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【令和8年度改定】包括型訪問看護療養費を新設|高齢者住まい併設ステーション対応
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【令和8年度改定】包括型訪問看護療養費を新設|高齢者住まい併設ステーション対応

短時間・頻回訪問を1日単位で評価する新区分の対象者・点数・施設基準を整理

令和8年度診療報酬改定では、高齢者住まい等に併設・隣接する訪問看護ステーションを対象に、新区分「包括型訪問看護療養費」が新設されます。背景には、併設ステーションが居住者へ短時間で頻回の訪問看護を効率的に実施できる一方、現行の出来高評価では加算が積み上がり訪問看護療養費が高額化する構造的な問題があります。本メルマガでは、対象施設・利用者、点数体系、算定要件、施設基準を整理し、改定への実務対応を解説します。

包括型訪問看護療養費は、1日当たりの包括評価として算定する新たな報酬体系です。対象は併設・隣接ステーションが指定する建物の居住者であり、別表第7・第8該当者または特別訪問看護指示書に基づく利用者に限られます。点数は単一建物居住利用者数(20人未満・20人以上50人未満・50人以上)と訪問時間(30分以上60分未満・60分以上90分未満・90分以上・90分以上で大臣が定める場合)の組み合わせで決まり、5,950円から15,500円までの9区分が設定されています。算定には24時間対応体制、日中・夜間それぞれ1回以上の訪問、計画書の1日1回以上の確認などが求められ、関連する加算等の併算定には広範な制限が設けられます。

新設の背景|効率的な訪問看護と高額化する療養費

高齢者住まい等に併設・隣接する訪問看護ステーションは、居住者に対し短時間で頻回な訪問看護を効率的に実施できる環境にあります。中医協資料(在宅その2)によれば、住宅型有料老人ホームに併設・隣接する訪問看護事業所のうち87.6%は関連法人が運営しており、移動時間や提供時間が短い特性から、医療機関の入院患者への看護に近い継続的・断続的なケアが提供されている実態があります。

こうした効率的な訪問看護に対し、現行の出来高評価では加算が積み重なり訪問看護療養費が高額化する構造的な問題が指摘されてきました。中医協が示した試算例では、別表第7該当者50名が居住する高齢者住まいで併設ステーションが訪問看護を実施した場合、訪問看護基本療養費(Ⅱ)に難病等複数回訪問加算・複数名訪問看護加算・夜間早朝加算・深夜加算等が積み上がり、利用者1人当たり1月で約88万円に達するケースが提示されています。

この構造を是正する観点から、令和8年度改定では一連の頻回訪問看護を1日単位で包括評価する体系が新設されます。包括型訪問看護療養費は、効率的な提供環境を点数体系に反映させると同時に、24時間体制での計画的な訪問看護を要件化することで、提供の質と請求の適正化を両立させる仕組みです。

点数体系|単一建物居住者数と訪問時間の組み合わせで算定

包括型訪問看護療養費は、単一建物居住利用者数と1日当たりの訪問時間の組み合わせにより、9区分で算定します。利用者数の区分は「20人未満」「20人以上50人未満」「50人以上」の3段階、訪問時間の区分は「30分以上60分未満」「60分以上90分未満」「90分以上」「90分以上で別に厚生労働大臣が定める場合」の4段階で設定されています。

単一建物居住利用者が20人未満の場合は、30分以上60分未満で7,000円、60分以上90分未満で11,000円、90分以上で14,000円、90分以上で大臣が定める場合で15,500円となります。20人以上50人未満の場合は、それぞれ6,300円、9,900円、13,720円、15,190円です。50人以上の場合は、それぞれ5,950円、9,350円、13,440円、14,880円が算定可能です。

「90分以上で別に厚生労働大臣が定める場合」とは、緊急時に即時対応できる体制を有し、かつ算定対象利用者全員の1日当たり訪問時間の平均が120分以上である場合を指します。利用者数が多い建物ほど効率性が高いと評価され、1人当たりの点数は低く設定される構造です。

算定要件|24時間体制と日中・夜間の訪問が必須

包括型訪問看護療養費の算定には、24時間対応体制での計画的または随時の頻回訪問看護が前提となります。算定対象は、別表第7該当の疾病等の者、別表第8該当者、または特別訪問看護指示書に係る指定訪問看護を受けている者(以下「大臣が定める者」)に限られます。利用者の同意を得た上で、主治医(保険医療機関の保険医、介護老人保健施設または介護医療院の医師)から交付された訪問看護指示書および訪問看護計画書に基づき実施します。

訪問の頻度については、日中および夜間帯(午後6時から午前8時まで)にそれぞれ少なくとも1回ずつの指定訪問看護が必要です。1日当たりの訪問看護実施時間が60分以上となる場合は、1日3回以上の訪問を実施しなければなりません。訪問時間は1日に行った複数回の指定訪問看護で実際に看護を提供した時間を合算して算出します。

看護職員の関与に関する要件も明確化されています。1日に1回以上、准看護師を除く看護職員による訪問が含まれる必要があります。また、訪問看護ステーションの管理者または当該日の指定訪問看護に関する責任を担う看護職員(准看護師を除く)が、訪問看護計画書について1日1回以上の確認と必要時の見直しを行います。記録については、訪問看護計画書および訪問看護記録書を電子的方法で記録し、実施した指定訪問看護の内容と実施時間を記載します。

同一建物内の利用者属性に応じた算定方法も整理されています。届出を行った建物に居住する「大臣が定める者」に対して1日に2回以上の指定訪問看護を行う場合は、包括型訪問看護療養費以外の訪問看護基本療養費等は算定できません。一方、届出建物に居住していても「大臣が定める者」に該当しない利用者(別表第7・第8該当者でも特別訪問看護指示書対象者でもない利用者)に指定訪問看護を行った場合は、訪問看護基本療養費(Ⅱ)等を算定します。

算定上の併算定制限にも注意が必要です。包括型訪問看護療養費を算定する場合、同一日に「訪問看護基本療養費(訪問看護基本療養費(Ⅰ)および(Ⅱ)のハを除く)」、精神科訪問看護基本療養費、難病等複数回訪問加算、複数名訪問看護加算、夜間・早朝訪問看護加算、深夜訪問看護加算、複数名精神科訪問看護加算、精神科複数回訪問加算、訪問看護管理療養費および24時間対応体制加算は別に算定できません。ここで除外される「訪問看護基本療養費(Ⅰ)」と「訪問看護基本療養費(Ⅱ)のハ」(=理学療法士等による訪問)は、包括型との同日算定が可能です。なお、緊急訪問看護加算および精神科緊急訪問看護加算は、別に厚生労働大臣が定める場合を除き、別途算定可能です。

施設基準|建物の指定と看護職員配置の要件

包括型訪問看護療養費の届出には、訪問看護ステーションが高齢者向け住まい等に併設または隣接していることが前提となります。届出時には、併設・隣接する高齢者向け住まい等のうち算定対象とする建物を訪問看護ステーションにつき1か所指定し、その建物を単位として指定訪問看護を実施します。届出は訪問看護ステーションごとに行う必要があり、サテライトのみが併設・隣接している建物では届出できません。ただし届出済みステーションが当該建物以外の場所にサテライトを設置し、そこから建物外の他の利用者へ包括型を算定しない指定訪問看護を実施することは差し支えありません。

組織体制および地域連携に関する要件も求められます。医療安全および衛生管理に関する組織的な取組み、合同研修や事例検討会等を通じた地域の保険医療機関または訪問看護ステーションとの連携実績、厚生労働大臣が実施する利用者状態・訪問看護実施状況等に関する毎年の調査および中医協要請に基づく随時調査への適切な参加が必要です。指定訪問看護に係る記録は電子的に行い、看護職員の負担軽減および処遇改善に資する体制の整備も求められます。

看護職員の配置については、夜間帯(午後6時から午前8時まで)の対応体制が詳細に規定されています。算定区分1・2・3のハまたはニを算定する利用者に対し、夜間帯の対応を行う看護職員を常時1名以上配置することが原則です。当該利用者の合計が31以上80以下の場合は2名以上、81以上の場合は50またはその端数を増すごとに1名を加えた数以上の配置が求められます。夜間対応の看護職員は、算定利用者への影響を与えない範囲で同建物内の他の利用者への訪問看護に従事できますが、建物外の利用者への訪問看護との兼務はできません。

施設基準のうち、地域の保険医療機関等との連携に関する相当な実績については経過措置が設けられています。令和9年5月31日までの間は、基準に該当するものとみなされます。

まとめ|効率性と質を両立する新たな評価体系

令和8年度改定で新設される包括型訪問看護療養費は、高齢者住まい等に併設・隣接する訪問看護ステーションを対象に、短時間で頻回な訪問看護を1日単位で包括評価する新たな報酬体系です。点数は単一建物居住利用者数と訪問時間の組み合わせで9区分が設定され、5,950円から15,500円までの範囲で算定します。算定には24時間対応体制、日中・夜間それぞれ1回以上の訪問、看護職員による1日1回以上の関与、電子的記録が必須であり、訪問看護基本療養費(Ⅰ)および(Ⅱ)のハを除く各種基本療養費・加算・管理療養費との同日併算定が制限されます。施設基準では建物の指定、看護職員配置、地域連携実績、職員の負担軽減・処遇改善体制などが求められ、地域連携実績は令和9年5月31日まで経過措置の対象です。出来高評価による加算積み上げの構造を是正しつつ、24時間体制での質の高い在宅療養を支える仕組みとして、対象ステーションは要件への適合と届出準備を進めることが求められます。

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