令和8年1月23日に開催された中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第644回)において、医療機器及び臨床検査の保険適用が審議されました。新機能・新技術を有する医療機器5品目、再製造医療機器1品目、臨床検査3項目の保険収載が決定しています。
今回の収載では、血液検体から包括的なゲノムプロファイルを取得できるがん遺伝子パネル、治療抵抗性高血圧に対する腎デナベーション用カテーテル2製品、三尖弁閉鎖不全症に対する経皮的クリップシステム、非小細胞肺癌に対する腫瘍治療電場療法用電極が新たに保険適用となります。臨床検査では、重症肺炎患者向けの多項目同時検出パネル、妊婦のトキソプラズマ感染診断補助検査、デュシェンヌ型筋ジストロフィー遺伝子治療の適応判定検査が収載されます。
医療機器の保険適用(区分C2:新機能・新技術)
令和8年3月1日に保険収載される区分C2(新機能・新技術)の医療機器は5品目です。これらは既存の医療機器では対応できない新たな機能や技術を持つ製品として評価されました。
Guardant360 CDx がん遺伝子パネル
Guardant360 CDx がん遺伝子パネルは、固形がん患者の血液検体から包括的なゲノムプロファイルを取得する検査システムです。本品はガーダントヘルスジャパン株式会社が製造販売しており、特定保険医療材料としてではなく新規技術料として評価されます。
本製品の特徴は、組織生検が困難な患者でも血液検査(リキッドバイオプシー)によって遺伝子異常を検出できる点にあります。対応するコンパニオン診断として、非小細胞肺がんにおけるKRAS G12C変異(ソトラシブ)、ERBB2遺伝子変異(トラスツズマブ デルクステカン)、EGFR遺伝子エクソン20挿入変異(アミバンタマブ)、乳がんにおけるESR1遺伝子変異(イムルネストラントトシル酸塩)、結腸・直腸がんにおけるBRAF V600E変異、KRAS/NRAS遺伝子野生型、ERBB2コピー数異常、MSI-Highなど多数の遺伝子異常と治療薬の適応判定が可能となります。
準用技術料として、HER2遺伝子検査(固形癌に係るもの)およびESR1遺伝子検査(乳癌に係るもの)にはD006-27悪性腫瘍遺伝子検査(血液・血漿)の「7」HER2遺伝子検査(大腸癌に係るもの)2,500点が適用されます。ピーク時の推定適用患者数は29,176人、市場規模予測は0.4億円と見込まれています。
Paradise システム(腎デナベーション用カテーテル)
Paradise システムは、大塚メディカルデバイス株式会社が製造販売する超音波エネルギー式の腎神経焼灼術用カテーテルです。治療抵抗性高血圧症患者の追加的治療として、腎動脈周辺の交感神経を焼灼することで血圧低下を図ります。
本システムの構成はParadise カテーテル(償還価格694,000円)とParadise カートリッジ・冷却水(償還価格124,000円)の2つです。Paradise カテーテルは原価計算方式により算定され、有用性加算10%(加算係数0.2)が認められました。有用性加算の根拠として、既存の治療方法では効果が不十分な患者群において効果が認められる点、既存の治療方法との併用により臨床上有用な効果の増強が示される点が評価されています。
RADIANCE-HTN TRIO試験において、手技後2ヶ月時点での昼間収縮期24時間ABPMの中央値は、腎デナベーション群で-8.0 mmHg、シャム群で-3.0 mmHgと有意な差が認められました(群間差-4.5 mmHg、p=0.022)。準用技術料はK613腎血管性高血圧症手術(経皮的腎血管拡張術)31,840点です。
Symplicity Spyral 腎デナベーションシステム
Symplicity Spyral 腎デナベーションシステムは、日本メドトロニック株式会社が製造販売する高周波エネルギー式の腎神経焼灼術用カテーテルです。Paradise システムと同様に治療抵抗性高血圧症患者を対象としますが、焼灼方式が異なります。
本製品のSymplicity Spyral多電極腎デナベーションカテーテルの償還価格は1,410,000円で、原価計算方式により算定されています。有用性加算10%(加算係数0.2)が認められました。カテーテル遠位端の4つの電極で高周波エネルギーにより円周状にアブレーションを行う構造となっています。
SPYRAL HTN-ON MED Expansion試験では、主要評価項目の術後6ヶ月時点での24時間ABPM収縮期血圧の平均変化は統計学的有意差に達しませんでしたが、副次評価項目の診察室血圧、夜間ABPM収縮期血圧ではRDN群で有意な低下が認められました。準用技術料はK613腎血管性高血圧症手術(経皮的腎血管拡張術)31,840点です。
オプチューンルア(非小細胞肺癌用腫瘍治療電場電極)
オプチューンルアは、ノボキュア株式会社が製造販売する非小細胞肺癌治療用の体表面用電場電極です。切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌患者で、白金系抗悪性腫瘍剤を含む化学療法で増悪後にPD-1/PD-L1阻害剤との併用治療に使用されます。
償還価格は小型48,800円、大型65,000円で、類似機能区分比較方式により既存の体表面用電場電極(膠芽腫用)35,900円を基準に算定されています。有用性加算10%が認められました。腫瘍治療電場(TTフィールド)と呼ばれる交流電場を体内に発生させ、癌細胞の増殖を阻害する作用機序を持ちます。
ランダム化比較試験において、標準治療+TTフィールド治療群は標準治療単独群に比べ全生存期間が有意に延長し、死亡のハザード比は0.76(95%信頼区間0.58-0.99)でした。ICI+TTフィールド治療群では全生存期間の中央値が19.0カ月(ICI単独群10.8カ月)と改善が認められています。準用技術料はC118在宅腫瘍治療電場療法指導管理料2,800点です。
TriClip システム(経皮的三尖弁クリップ)
TriClip システムは、アボットメディカルジャパン合同会社が製造販売する経皮的三尖弁クリップシステムです。症候性高度三尖弁閉鎖不全症患者のうち、至適薬物療法で改善しない患者に対して使用されます。
償還価格は3,060,000円で、原価計算方式により算定されています。クリップデリバリーシステム、スティーラブルガイドカテーテル及び専用付属品から構成され、経皮的に右心房まで挿入したカテーテルを介してクリップを三尖弁に留置し、弁間を接合することで三尖弁逆流を低減します。
TRILUMINATE試験では、主要評価項目として術後12か月の階層的複合評価でWin比1.8(95%信頼区間1.4-2.5、p<0.0001)を達成しました。KCCQスコアで15ポイント以上の改善を示した患者の割合は本品群52%、対照群24%でした(p<0.0001)。準用技術料はK559-3経皮的僧帽弁クリップ術34,930点です。留意事項として、1回の手術に対し原則2個、最大4個を限度として算定可能であり、2個目以降は償還価格の50%相当額となります。
医療機器の保険適用(区分R:再製造)
令和8年3月1日に保険収載される区分R(再製造)の医療機器は1品目です。再製造医療機器は、使用済みの単回使用医療機器を収集・再製造し、新品と同等の品質・安全性を確保した製品です。
再製造心腔内超音波カテーテルAS
再製造心腔内超音波カテーテルASは、日本ストライカー株式会社が製造販売する再製造単回使用医療機器です。原型医療機器であるジョンソン・エンド・ジョンソン社の「サウンドスターSH」を再製造した製品となります。
償還価格は229,000円で、心腔内超音波プローブ(磁気センサー付き)327,000円に再製造係数0.7を乗じて算定されています。外国平均価格との比は1.0です。再製造品の使用にあたっては、再製造品であることについて文書を用いて患者に説明することが留意事項として定められています。
臨床検査の保険適用(令和8年2月1日収載予定)
臨床検査の保険適用は令和8年2月1日から適用されます。今回は3つの新項目が収載されます。
BioFire 肺炎パネル
BioFire 肺炎パネルは、ビオメリュー・ジャパン株式会社が製造販売する重症肺炎患者向けの多項目同時検出検査です。喀痰または気管支肺胞洗浄液を検体として、33種類の病原体核酸及び薬剤耐性遺伝子を一度に検出できます。
保険点数は1,273点で、D019細菌薬剤感受性検査「3」3菌種以上310点とD023微生物核酸同定・定量検査「22」ウイルス・細菌核酸多項目同時検出963点を併せて算定します。測定方法はマイクロアレイ法(定性)です。
算定要件として、救命救急入院料や特定集中治療室管理料等を算定する病床での集中治療、または同等の治療が行われた重症肺炎患者が対象となります。感染対策向上加算1または2の施設基準を満たす医療機関で、感染症または臨床検査を専門とする常勤医師が配置されていることが求められます。
Toxo-IgG Avidity・アボット
Toxo-IgG Avidity・アボットは、アボットジャパン合同会社が製造販売するトキソプラズマ感染診断補助検査です。血清または血漿中のトキソプラズマIgG抗体アビディティーを測定し、感染時期の推定に用いられます。
保険点数は425点で、D012感染症免疫学的検査「60」HTLV-I抗体(ウエスタンブロット法及びラインブロット法)を準用します。測定方法は化学発光免疫測定法(CLIA法)です。
算定要件として、トキソプラズマIgM抗体陽性でスピラマイシンを服用している妊娠満16週未満の妊婦においてトキソプラズマの母子感染を疑う場合に、原則として一連の治療において1回に限り算定できます。アビディティー高値(60.0%Avi以上)の場合は、採血から4か月以上前に感染したことを強く示す特性を有しています。
エクルーシス試薬 Anti-AAVrh74
エクルーシス試薬 Anti-AAVrh74は、ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社が製造販売するデュシェンヌ型筋ジストロフィー遺伝子治療の適応判定検査です。血清または血漿中の抗アデノ随伴ウイルス血清型rh74(抗AAVrh74)抗体を検出します。
保険点数は12,850点で、D012感染症免疫学的検査「66」抗アデノ随伴ウイルス9型(AAV9)抗体を準用します。測定方法はECLIA法(定性)です。
デランジストロゲン モキセパルボベクの投与にあたっては、抗AAVrh74抗体を保有している患者では免疫応答反応により薬効の減弱等をもたらす可能性があるため、抗体が陰性であることを確認する必要があります。関連学会の定める適正使用指針において定められた実施施設基準を満たす医療機関において、原則として患者1人につき1回に限り算定できます。
まとめ
中医協総会第644回では、区分C2(新機能・新技術)として5品目、区分R(再製造)として1品目の医療機器、及び臨床検査3項目の保険適用が決定しました。医療機器は令和8年3月1日から、臨床検査は令和8年2月1日から保険適用となります。
今回収載される製品群の特徴として、がんゲノム医療の進展に対応したリキッドバイオプシー検査、治療抵抗性高血圧に対する新たな治療選択肢としての腎デナベーション、構造的心疾患に対する低侵襲治療としての経皮的三尖弁クリップ術など、これまで治療選択肢が限られていた疾患領域への新技術導入が含まれています。臨床検査においても、重症肺炎の迅速診断、妊婦のトキソプラズマ感染時期推定、希少疾患の遺伝子治療適応判定など、臨床的ニーズの高い検査が収載されました。
医療機関においては、各製品の算定要件や施設基準を確認の上、適切な患者選択と使用が求められます。










