全日本病院協会の神野正博会長による動画シリーズ「医療のトリセツ」第9回では、2040年に向けた医療の課題として「病院に通えない高齢者」を取り上げています。今後急増する85歳以上人口への対応が、医療・介護の最重要課題であることを、人口データに基づいて解説しています。
動画が示す要点は3つです。第一に、2030年以降、85歳以上人口は毎年5%以上のペースで急増します。第二に、85歳以上の約6割は要介護状態にあり、自力で病院に通えないため、救急搬送と在宅医療の需要がこの年齢層に集中します。第三に、人口動態の変化は全国一律ではなく、大都市・地方都市・過疎地の3類型ごとに異なる最適解が求められます。
注目すべきは「85歳以上人口」の急増
2040年に向けた人口構造の変化で最も注目すべきは、85歳以上人口の急激な増加です。神野会長は、従来の棒グラフではなく「毎年の増加率」を折れ線グラフで示すことで、この変化の大きさを浮き彫りにしています。
若年層の人口は毎年一貫して減少を続けます。一方、65歳以上人口の増加率はすでに緩やかであり、神野会長は「年金問題はこれから大きな話題にはなってこない」と指摘しています。
65歳以上全体に対して、85歳以上人口の増加率は際立っています。特に2030年頃には毎年5%以上の増加が見込まれます。この増加率は、医療・介護の需要構造を根本から変える規模です。
この85歳以上人口の急増が、今後の医療・介護の需要構造を根本から変えることになります。
85歳以上の6割が「自力で病院に通えない」
85歳以上人口の急増が深刻な問題となる最大の理由は、要介護認定率の高さにあります。75歳以上の約3割、85歳以上の約6割が要介護状態です。要介護状態とは、自力で病院に通うことができない状態を意味します。
この「病院に通えない高齢者」の増加は、救急搬送の需要に直結します。自分で車を運転できない要介護高齢者が急変した場合、頼れるのは救急車です。神野会長が示すデータによれば、2040年に向けて増加する救急搬送の大部分は85歳以上が占めます。
救急搬送と同様に、在宅医療の需要も85歳以上に集中します。在宅医療需要の増加分は、ほとんどが85歳以上の人口増によるものです。神野会長はこの点を踏まえ、「患者を待たせる広い外来」という従来型の病院のあり方を問い直す必要があると訴えています。
大都市・地方都市・過疎地で異なる課題
85歳以上人口の急増という課題は、全国一律ではありません。神野会長は、地域を大都市・地方都市・過疎地の3類型に分けて、それぞれ異なる人口動態を示しています。
大都市型では、若年層は減少するものの、高齢者は相当数増加します。医療・介護の需要が大幅に拡大するため、提供体制の量的な確保が急務となります。
地方都市(県庁所在地級)では、若年層の減少がより顕著になる一方、高齢者数はほぼ横ばいとなります。
過疎地型では、若年層が大幅に減少し、高齢者も減少に転じます。医療提供体制の維持そのものが課題となる地域です。
このように、地域の類型によって課題の性質が根本的に異なります。神野会長が強調するように、画一的な解決策ではなく、地域ごとの最適解を見つけることが求められています。
まとめ:「病院に通えない高齢者」への対応が問われている
2040年に向けた医療の最重要課題は、急増する85歳以上の「病院に通えない高齢者」への対応です。85歳以上の約6割が要介護状態にあり、救急搬送と在宅医療の需要はこの年齢層に集中します。さらに、大都市・地方都市・過疎地で人口動態が大きく異なるため、地域ごとの最適解を模索する必要があります。外来中心の病院のあり方を根本から見直す時期に来ていると言えるでしょう。動画では、こうした課題をデータに基づいて解説しています。2040年に向けた医療・介護のあり方を考えるきっかけとして、ぜひご覧ください。










