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マイナ保険証利用率47%突破|次期カードリーダーと医療費助成の最新動向
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マイナ保険証利用率47%突破|次期カードリーダーと医療費助成の最新動向

第208回社会保障審議会医療保険部会で示された利用状況と今後の施策を詳しく解説

令和7年12月18日に開催された第208回社会保障審議会医療保険部会において、マイナ保険証の利用促進等に関する資料が公表されました。従来の保険証からマイナ保険証への移行が進む中、利用率の算出方法の見直しや利便性向上に向けた施策が示されています。本稿では、この資料の内容を解説します。

マイナ保険証の利用状況については、令和7年10月時点のレセプト件数ベース利用率が47.26%に到達しました。今後の利用促進に向けては、次期顔認証付きカードリーダーの導入支援に224億円の補正予算が措置され、こども医療費等の受給者証とマイナンバーカードの一体化も進められます。後期高齢者医療制度における資格確認書の職権交付についても、令和8年8月以降の見直しが検討されています。

マイナ保険証の利用率と普及状況

マイナ保険証の利用状況を示す指標として、令和7年12月から利用率の算出方法が変更されます。従来のオンライン資格確認件数ベースからレセプト件数ベースへと移行し、患者の利用実態をより正確に反映できるようになります。

令和7年10月時点のマイナ保険証の普及状況は着実に進展しています。マイナンバーカードの保有者は9,948万人で全人口の79.9%に達し、そのうちマイナ保険証の登録者は8,730万人でカード保有者の87.8%を占めています。レセプト件数ベース利用率は47.26%となり、令和6年1月の3.99%から大幅に上昇しました。

都道府県別の利用率には地域差が見られます。最も高いのは富山県の59.37%で、宮崎県57.48%、静岡県56.42%が続きます。一方、最も低いのは沖縄県の27.63%で、和歌山県36.69%、大阪府37.36%となっています。全国平均は47.26%で、前月から2.86ポイント上昇しました。

年齢層別に見ると、65歳〜74歳の利用率が最も高く、令和7年11月時点で48.55%〜49.39%に達しています。0歳〜4歳の伸びも著しく、令和6年6月の3.13%から令和7年11月には40.97%へと急増しました。一方で、5歳〜19歳の若年層は30%前後にとどまり、利用率の伸び悩みが課題となっています。

次期顔認証付きカードリーダーの仕様と導入支援

現行の顔認証付きカードリーダーは令和8年3月末から順次保守期限を迎えるため、次期規格の開発が進められています。令和7年2月に仕様を公表してメーカーを公募した結果、キヤノンマーケティングジャパン、パナソニックコネクト、リコージャパンの3社が参入し、令和8年度から順次発売を開始する予定です。

次期顔認証付きカードリーダーでは、現行機の運用上の課題を解決する改善が図られます。スマートフォン用電子証明書の読み取りに本体のみで対応し、外付けの汎用カードリーダーが不要になります。視覚障害者向けには認証状況やエラーの発生に関する音声案内機能が搭載され、操作手順の音声案内やテンキー搭載も推奨されています。さらに、画面レイアウトの統一や視認性・操作性の改善により、高齢者にとっても使いやすい設計となります。

各メーカーの製品には独自の特徴があります。キヤノンマーケティングジャパンの製品は軽量でコンパクトなサイズと取り外し可能な構造が特徴で、テンキー一体化構造により外付けテンキーが不要です。パナソニックコネクトの製品は資格確認端末(Windows PC)を内蔵し、LAN接続による設置自由度の向上を実現しています。両社ともスピーカー内蔵による音声案内機能を備えています。

導入支援として、令和7年度補正予算により224億円が措置されました。次期顔認証付きカードリーダーを導入する医療機関・薬局に対しては費用の1/2が補助され、資格確認端末の買い替えについても1/3の補助が実施されます。

医療費助成のオンライン資格確認と利便性向上

マイナンバーカードを活用した医療費助成の効率化が進められています。公費負担医療・地方単独医療費助成のオンライン資格確認に必要なシステムはデジタル庁において設計・開発・運用されており、令和5・6年度に183自治体(22都道府県、161市町村)が先行実施事業に参加しました。令和8年度中には全国規模での導入を目指しています。

先行実施の参加自治体は着実に拡大しています。令和7年度には625自治体(41都道府県、584市区町村)が参加・参加予定となり、こども医療費助成は523市区町村、障害者医療費助成は485市区町村、ひとり親家庭医療費助成は506市区町村で実施予定です。令和9年度からは支払基金又は国保連においてシステムの管理・運用等の業務を実施する体制が整備されます。

この取り組みにより、患者、医療機関・薬局、自治体のそれぞれにメリットが生まれます。患者にとっては紙の受給者証を持参する手間が軽減され、紛失リスクや持参忘れによる再来院も防止できます。医療機関・薬局では資格情報及び受給者証情報の手動入力の負荷が削減され、正確な資格情報に基づく請求により資格過誤請求が減少します。自治体においても医療費助成の資格確認に関する事務負担が軽減されます。

後期高齢者医療制度における対応

後期高齢者医療制度では、令和8年7月末まで全員一律に資格確認書を職権交付する運用を行っています。これは高齢者が新たな機器の取扱いに不慣れであることなどに配慮した措置ですが、令和8年8月以降は見直しが検討されています。

後期高齢者のマイナ保険証利用状況には年齢層によって差があります。令和6年9月から令和7年8月までの利用実績を見ると、75歳〜79歳では43%が6回以上利用している一方、90歳以上では22%にとどまります。マイナ保険証を利用していない割合は、85歳〜89歳で45%、90歳以上で62%となっており、年齢が上がるほど利用率は低下する傾向にあります。

令和8年8月以降の対応方針案では、年齢及び過去の利用実績に基づく区分が示されています。84歳以下の被保険者には引き続き資格確認書が職権交付されます。85歳以上の被保険者については、直近1年間に6回以上利用しかつ直近3か月における利用実績がある場合は、マイナ保険証を基本とし申請により資格確認書の交付も可能となります。85歳以上でこの条件を満たさない被保険者には引き続き資格確認書が職権交付されます。

まとめ

第208回社会保障審議会医療保険部会で示されたマイナ保険証の利用促進等に関する施策は、利用環境の整備と利便性向上の両面から推進されています。令和7年10月のレセプト件数ベース利用率は47.26%に達し、着実な普及が進んでいます。次期顔認証付きカードリーダーの導入支援には224億円の補正予算が措置され、スマートフォン対応や音声案内機能など利便性が大幅に向上します。こども医療費等の受給者証とマイナンバーカードの一体化も進み、令和8年度中の全国規模導入が目指されています。後期高齢者医療制度における資格確認書の職権交付も、年齢及び利用実績を踏まえたきめ細かな対応へと見直されます。

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