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【2025年最新】介護保険部会が示す3つの重点施策|身寄りのない高齢者支援・介護予防・過疎地域対策
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【2025年最新】介護保険部会が示す3つの重点施策|身寄りのない高齢者支援・介護予防・過疎地域対策

令和7年11月の福祉部会で報告された介護保険部会の検討内容を詳しく解説

令和7年11月17日に開催された第31回社会保障審議会福祉部会において、介護保険部会における議論の状況が報告されました。この報告は、第126回(令和7年10月9日)、第127回、第128回(令和7年11月10日)の介護保険部会での議論をまとめたものです。2050年頃には全世帯の5世帯に1世帯が高齢者単身世帯になると想定される中、身寄りのない高齢者等への対応が喫緊の課題となっています。

介護保険部会では主に2つの論点が議論されています。第一に、身寄りのない高齢者等への支援に向けた地域ケア会議の活用推進と相談体制の充実です。第二に、介護予防の推進として通いの場の機能強化と多機能拠点の整備が検討されています。なお、過疎地域等における包括的な支援体制については、福祉部会での議論が介護保険部会に報告され、委員からの意見が出されています。

身寄りのない高齢者等への支援体制の整備

身寄りのない高齢者等への支援は、介護保険部会における最重要課題のひとつです。高齢者単身世帯の増加に伴い、生活支援、財産管理、身元保証、死後事務といった課題への対応が急務となっています。現状では、これらの課題に対してケアマネジャーが法定外業務(シャドウワーク)として対応せざるを得ないケースが増加しており、ケアマネジャーの専門性発揮を阻害する要因となっています。

この課題への対応として、地域ケア会議の活用推進が検討されています。ただし、現状では地域ケア個別会議と地域ケア推進会議を連携できていない、または地域ケア個別会議での議論がそもそも十分ではないと回答した市町村が合わせて半数程度あります。地域包括支援センターが主導して地域ケア会議を開催し、身寄りのない高齢者等の生活課題を地域全体で協議する体制の構築が目指されています。

先進的な取組事例として、3つの自治体が紹介されています。兵庫県朝来市では、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所が中核となって地域ケア会議の中にワーキングを設置し、主任ケアマネジャー、司法書士、医師、薬剤師、医療ソーシャルワーカー等の多分野の関係者による議論を経て「身寄りのない人を支える資源マップ」を作成しています。島根県出雲市では、市が住民主体の互助団体の連絡会と地域ケア会議を連動させる体系を整備し、生活支援コーディネーターを中心とした個別課題解決の場づくりを推進しています。愛知県岡崎市では、金融機関をコアメンバーとする「岡崎市SDGs公民連携プラットフォーム」を活用し、「終活応援事業」を創設しています。

相談体制の充実に向けては、地域包括支援センターの総合相談支援事業において身寄りのない高齢者等への相談対応を明確化することが検討されています。介護保険部会の委員からは、地域包括支援センターの業務量過多や人材不足への対応として、国による財政支援と人材確保の強化を求める意見が出されました。

介護予防の推進と多機能拠点の整備

介護予防の推進は、高齢者の健康寿命延伸と地域の支え合い強化の両面から重要な施策です。「通いの場」は、住民主体の介護予防の取組を推進する場として、高齢者の社会参加を促すとともに、地域共生社会の実現に貢献してきました。2040年を見据えると、高齢化や人口減少のスピードは地域によって大きな差が生じることが想定されており、より効果的な介護予防の仕組みが必要とされています。

この課題に対応するため、「介護予防・地域ささえあいサポート拠点」の整備に向けたモデル事業が実施されています。令和6年度補正予算(令和7年度繰越実施)で措置されたこのモデル事業では、介護予防を主軸としながら、障害、子育て、生活困窮分野の支援機能も併せ持つ多機能拠点の整備が検証されています。この拠点は、住民主体の通いの場の機能に加え、地域ささえあいネットワークとの連携により、地域の多様なニーズに対応することが期待されています。

介護保険部会では、こうした多機能拠点の整備・運営を総合事業に位置づけることが検討されています。委員からは、老人保健施設を介護予防の活動拠点として活用する提案や、専門職の関与を確保するための具体的方策を求める意見が出されました。財源については、介護保険で対応する部分は介護予防に限定すべきとの意見や、地域支援事業の上限額廃止と必要な予算確保を求める意見が出されています。

過疎地域等における包括的な支援体制

過疎地域等における包括的な支援体制の整備については、福祉部会で詳細な検討が行われており、その議論の状況が介護保険部会にも報告されています。これらの地域では、担い手不足により地域の支え合い機能が脆弱化する一方、福祉ニーズの多様化・複雑化が進んでいます。現行の重層的支援体制整備事業は、各分野の配置基準を満たした上で追加的に事業を実施する必要があり、小規模自治体では実施率が低い状況にあります。

令和7年6月13日閣議決定の「地方創生の基本構想」では、中山間・人口減少地域において介護・障害・こども・生活困窮分野の相談支援・地域づくり事業を一本化し、機能強化を図る制度改正の実施が盛り込まれました。福祉部会における議論では、相談支援と地域づくりを分野別の縦割りではなく機能別に構造化し、包括的な実施を可能とする仕組みの検討が進められています。

介護保険部会の委員からは、この方向性について合理的であるとの評価がある一方、相談支援に当たる専門職が多領域にわたる相談支援に対応できるよう人材育成が大きな課題との指摘がありました。また、各市町村の実情を踏まえた体制構築の必要性も指摘されています。

まとめ

介護保険部会では、2040年を見据えた介護保険制度の見直しに向けた議論が進められています。身寄りのない高齢者等への支援については、地域ケア会議の活用推進と相談体制の充実により、地域全体で課題に対応する体制の構築が目指されています。介護予防の推進については、通いの場の機能強化と多機能拠点の整備がモデル事業として検証されています。過疎地域等における包括的な支援体制については、福祉部会での議論を踏まえ、相談支援・地域づくり事業の機能別構造化による対応が検討されています。今後も介護保険部会および福祉部会における議論の動向に注目が必要です。

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