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DPC高額薬剤判定|第650回中医協で13成分を出来高算定へ
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DPC高額薬剤判定|第650回中医協で13成分を出来高算定へ

84パーセンタイル値による判定の仕組みから対象成分、インレビックの分岐反映案まで、実務の要点を整理します

令和8年5月13日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第650回)は「DPCにおける高額な新規の医薬品等への対応について」を議題としました。新規に薬価収載された医薬品等はDPC/PDPSの診療報酬点数表に反映されていないため、高額な薬剤を包括評価のまま使うと、医療機関の持ち出しが生じるおそれがあります。本稿では、今回示された判定の仕組み、対象となる医薬品等、診断群分類への反映案を解説します。

今回の議題では、13成分を出来高算定の対象とし、1成分を診断群分類の分岐に反映する案が示されました。判定の基準は、1入院あたりの標準的な薬剤費が、包括範囲薬剤費の84パーセンタイル値を超えるかどうかです。出来高算定の対象案は、効能・効果などの一部変更(一変)8成分と新薬5成分の計13成分です。新薬のインレビックカプセルは、類似薬モメロチニブ塩酸塩と同じ診断群分類の分岐に反映する案が示されました。

※本稿の「13成分」「8成分」「5成分」は、資料の一覧を成分名単位で数えた件数です。資料自体に件数の記載はありません。また、規格ごと(例:アイリーアの注射液とキット)に数えると件数は多くなります。

高額薬剤判定は、点数表に未反映の新薬を出来高で評価する仕組み

高額薬剤判定とは、新たに保険適用された高額な医薬品等を使った患者を、DPCの包括評価から外す仕組みです。判定は、対象医薬品と診断群分類の抽出、1入院あたり薬剤費の算出、84パーセンタイル値との比較という3段階で進みます。

高額薬剤判定が必要なのは、新薬の費用がDPCの包括点数に含まれていないためです。 DPC/PDPSは、診断群分類ごとに1日あたりの点数を定める包括払いの制度です。この包括点数は、過去の診療実績データをもとに設定されます。そのため、実績データのない新薬の費用は、包括点数に含まれていません。高額な新薬の費用を医療機関が負担し続けると、新しい医療技術の導入が妨げられます。そこで、一定の基準に該当する医薬品等を使った患者は、次期診療報酬改定までの間、包括評価の対象外とし、出来高算定とされています。

判定の第1段階では、対象となる医薬品と、それを使う可能性のある診断群分類を抽出します。 対象となる医薬品は、新薬、効能・効果や用法・用量の一部変更(一変)を受けた医薬品、事前評価済公知申請の医薬品の3種類です。これらの医薬品ごとに、効能・効果から使用の可能性がある診断群分類(14桁コード)を抽出します。

判定の第2段階では、「仮想投与回数」から1入院あたりの標準的費用を算出します。 仮想投与回数とは、入院初日から退院まで、添付文書の用法・用量どおりに投与した場合の投与回数です。資料では、仮想投与回数と1回投与あたりの標準的な費用をもとに、平均在院日数を加味した1入院あたりの標準的費用を示しています。併用する医薬品がある場合は、その費用も標準的費用に含まれます。

判定の第3段階では、1入院あたりの標準的費用を84パーセンタイル値と比較します。 84パーセンタイル値とは、当該診断群分類の1入院あたり包括範囲薬剤費を低い順に並べたとき、下から84%の位置にある値です。前年度に使用実績のない医薬品の場合は、当該医薬品を使っていない症例の薬剤費から84パーセンタイル値を求めます。標準的費用がこの値を超えると、その医薬品は高額薬剤に指定されます。比較は診断群分類ごとにおこなうため、同じ医薬品でも、出来高算定となる診断群分類とならない診断群分類が生じます。

高額薬剤判定の作業は、新薬の薬価収載にあわせて年4回実施されます。 緊急に薬価収載された新薬については、必要に応じて追加の判定がおこなわれます。判定の結果は、包括評価の対象外とする薬剤と診断群分類を定める「高額薬剤告示」に追加されます。

出来高算定の対象案は、一変8成分と新薬5成分の計13成分

今回の判定で基準に該当し、出来高算定の対象とする案が示されたのは、一変8成分と新薬5成分の計13成分です。判定の範囲は、令和8年3月23日に効能・効果と用法・用量が追加された医薬品、令和8年3月5日に公知申請が受理された医薬品、令和8年5月20日に薬価収載予定の医薬品等です。案では、これらを使った患者のうち、医薬品ごとに指定された診断群分類に該当する患者が、次期診療報酬改定まで出来高算定となります。

一変8成分のうち5成分は、がん領域の医薬品です。 エンハーツ点滴静注用100mgは、HER2陽性の進行・再発の固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)が対象です。ニュベクオ錠300mgは、アンドロゲン受容体陽性の根治切除不能な進行・再発の唾液腺癌が対象です。ターゼナカプセルは、遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺癌が対象です。ルンスミオ皮下注は、再発又は難治性の大細胞型B細胞リンパ腫と、再発又は難治性の濾胞性リンパ腫が対象です。ポライビー点滴静注用は、大細胞型B細胞リンパ腫と、再発又は難治性の濾胞性リンパ腫が対象です。

一変8成分の残り3成分は、がん以外の領域の医薬品です。 アイリーア8mgは、網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫が対象です。デュピクセント皮下注は、中等症から重症の水疱性類天疱瘡が対象です。フィブリノゲンHT静注用1g「JB」は、心臓血管外科手術における出血に伴う後天性低フィブリノゲン血症に対するフィブリノゲンの補充が対象です。

新薬5成分のうち2成分は、1回あたり5,000万円を超える、細胞を脳内に移植する製品です。 アクーゴ脳内移植用注は、ヒト(同種)骨髄由来間葉系幹細胞を移植し、外傷性脳損傷に伴う慢性期の運動麻痺の改善に使う製品です。アムシェプリは、非自己iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞を移植し、パーキンソン病患者の運動症状の改善に使う製品です。残る3成分は、ソホノスカプセル(進行性骨化性線維異形成症)、ドジョルビ内用液(長鎖脂肪酸代謝異常症)、インレビックカプセル(骨髄線維症)です。

13成分の概要は、以下のとおりです。

【一変】

  • エンハーツ点滴静注用100mg

    • 効能・効果:HER2陽性の進行・再発の固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)

    • 1回投与あたりの標準的な費用:胃癌770,608円/胃癌以外577,956円

    • 対象の診断群分類:脳腫瘍、頭頸部悪性腫瘍、消化器の悪性腫瘍など(令和6年度37分類、令和8年度36分類)

  • ニュベクオ錠300mg

    • 効能・効果:アンドロゲン受容体陽性の根治切除不能な進行・再発の唾液腺癌

    • 1回投与あたりの標準的な費用:4,107.8円(別途併用薬)

    • 対象の診断群分類:03001x 頭頸部悪性腫瘍

  • ターゼナカプセル0.1mg/0.25mg

    • 効能・効果:遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺癌

    • 1回投与あたりの標準的な費用:19,152.0円(別途併用薬)

    • 対象の診断群分類:110080 前立腺の悪性腫瘍

  • ルンスミオ皮下注5mg/45mg

    • 効能・効果:再発又は難治性の大細胞型B細胞リンパ腫、再発又は難治性の濾胞性リンパ腫

    • 1回投与あたりの標準的な費用:初回266,843円/2回目以降2,327,787円(別途併用薬)

    • 対象の診断群分類:130030 非ホジキンリンパ腫

  • ポライビー点滴静注用30mg/140mg

    • 効能・効果:大細胞型B細胞リンパ腫、再発又は難治性の濾胞性リンパ腫

    • 1回投与あたりの標準的な費用:762,003円(別途併用薬)

    • 対象の診断群分類:130030 非ホジキンリンパ腫

  • アイリーア8mg硝子体内注射液/注射用キット

    • 効能・効果:網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫

    • 1回投与あたりの標準的な費用:146,272円

    • 対象の診断群分類:020210 網膜血管閉塞症

  • デュピクセント皮下注300mgシリンジ/ペン

    • 効能・効果:中等症から重症の水疱性類天疱瘡

    • 1回投与あたりの標準的な費用:初回106,986円/2回目以降53,493円

    • 対象の診断群分類:080110 水疱症

  • フィブリノゲンHT静注用1g「JB」

    • 効能・効果:心臓血管外科手術における出血に伴う後天性低フィブリノゲン血症に対するフィブリノゲンの補充

    • 1回投与あたりの標準的な費用:282,231円

    • 対象の診断群分類:全診断群分類

【新薬】

  • ソホノスカプセル(5規格)

    • 効能・効果:進行性骨化性線維異形成症

    • 1回投与あたりの標準的な費用:190,381.3円

    • 対象の診断群分類:070090 筋炎(感染性を含む。)

  • ドジョルビ内用液100%

    • 効能・効果:長鎖脂肪酸代謝異常症

    • 1回投与あたりの標準的な費用:734,770.0円

    • 対象の診断群分類:100335 代謝障害(その他)

  • インレビックカプセル100mg

    • 効能・効果:骨髄線維症

    • 1回投与あたりの標準的な費用:44,549.6円

    • 対象の診断群分類:130050 骨髄増殖性腫瘍

  • アクーゴ脳内移植用注

    • 効能・効果:外傷性脳損傷に伴う慢性期の運動麻痺の改善

    • 1回投与あたりの標準的な費用:72,716,528円

    • 対象の診断群分類:010310 脳の障害(その他)、160100 頭蓋・頭蓋内損傷

  • アムシェプリ

    • 効能・効果:既存の薬物療法で十分な効果が得られないパーキンソン病患者の運動症状の改善

    • 1回投与あたりの標準的な費用:55,306,737円(別途併用薬)

    • 対象の診断群分類:010160 パーキンソン病

判定結果の数値を見ると、標準的費用と84パーセンタイル値の差は医薬品によって大きく異なります。 アイリーア8mgの場合、令和8年度の020210xx99x1xxでは、標準的費用146,272円に対し、84パーセンタイル値は131,900円です。エンハーツの場合、令和8年度の060020xx97x6xx(胃の悪性腫瘍)では、標準的費用1,541,216円(2回分)に対し、84パーセンタイル値は1,048,659円です。アクーゴの場合、令和8年度の160100xx97x00xでは、標準的費用72,716,528円に対し、84パーセンタイル値は14,139円にとどまります。

フィブリノゲンHT静注用は、全診断群分類を対象とした例外的な判定です。 この効能・効果では、対象となる診断群分類を特定できません。そのため、全包括診断群分類の包括範囲薬剤費を用いて判定がおこなわれました。

判定結果は、令和6年度と令和8年度の両方の診断群分類番号で示されています。 対象となる14桁コードや告示番号は、年度によって異なる場合があります。例えばエンハーツでは、令和6年度の一覧に含まれる040040(肺の悪性腫瘍)が、令和8年度の一覧には含まれていません。医療機関は、薬剤名だけでなく、適用年度の14桁コードまで確認する必要があります。

インレビックは類似薬モメロチニブの分岐に反映する案

今回の議題では、出来高算定の判定とは別に、新薬1成分を診断群分類の分岐に反映する案も示されました。対象は、130050 骨髄増殖性腫瘍に使うインレビックカプセル100mgです。

分岐への反映は、診断群分類の定義を定める「定義告示」に新薬を追加する手続きです。 定義告示は、傷病名、手術、処置等により診断群分類を定めています。類似薬効比較方式で薬価算定された新薬は、比較薬が定義テーブルの分岐に定義されていれば、同じ分岐に追加されます。類似薬効比較方式とは、効能・効果などが類似する既存薬の価格を基準に、新薬の薬価を決める方式です。

インレビックは、類似薬モメロチニブ塩酸塩と同じ分岐に反映する案が示されました。 インレビックの薬価は、類似薬効比較方式(Ⅰ)により算定されました。その類似薬がモメロチニブ塩酸塩です。モメロチニブ塩酸塩は、130050 骨髄増殖性腫瘍の定義テーブルで分岐として定義されています。そのため案では、インレビックも、令和6年度と令和8年度の両方で、この分岐に反映されます。

インレビックは、出来高算定の対象一覧にも掲載されています。 例えば令和6年度の130050xx99x4xxでは、標準的費用801,893円(18回分)が、84パーセンタイル値317,509円を上回りました。医療機関は、分岐への反映と出来高算定の両方の内容を確認しておく必要があります。

まとめ:13成分の出来高算定案と1成分の分岐反映案を確認しよう

第650回中医協総会では、DPCにおける高額な新規の医薬品等について、13成分を出来高算定の対象とし、1成分を診断群分類の分岐に反映する案が示されました。判定の基準は、仮想投与回数をもとに求めた1入院あたりの標準的費用が、84パーセンタイル値を超えるかどうかです。出来高算定の対象案は、エンハーツなどの一変8成分と、アクーゴ・アムシェプリなどの新薬5成分です。インレビックカプセルは、類似薬モメロチニブ塩酸塩と同じ130050 骨髄増殖性腫瘍の分岐に反映する案が示されました。対象患者の算定にあたっては、薬剤名だけでなく、適用年度の14桁コードまで確認してください。

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