方として明記されました。この考え方に沿って、投与開始時にはGLの要件への該当性を、レセプトの摘要欄に記載します。
アロステムシートでは、投与開始時に次の2項目を記載します。
治療の責任者の要件(GL「4.①-2」、表13)への該当性
投与対象となる患者の要件(既存治療で効果不十分な難治性・再発性の病変であること)への該当性
エドスチラドリン膀胱内注入液では、投与開始時に次の3項目を記載します。
医療施設の要件(GL「4.①-1(1)」)への該当性
治療の責任者の要件(GL「4.①-2」)への該当性
BCG膀胱内注入療法を受けた直近の年月日
エドスチラドリン膀胱内注入液では、継続投与時にも摘要欄への記載が求められます。中医協資料では、この記載事項の根拠としてGL「6.④」(定期検査による高グレード病変の再発確認など)が示されています。具体的な記載項目は、発出された留意事項通知の本文で確認してください。検査結果の記録を医事部門と共有する仕組みを整えておくと安心です。
留意事項通知は令和8年7月14日に発出され、7月15日から適用されています。
まとめ:2品目ともGLの要件確認と摘要欄記載が請求の前提
中医協第652回総会では、再生医療等製品2品目の最適使用推進ガイドラインと保険適用上の留意事項が報告されました。アロステムシートは、皮膚科専門医が責任者となり、既存治療で効果不十分な表皮水疱症の潰瘍に使います。エドスチラドリン膀胱内注入液は、がん診療の拠点となる施設で、BCG療法後に上皮内癌が残存・再発した患者に使います。両品目とも、投与開始時にはGLの要件への該当性をレセプトの摘要欄に記載し、エドスチラドリンでは継続投与時の記載も求められます。採用を検討する医療機関は、施設・医師の要件を満たしているかを確認したうえで、医師と医事部門が記載事項を共有しておきましょう。










