令和8年度診療報酬改定では、看護職員の一時的な不足に対応するため、施設基準の届出に関する新たな柔軟化ルールが設けられました。医療現場の約8割が看護職員の配置に困難を感じている状況を踏まえ、平時から採用活動を行っている医療機関が突発的な事情で看護職員を確保できない場合に、届出の猶予を認める仕組みです。
この柔軟化ルールのポイントは3つあります。第一に、看護要員数について暦月で1か月を超える1割以内の一時的な変動があった場合、最長3か月間、届出区分の変更が不要になります。第二に、この猶予を受けるには、ハローワークやナースセンターなどの公的職業紹介を活用した採用活動を平時から行っていることが条件です。第三に、猶予の適用は年1回に限られ、地方厚生局への報告義務があります。
改定の背景:深刻化する看護職員不足と従来の取扱い
今回の改定は、医療現場における看護職員不足の深刻化を背景としています。令和7年度の実態調査によると、入院料の施設基準を満たす看護職員の配置について、「困難を感じる」と回答した医療機関は約8割に上りました。また、令和6年度の実態調査では、勤務シフトの組み方について、すべての勤務形態で「組みにくくなった」との回答が3割を超えています。
従来、看護要員数の一時的な変動に対する届出猶予は、新型コロナウイルス感染症の特例措置として運用されていました。この特例では、コロナ患者の受入れによる入院患者の急増や、職員の感染による一時的な人手不足が生じた場合に、3か月を超えない期間に限り届出区分の変更を不要としていました。この特例の期限は令和8年5月31日までとされていましたが、今回の改定で、コロナに限らず突発的な事情全般に対応する恒久的な制度として新たに規定されました。
柔軟化の具体的な内容:対象となる変動と猶予期間
新たに設けられた柔軟化ルールは、看護要員に関する3つの指標を対象としています。対象となる指標は、1日当たり勤務する看護要員の数、看護要員の数と入院患者の比率、そして看護師及び准看護師の数に対する看護師の比率です。
これらの指標について、猶予が認められる条件は2つあります。ひとつは、突発的で想定が困難な事象によるやむを得ない事情が原因であることです。もうひとつは、暦月で1か月を超える1割以内の一時的な変動であることです。
この2つの条件を満たす場合、3か月を超えない期間に限り、届出区分の変更が不要となります。ただし、この猶予の適用は1年に1回に限られます。
猶予を受けるための4つの要件
届出猶予の適用を受けるには、以下の4つの要件すべてに該当する必要があります。
要件1:公的職業紹介の活用。ハローワーク(公共職業安定所)または都道府県ナースセンター等の無料職業紹介事業を活用して、看護職員の確保に係る取組を行っていることが必要です。なお、やむを得ない事情が生じていない平時においても、看護職員の求人を行う際にこれらを活用することが望ましいとされています。
要件2:適正認定事業者の利用。民間の有料職業紹介事業者を利用する場合は、医療・介護・保育分野における適正な有料職業紹介事業者認定制度による適正認定事業者を含めることが求められます。
要件3:自主的な採用活動の推進。公的職業紹介を活用している場合でも、医療機関自らが採用情報をウェブサイトで公表する等、看護職員確保に積極的に取り組んでいることが望ましいとされています。
要件4:看護要員の労働時間管理。一時的に看護職員を確保できない場合には、一部の看護要員へ過度な業務負担とならないよう、適正な労働時間管理を行い、体制の整備を図るよう努めることが求められます。
報告の手続き:届出が不要でも報告は必要
届出区分の変更は猶予されますが、地方厚生局等への報告は必要です。報告は、やむを得ない事情が生じた日の属する月の翌月までに、速やかに行わなければなりません。
報告にあたっては、所定の様式に、看護職員の確保に係る取組の内容と、一時的に看護職員を確保できないやむを得ない事情を記載します。この様式には、報告する時点で有効な求人票を添付することが必要です。
まとめ
令和8年度診療報酬改定では、看護職員の一時的な不足に対応する施設基準の柔軟化ルールが新設されました。暦月で1か月を超える1割以内の一時的な変動であれば、最長3か月間、届出区分の変更が不要となります。ただし、この猶予を受けるには、ハローワークやナースセンターの活用を含む平時からの採用活動が前提条件です。届出は不要でも報告義務はありますので、手続きの準備を怠らないよう注意が必要です。










