株式会社miiboのCEO、maKunugi氏が「AIドリブン経営」の実現方法について、実例と具体的な構築法を公開しました。同社では既に、AIエージェント「Growth Buddy」が毎日経営提案を行い、人間がその提案を実行するという構図が実現しています。ChatGPT登場から2年間の試行錯誤で得られた知見を、2025年現在で実装可能な技術に絞って解説しています。
本記事では、AIドリブン経営の定義から始まり、成功に必要な5つの要素、具体的なシステム構成、そして実装のための詳細なTipsまでを網羅しています。特に注目すべきは、毎日自動生成される経営レポート「モメンタム新聞」や、Slack上でリアルタイムに戦略提案を行うGrowth Buddyの実例です。10人でユニコーン企業が作れる時代において、組織自体を「AIドリブン」にすることこそがゲームチェンジャーになると強調されています。
AIドリブン経営の定義と実現可能性
AIドリブン経営とは、AI技術を活用して意思決定や業務を最適化する経営方法です。単なる業務効率化にとどまらず、AIが経営判断に関与することで、業務効率や生産性を飛躍的に向上させ、企業の実現したいことに向き合う時間を最大化します。
株式会社miiboでは、2023年のChatGPT登場初期からAIドリブン経営の試行錯誤を重ねてきました。その結果、AIが提案した戦略を人間が実行するという構図が日常化しています。経営リスクの洗い出し、プロダクト改善ポイントの提案、イベント企画、チャーン防止策など、多岐にわたる経営判断にAIが関与しています。
重要なのは、これらが「いつかできること」ではなく、「2025年現段階で実現可能なこと」である点です。技術的に再現可能な内容に焦点を当て、実装への道筋を明確に示しています。
Growth Buddyが実現する経営支援の実例
Growth Buddyは、社内の行動データを分析し、組織内でとるべき「成長アクション」をリアルタイムで提案し続けるAIエージェントです。このAIは、単なる分析ツールではなく、経営の意思決定に深く関与する存在として機能しています。
自然言語での戦略相談では、社内のSlack情報の整理から売上推移の分析、プロダクトの課題抽出まで、様々な分析結果を提供します。内部では「TextToSQL」という技術が活用され、複雑なデータベースクエリを自然言語で実行できるようになっています。
Slack上でのリアルタイム提案も特筆すべき機能です。Growth Buddyは能動的に、お問い合わせの傾向分析やプロダクトの改善点について提案を行います。人間が質問しなくても、AIが自ら必要な情報を判断して提供する仕組みが構築されています。
さらに、毎日発行される「モメンタム新聞」では、直近のBIG NEWS、社内MVP、緊急事態の確認、リード顧客分析、改善点まとめなど、人間では毎日まとめ切るのが不可能な「全データを横断した客観的な経営分析」を提供しています。ユーモアを交えた表現で、社内でも大好評を得ています。
AIドリブン経営に必要な5つの要素
AIドリブン経営を成功させるには、以下の5つの要素がすべて揃っている必要があります。1つでも欠けると、人間がAIのアウトプットを信頼できない、もしくは自分ごと化できないため、機能しません。
方向性をAIと共有することは、企業のMVVやOKR、KPIなどをAIが参照できる状態にすることを意味します。AIが企業の向かうべき方向性を十分に理解していることが前提条件となります。
「今」をAIと共有できていることは、リアルタイム性の確保を指します。組織内で今必要とされることをAIが考慮して動く必要があり、「今それをAIに出されても困る」という状況を回避します。
AIのアウトプットが何らかのアクションと呼応することは、提案の実効性を担保します。AIの提案が実際の行動につながらなければ、どんなに優れた分析も意味を成しません。
AIのアウトプットに透明性があることは、信頼性の基盤となります。AIの判断根拠をトラッキングできるようにし、必要に応じてデバッグできる環境を整えます。
AIの自己進化が可能なことは、継続的な改善を実現します。フィードバックループを回し、AI自身が学習し続ける仕組みが不可欠です。
具体的なシステム構成と実装方法
AIドリブン経営を実現するシステム構成は、3つの必須要素と追加要素から成り立ちます。中核となるのは「データストリーム」で、組織内の様々なデータが流れる基盤となります。
データストリームには、売上や顧客対応などの一次データと、AIが分析して生み出した示唆やレポートのAI生成データの両方が含まれます。重要なのは、AIの示唆も再度データストリームに流し込むことで、過去の提案がどう機能したかも学習材料になる点です。
Tracking Agentは、多様なデータフォーマットを統一形式に変換し、データ品質のチェックや欠損データの補完を行います。これにより、異なるツールから得られるデータを横断的に分析可能にします。
Growth Buddyは、データストリームの情報を分析し、一次データと過去の示唆を横断的に検討します。「過去の成功体験に基づいて、今のデータを分析する」ことが可能になり、経営陣のコミュニケーションスタイルを学習しながら、企業の方向性を常に考慮した提案を行います。
さらに、MCPなどで外部サービス連携が可能なAIエージェントを用意しておけば、Growth Buddyが他のAIエージェントの「司令塔」として機能することも可能です。
実装を成功させるための高度なTips
組織の方向性をAIに共有する方法として、「North Star Prompt」が紹介されています。企業の方向性や各チームの目標等を盛り込んだ構造化プロンプトを用意し、AIのSystem Promptに与えることで、提案が企業の方向性とアラインできる状態を構築します。
AIとワーキングアグリーメントを結ぶことも重要なポイントです。アジャイルのフレームワークである「スクラム」で採用される約束事の概念を応用し、AIと人間間の約束事をRAGデータとして格納します。これにより、AIが適宜参照できるようになります。
ワーキングアグリーメントは、AIと人間のコミュニケーションの中でアップデートできるようにしておきます。絶えず更新ができる状態にすることで、AIドリブン経営を進めながら、自律的に進化する基盤を構築できます。
これらのTipsを実装することで、5つの必須要素のうち「方向性の共有」「透明性」「自己進化」の3つを効果的に実現できます。
まとめ
AIドリブン経営は、もはや未来の話ではなく、2025年現在で実現可能な経営手法です。株式会社miiboの事例が示すように、適切なシステム構成と実装方法により、AIが経営判断に深く関与する組織を構築できます。重要なのは、5つの必須要素をすべて満たし、継続的な改善サイクルを回すことです。現在の課題である「AIのアクション不足」も、今後5年で大きく進展することが予想されます。今こそ、AIドリブン経営の実践により、組織に馴染ませる絶好の機会といえるでしょう。
AIドリブン経営実践ガイド|データから価値を生み出す8つのステップとmiibo活用法(https://miibo.site/ai-driven-management-guide/)
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