AIエージェント構築セミナー第22弾のYouTube動画が公開されました。本セミナーでは、株式会社miiboの功刀氏と株式会社こころみの森山氏が、複数のAIエージェントを協働させて社内問い合わせに対応する革新的な仕組みを実演しています。従来の単一エージェントでは困難だった部門横断的な問い合わせ対応を、miibo Agent Hubを活用することで効率的に実現する方法を詳しく解説しています。
セミナーの核心は、人事・経理・法務・情報システムなど各部門を代表するAIエージェントを作成し、それらをチームとして機能させることにあります。育休復帰の手続きから退職時の対応まで、従業員からの複雑な問い合わせに対して、関連する全部門から必要な情報を一度に提供できるシステムの実装方法と、その導入による業務効率化の可能性を具体的なデモを通じて示しています。
miiboプラットフォームの基本機能とAgent Hubの革新性
miiboは3万人以上のユーザーが利用するノーコード会話型AI開発プラットフォームです。プログラミング不要で会話型AIを構築し、PDCAサイクルを回して実用的なシステムに育てることができます。Backend as a Service(BaaS)として位置づけられるmiiboは、LLMのプロンプトカスタマイズ、ナレッジ管理、UI連携(Slack、Teams、LINE)、ログ分析機能など、AI運用に必要な要素技術を包括的に提供しています。
miibo Agent Hubは2024年4月14日にαローンチされた機能で、複数のAIエージェントを集約してコラボレーションさせる仕組みです。オーケストレーションAIが裏で各エージェントをコントロールし、タスクを自動的に振り分けて実行させます。単体のエージェントでも、オーケストレーションAIが自律的にクエリを投げて複雑なタスクを遂行させることが可能です。
作成したグループはテンプレート化でき、API経由での呼び出しにも対応しています。SlackボットやZapierとの連携により、特定のイベント発生時に自動実行させることも可能で、業務プロセスの自動化を柔軟に実現できます。
マルチエージェント導入の必要性と設計思想
複雑な業務や複数の情報源を扱う場合、単一のエージェントでは限界があります。一体のエージェントに全ての機能を持たせようとすると、プロンプトが複雑化し、参照するナレッジも膨大になるため、応答の正確性が低下する傾向があります。森山氏の説明によれば、部門ごとに専門特化したエージェントを作成し、それぞれの立場から回答させる方が、回答の質が向上します。
マルチエージェント構築の考え方は、まず必要となる情報ソースを特定し、どのような判断軸で考えるべきかを検討することから始まります。社内問い合わせの例では、人事規定、経理規定、法務規定などを一体のエージェントに入れると情報量が肥大化するため、部門ごとに別々のエージェントを作成する方が効果的です。
各エージェントには「あなたは社内従業員からの問い合わせに対応する〇〇エージェントです」という明確な役割を与え、それぞれの専門分野に特化させます。これにより、メンテナンスが容易になり、各部門が独立して知識をアップデートできる体制を構築できます。
実装デモで見る部門横断的な問い合わせ対応
セミナーでは4つの具体的なケースで実装デモが行われました。育休復帰のケースでは、経理部から給与調整や保育費補助(上限3万円)の手続き、人事部から復職届や時短勤務申請、法務部から労働条件変更確認、情報システム部から社内PCの再有効化やアカウント再設定など、各部門から必要な手続きが網羅的に提示されました。
展示会出展のケースでは、営業部からの問い合わせに対して、人事部が出張申請と勤務体系調整、情報システム部が備品リストと端末持ち出し申請、経理部が経費精算手続き、法務部が顧客情報管理や社外非公開資料の持ち出し承認について、それぞれの観点から必要事項を回答しました。
副業に関する問い合わせでは、法務部が利益相反の観点から注意事項を説明し、人事部が副業申請書の提出と承認プロセス、経理部が税務処理と確定申告の必要性、情報システム部が業務PCの使用制限について、各部門の規定に基づいた回答を提供しました。
導入時間と精度向上のためのアプローチ
Q&Aセッションでは、実装に関する具体的な質問が寄せられました。社内向けAIの導入時間について、森山氏は既存のマニュアルや規定がテキストやPDF形式で準備されていれば、プロトタイプ作成は約1ヶ月、実用レベル(80-90点)までは約3ヶ月程度と回答しています。100%の精度を求めるよりも、不確実な場合は人間にエスカレーションする仕組みを組み込み、まずは80点のシステムから社内展開することを推奨しています。
AIの判断ミスを防ぐ方法として、プロンプトで「参照したナレッジに記載のないことは回答しない」よう制御する、回答をチェックする別のAIを設けてダブルチェック機能を実装する、正確なナレッジが見つからない場合は人間にエスカレーションする仕組みを導入するなどの工夫が紹介されました。
マルチエージェントの利点として、第三者のチェック機能を組み込みやすい、角度を変えて複数回検索させることができる、同じ質問に対して複数のエージェントで確認できるなど、単体のエージェントでは実現困難な精度向上施策が可能になることが強調されました。
今後の展望とマルチエージェント活用の可能性
将来的には、AIが判断して自動的に申請まで行う仕組みの実現も視野に入っています。Function CallingやSlack連携、Zapier連携などの技術を活用することで、情報収集から申請処理まで一貫した自動化が可能です。功刀氏は、経営リスクの洗い出しやプロダクト改善提案、イベント企画などを毎朝自動レポーティングする「AIドリブン経営」の実例も紹介しており、マルチエージェントの応用範囲の広さを示しています。
セミナーの結論として、マルチエージェント構築には情報ソースの特定、判断軸の検討、必要なエージェントの作成とチーム組成、そして継続的なPDCAサイクルによる精度向上が重要であることが示されました。単体のエージェントでは対応困難な複雑な業務も、専門特化した複数のエージェントを組み合わせることで、効率的かつ正確に処理できる可能性が実証されています。
まとめ
本セミナーで紹介されたmiiboのマルチエージェント機能は、社内問い合わせ対応の新たな可能性を示しています。人事・経理・法務・情報システムなど、各部門の専門知識を持つAIエージェントをチームとして機能させることで、従業員の複雑な問い合わせに対して包括的かつ正確な回答を提供できます。ノーコードで構築可能なmiiboプラットフォームとAgent Hubの組み合わせにより、プロトタイプから実用レベルまで短期間で実装でき、継続的な改善によって精度を高められる点が大きな魅力です。複数部門にまたがる業務の効率化を検討している企業にとって、本セミナーの内容は実践的な導入指針となるでしょう。
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