令和7年12月24日に開催された中央社会保険医療協議会総会(第638回)において、令和8年度診療報酬改定に向けた技術的事項が審議されました。本稿では、骨密度検査の算定要件見直し、情報通信機器を用いた心大血管疾患リハビリテーション、新型コロナウイルス感染症治療薬の扱いという3つの論点について解説します。
今回の審議では、骨塩定量検査の算定間隔について学会ガイドラインとの整合性を図る方向性が示されました。遠隔心臓リハビリテーションについては、薬事承認されたプログラム医療機器に対応した評価のあり方が検討されています。新型コロナウイルス感染症については、5類移行後の状況を踏まえ、DPCにおける診断群分類の設定検討と抗ウイルス剤の特例措置終了が論点となっています。
骨密度検査の算定要件見直し
骨塩定量検査の現行算定要件は、患者1人につき4月に1回に限り算定可能とされています。この要件は、関連学会のガイドライン推奨と乖離している状況です。
骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版では、測定間隔について一般的に開始1年後、治療法が確立された後は1年間以上の間隔でよいとされています。このガイドラインでは、年に1回以上の測定を要する場合として、新規骨折発生時やビスホスホネート薬治療の一時中止を検討する場合等が挙げられています。
測定間隔を短縮する必要がある場合も明示されています。急激な骨減少・増加をきたす薬剤(グルココルチコイド、アロマターゼ阻害薬、抗アンドロゲン療法、骨形成促進薬)の投与時や、急激な骨減少・増加をきたす病態(吸収不良、全身性炎症疾患、長期不動、人工閉経)がある場合には、観察期間の短縮が推奨されています。
今回の論点は、このガイドライン推奨を踏まえた算定要件の見直しです。現行の「4月に1回」という要件を、ガイドラインに沿った形で調整することが検討されています。
情報通信機器を用いた心大血管疾患リハビリテーション
遠隔で心臓リハビリテーションを実施するプログラム医療機器「リモハブ CR U」が薬事承認されました。この機器は、専用のエルゴメータとウェアラブル心電計を併用し、遠隔で在宅の患者を最大8名同時にモニタリングしながら心臓リハビリテーションを実施できます。
このプログラム医療機器の有効性は、医師主導治験で確認されています。治験では、入院中の集団心大血管疾患リハビリテーション及び退院後3~4週間の通院による心大血管リハビリテーション後に患者を無作為に割り付け、当該製品を用いた遠隔心リハを実施した群と通院群を比較しました。12週間の介入終了時の6分間歩行距離の変化量について、非劣性が示されています。
安全性についても検証されています。有害事象の発生率は遠隔心リハ群49.1%、通院心リハ群35.7%でした。発生した有害事象はいずれも本品使用との因果関係は否定されています。
現行制度との整合性が課題となっています。心大血管リハビリテーション料の算定要件には、医師が直接監視を行うか、同一建物内において直接監視をしている他の従事者と常時連絡が取れる状態かつ緊急事態に即時的に対応できる態勢であることが求められています。施設基準には、専用の機能訓練室や酸素供給装置、除細動器、心電図モニター装置等の設置が規定されています。現時点では、情報通信機器を用いた場合の規定は示されていません。
日本心臓リハビリテーション学会のステートメント(2023年10月)では、緊急時対応の観点からケアギバーが状況把握できることが望ましいとされています。独居で近傍にもサポートできるケアギバーがいない場合には、遠隔心リハの適応には慎重を期するとの指針が示されています。
今回の論点は、これらの算定要件・施設基準と学会指針を踏まえた、遠隔心臓リハビリテーションの評価のあり方です。
新型コロナウイルス感染症治療薬の扱い
DPC/PDPSにおける新型コロナウイルス感染症の扱いについて、2つの論点が示されています。1つ目は診断群分類の設定検討、2つ目は抗ウイルス剤に係る特例措置の終了です。
診断群分類については、これまで出来高算定とされてきました。令和6年度診療報酬改定時は、改定に用いるデータの対象期間中(令和4年10月~令和5年9月)に感染症法上の位置づけの変更等が行われ、入院診療の実態が大きく変化していたため、引き続き出来高算定とされました。令和8年度改定では、データの対象期間中(令和6年10月~令和7年9月)に感染症法上の位置づけの変更等は行われていません。このため、「MDC毎の診断群分類見直し技術班」において、診断群分類の検討を行うことが論点となっています。
抗ウイルス剤の特例措置については、終了が検討されています。令和6年4月以降も当面の間、地域包括ケア病棟入院料や療養病棟入院基本料等を算定する患者、及び介護保険施設入所中の患者について、新型コロナウイルス感染症に係る抗ウイルス剤を包括範囲からの除外薬剤として薬剤料を算定できるとされてきました。令和5年度の千床あたり1月あたりの患者数は、最も多い地域包括ケア病棟で23.4人、療養病棟入院料1で15.3人、療養病棟入院料2で6.7人でした。介護保険施設では、介護老人保健施設で定員千人あたり2.8人、介護医療院で定員千人あたり19.6人でした。
今回の論点は、通常の医療提供体制へ移行していることを踏まえ、これらの特例的な取扱いを終了することについてです。
まとめ
令和8年度診療報酬改定に向けて、3つの技術的事項が審議されています。骨塩定量検査の算定要件は、ガイドラインとの整合性を図る方向で見直しが検討されています。情報通信機器を用いた心大血管疾患リハビリテーションは、薬事承認されたプログラム医療機器に対応した評価のあり方が論点となっています。新型コロナウイルス感染症については、5類移行後の状況を踏まえ、DPCにおける診断群分類の設定検討と抗ウイルス剤の特例措置終了が検討されています。










