miiboDesigner の岡大徳です。
会話型AIの真の魅力は、単なる質問応答ではなく、ユーザーを理解し、記憶する能力にあります。今回は、miiboの重要機能「ステート」について解説します。この機能を活用すれば、AIが「前回の会話を覚えている」「ユーザーの好みを理解している」という、まるで人間と話しているような自然な対話体験を実現できます。初心者の方でも簡単に設定できる基本から、上級者向けの複雑な活用法まで、ステップバイステップでご紹介します。
ステートとは?AIに記憶力を与える仕組み
ステートは、ユーザーとエージェント(AI)の会話を通じて保持される「ユーザーの情報(状態)」を指します。名前、趣味、好みなど、会話から得た情報を自動的に保存し、次回以降の会話で活用できる機能です。
ステートを利用することで、miiboのエージェントは以下のことが可能になります:
ユーザーの名前を覚えて、次回から名前で呼びかける
前回の会話内容を記憶し、話の続きから始められる
ユーザーの好みや状況に応じた提案ができる
ユーザーごとに異なる対応ができる
つまり、ステート機能は「溶けこむAI」のコア要素である「共感」レイヤーを実現する重要な機能なのです。
ステートがAIにもたらす3つの能力
記憶力: ユーザー情報を長期的に保持できる
適応力: 状況に応じて最適な対応ができる
個別対応: ユーザーごとに異なる応答ができる
例えば、ユーザーが「私はリンゴが好きです」と言ったら、AIは「好きな果物」というステートに「リンゴ」を記録します。後日、同じユーザーが再度会話すると、「リンゴがお好きでしたね」と過去の会話を覚えていることを示せます。
初心者向け:ステートの基本的な活用法
ステートの活用方法は大きく分けて2つあります。まずは基本的な活用法から見ていきましょう。
1. プロンプトへの埋め込み
最も簡単なステート活用法は、プロンプトに埋め込むことです。ステートの値は #{ステート名}
という記法で参照できます。
以下のようなプロンプトを設定してみましょう:
あなたはユーザーサポートを担当するエージェントです。
# ユーザー情報
名前:#{ユーザー名}
好きな食べ物:#{好きな食べ物}
趣味:#{趣味}
上記の情報を元に、パーソナライズされた対応をしてください。
名前が分かっている場合は、名前で呼びかけてください。
好きな食べ物や趣味について知っている場合は、それに関連した話題を取り入れてください。
このプロンプト設定により、AIはユーザーの名前や好みを考慮した会話ができるようになります。「山田さん、釣りは最近どうですか?」というように、名前や趣味に言及できるのです。
2. 会話履歴から自動的にステートを抽出する
「ステートの抽出」機能を使えば、会話の中からAIが自動的にユーザー情報を抽出してくれます。設定方法は次の通りです:
エージェントの「会話の設定」を開く
「AIの応答をカスタマイズ」をクリック
「ステートの抽出」セクションで設定する
例えば以下のように設定します:
キー:ユーザー名
記録する内容:ユーザーの名前
キー:好きな食べ物
記録する内容:ユーザーの好きな食べ物
キー:趣味
記録する内容:ユーザーの趣味
これだけで、AIは会話の中からユーザーの名前、好きな食べ物、趣味を自動的に抽出して記録します。ユーザーが「私の名前は鈴木です」「趣味は写真撮影です」などと言うと、その情報が自動的にステートとして保存されるのです。
上級者向け:高度なステート活用テクニック
基本を理解したら、より高度な活用法に挑戦してみましょう。
1. プロンプトによるステートの記録
AIに特定の情報を積極的に抽出させるには、プロンプトで指示する方法があります。2つのアプローチがあります:
基本的な指示方法:
会話の中でユーザーの感情状態を分析し、ステートに記録してください。
キー名は「感情」です。
厳格な指示方法(上級者向け):
ユーザーの感情を分析したら、必ず下記のフォーマットで出力してください。
フォーマット
#{感情:<分析した感情>}
例:
#{感情:喜び}
#{感情:不安}
#{感情:期待}
厳格な方法では、AIが #{キー:値}
の形式で出力すると、その情報が自動的にステートとして記録されます。この方法はより確実にステートを記録できますが、ユーザーに見えないように出力する工夫が必要です。
2. シナリオ対話でのステート活用
シナリオ対話機能と組み合わせると、会話の流れに応じたステートの記録と活用が可能になります:
質問ノードでユーザーからの回答をステートとして保存
条件分岐でステートの値に応じて会話の流れを変更
発話ノードでステートの値を用いたパーソナライズされた応答を表示
例えば、ユーザーの目的に応じた案内フローを作成し、その情報をステートに保存。後の会話で「前回は〇〇について調べていましたね」と言及できます。
3. Webhookとの連携でステートを外部サービスと共有
収集したステート情報は、Webhook機能を使って外部サービスと連携できます:
Google SheetsやSlackにユーザー情報を送信
分析ツールでユーザーニーズを集計
CRMシステムに顧客情報を連携
これにより、AIが収集した情報を組織全体で活用できる仕組みが構築できます。
ステート活用の5つの実践例
理論を理解したところで、具体的な活用例を見てみましょう。
1. カスタマーサポートのパーソナライズ
目的: リピーターに対して一貫性のある対応を提供
設定例:
過去の問い合わせ内容をステートに記録
製品の利用状況や課題をステートに保存
次回の問い合わせ時に「前回は〇〇の件でご連絡いただきましたね」と言及
効果: 顧客満足度の向上と対応工数の削減
2. 教育コンテンツの個別最適化
目的: 学習者の進捗や理解度に合わせた教材提供
設定例:
学習済みの単元をステートに記録
苦手分野や得意分野を分析してステートに保存
次回学習時に「前回は〇〇まで進みましたね。今日は次の単元に進みましょうか?」と提案
効果: 学習効率の向上と継続率の改善
3. 営業支援の強化
目的: 見込み客の関心事に合わせた提案
設定例:
興味のある製品カテゴリをステートに記録
予算や導入時期の情報をステートに保存
「〇〇に興味をお持ちとのことでしたが、こちらの新製品もご覧になりませんか?」と関連提案
効果: 成約率の向上と顧客体験の改善
4. 健康・フィットネスアドバイザー
目的: 利用者の目標や状況に合わせたアドバイス
設定例:
運動目標や現在の状態をステートに記録
食事制限や好みの運動をステートに保存
「先週は週3回のウォーキングが目標でしたね。達成できましたか?」と進捗確認
効果: モチベーション維持とプログラムの継続率向上
5. 旅行プラン提案
目的: 旅行者の好みに合わせた提案
設定例:
好きな旅行スタイル(アクティブ/リラックス)をステートに記録
予算や旅行期間の情報をステートに保存
「前回は自然を楽しむ旅をご希望でしたね。こちらの国立公園はいかがでしょうか?」と提案
効果: 提案の的確性向上と顧客満足度アップ
Q&A
Q: ステートに保存できる情報量に制限はありますか?
A: 1つのステートに保存できる情報量に厳密な制限はありませんが、数百文字程度に抑えることをお勧めします。大量のテキストを保存する場合は、要約して保存するか、複数のステートに分割することをご検討ください。
Q: ステートの情報はどのように確認・編集できますか?
A: 「レポート」→「ユーザー一覧」から確認できます。ここでは各ユーザーのステート情報を確認するだけでなく、編集や削除も可能です。管理者が手動でステートを追加することもできます。
Q: ステートの情報はユーザーから見えますか?
A: いいえ、ステート情報はバックエンド側で管理されており、エンドユーザーからは見えません。ただし、AIがステートの情報に基づいて会話する際に「〇〇が好きなんですね」などと言及することで、情報が保存されていることを間接的に伝えることはあります。
miiboの詳細なFAQについては、以下のURLをご覧ください: https://daitoku0110.net/faq/
まとめ
ステート機能はmiiboを単なる質問応答AIから、ユーザーを理解し記憶する「溶けこむAI」へと進化させる重要な機能です。その主なメリットは以下の通りです:
ユーザー情報の長期的な記憶と活用
パーソナライズされた対話体験の実現
ユーザーごとに最適化された応答の提供
継続的な関係構築の促進
初心者の方は、まずプロンプトへのステート埋め込みと自動抽出設定から始めてみましょう。基本を理解したら、シナリオ対話との連携や外部サービス連携など、より高度な活用法に挑戦してみてください。
ステート機能を効果的に活用することで、ユーザーは「このAIは私のことを理解している」という印象を持ち、より深い信頼関係を構築できるでしょう。これこそが、会話型AIの真の力なのです。
【今すぐ行動】
実際にステート機能を試してみませんか?まずは簡単なユーザー名の記録から始めて、徐々に複雑な情報を扱うように拡張していきましょう。すでにmiiboエージェントをお持ちの方は、今すぐ「ステートの抽出」設定を追加してみてください。その効果に驚かれることでしょう。
それでは、また次回のニュースレターでお会いしましょう! miiboを楽しんでください!
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