株式会社SkillCanvasは、スキル要件定義に平均2週間、最長1ヶ月以上かかっていた課題を、miiboのAPI活用により即時生成へと劇的に改善しました。AIエンジニアが不在という制約の中、プロダクトマネージャー一人でわずか数週間での実装を実現した事例は、スタートアップの新しいAI開発手法を示しています。
本事例では、miiboをBaaS(Backend as a Service)として活用することで、エンジニアリソースを本来の開発に集中させながら、実験的なAI機能を低リスクで本番サービスに組み込むことに成功しました。API仕様書だけで開発を開始し、バックエンドインフラの構築を一切必要とせず、プロンプト設計とフロントエンド開発のみで実装を完了させました。商談現場でのリアルタイムデモが可能になったことで、成約率の向上という具体的な成果も得られています。
スキルベース採用の課題とAIエンジニア不在での挑戦
SkillCanvasが提供するスキルベース採用支援プラットフォームは、候補者のスキルを可視化し、募集ポジションとの相性を定量的に測定します。しかし、導入時のボトルネックとなっていたのが、スキル要件定義に必要な時間でした。
R&D担当の加藤慶之氏によると、平均2週間、最長で1ヶ月以上という要件定義の時間が、顧客の導入意欲を削いでいました。商談の場で「スキル要件を作るのが大変そう」という印象を持たれ、サービスに興味を持っても導入に踏み切れないケースが多発していたのです。生成AIの活用を検討したものの、社内にAI専門のエンジニアが不在という課題に直面しました。
自社でAIインフラを構築した場合、メンテナンスができないリスクが懸念されました。優秀なソフトウェアエンジニアは在籍していましたが、AI専門知識を持つメンバーがいない状況で、実験的なAI機能を本番サービスに安全に組み込む方法を模索していました。そんな時、同じインキュベーションオフィス・コミュニティSPROUNDでの交流会で、miiboとの出会いが訪れたのです。
API仕様書だけで実現した爆速開発の実際
「スキル要件AI」(スキル要件Buddy)の実装において、驚くべきは開発プロセスのシンプルさでした。求人票などの情報から適切なスキル要件のドラフトを自動生成するこの機能は、API仕様書を受け取っただけで開発が進められました。
バックエンドインフラの構築を一切考える必要がなく、開発したのはプロンプト設計、返却データのパース処理、表示部分というシンプルな構成のみでした。miiboのCEO功刀雅士氏も「API仕様をお渡ししただけで、気がついたらフロントエンドが完成していた」と、その開発スピードに驚きを隠せません。最も重要な成果は、プロダクトマネージャーである加藤氏が、エンジニアリソースを使わずに実装を完了させたことです。
通常であれば開発ロードマップに大きな影響を与えるAI機能の追加が、既存の開発計画を妨げることなく実現しました。バックエンドインフラをmiiboに任せることで、プロトタイプから本番環境への移行もスムーズに行われました。技術的な工夫として、構造化データが必要な場面ではCSV形式での出力という実践的な解決策も採用されています。
商談現場での威力と今後の展望
実装されたスキル要件AIは、商談の現場で大きな威力を発揮しています。顧客の求人票からリアルタイムでスキル要件が生成される体験は、サービスの価値を直感的に伝える効果がありました。
以前は2週間から1ヶ月以上かかっていた要件定義が、その場で叩き台が生成されることで、「始めてみましょう」という前向きな流れを作り出せるようになりました。スキルに詳しくない担当者でも利用できるようになり、ユーザー層の拡大にも貢献しています。この変化により、商談の成約率が向上するという具体的な成果も得られました。
今後の展望として、SkillCanvasはユニークなデータの蓄積に注力していく方針です。AIアプリケーションの差別化要因として、独自データの重要性を認識し、そのデータを価値あるインサイトやナレッジに変換していく仕組みの構築を目指しています。スタートアップ同士の協業がもたらす可能性として、両社の思想的な近さも成功要因となりました。
エンジニアへのメッセージ:API一つで始められる新しい開発スタイル
SkillCanvasの事例は、限られたリソースで最大限の価値を生み出すための新しい選択肢を示しています。AIインフラの構築や運用を考えると躊躇してしまう企業でも、miiboのAPIを活用すれば即日開発を開始できます。
エンジニアリソースを本来の開発に集中させながら、AI機能を実装できるBaaS活用は、特にスタートアップにとって有効な手段です。プロダクトマネージャーが一人で実装できたという事実は、開発の民主化を象徴しています。同じコミュニティにいることで気軽に相談できる関係性も、成功の重要な要因となりました。
miiboのAPI活用により、SkillCanvasは「ヘルシーな開発のフォーメーション」を実現しました。AI機能の追加が開発計画を圧迫することなく、迅速かつ低リスクで実装できる新しい開発手法として、多くのスタートアップや企業の参考になる事例といえるでしょう。
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