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【令和8年度改定】医療従事者の人材確保・働き方改革|5つの施策を総まとめ
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【令和8年度改定】医療従事者の人材確保・働き方改革|5つの施策を総まとめ

処遇改善、ICT活用、多職種協働、医師の働き方改革、基準柔軟化の5本柱で医療現場の課題に対応

令和8年度診療報酬改定では、医療現場の深刻な人手不足と働き方改革への対応として、賃上げや業務効率化・負担軽減等の業務改善による医療従事者の人材確保に向けた取り組みが大幅に強化されます。全産業で賃上げ率が高水準となる中、医療分野では事業収益の悪化を背景に賃上げ水準が乖離しており、人材確保が困難な状況にあります。本記事では、個別改定項目「Ⅰ-2 賃上げや業務効率化・負担軽減等の業務改善による医療従事者の人材確保に向けた取組」に含まれる5つの施策の全体像を解説します。

今回の改定では、5つの施策で人材確保と働き方改革が推進されます。第1に、ベースアップ評価料の大幅拡充と夜勤負担軽減の計画要件明確化により、医療従事者の処遇が改善されます。第2に、ICT・AI・IoT等の利活用により、看護配置から事務簡素化まで4分野の業務効率化が図られます。第3に、急性期病棟における多職種協働を評価する「看護・多職種協働加算」が新設されます。第4に、外科医の処遇改善や休日等加算1の要件緩和など、医師の働き方改革と診療科偏在対策が講じられます。第5に、看護配置の猶予や専従要件の緩和など、施設基準における人員配置の要件が幅広く柔軟化されます。

Ⅰ-2-1 医療従事者の処遇改善

令和8年度改定における医療従事者の処遇改善は、賃上げに向けた評価の見直しと、夜勤を含む負担軽減計画の明確化の2本柱で構成されています。令和8年度および令和9年度にそれぞれ3.2%(看護補助者・事務職員は5.7%)のベースアップ実現を目指し、賃上げの実効性を高める仕組みが導入されます。

賃上げに向けた評価の見直しでは、ベースアップ評価料が3つの柱で拡充されます。対象職員が「当該保険医療機関に勤務する職員」全体に拡大され、40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師等も新たに対象に加わります。点数は、外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)の初診時が6点から17点に引き上げられるなど、大幅に増額されます。継続的な賃上げを実施していない医療機関に対しては、入院基本料等の減算規定も新設されます。

夜勤負担の軽減については、急性期総合体制加算や看護職員夜間配置加算等の施設基準において、夜勤に関する事項を「負担の軽減及び処遇の改善に資する計画」に含めることが要件として明確化されます。

詳しくは「【令和8年度改定】医療従事者の処遇改善|賃上げ評価の拡充と夜勤負担軽減の2本柱」をご覧ください。

Ⅰ-2-2 業務の効率化に資するICT、AI、IoT等の利活用の推進

ICT・AI・IoT等の利活用による業務効率化は、4つの分野で改定が行われます。看護現場の人手不足や医師の事務負担、煩雑な届出業務など、医療機関が長年抱えてきた課題に対応するものです。

第1に、ICT機器の活用により看護配置基準が1割以内で柔軟化されます。見守り・記録・情報共有の3領域すべてにICT機器を導入した病棟が対象であり、看護職員の配置数が基準の9割以上であれば入院基本料等の所定点数を算定できます。第2に、生成AIの導入により医師事務作業補助者の配置人数が最大1.3人換算で算入可能となります。第3に、各種様式の統一や届出のオンライン化など5つの分野で事務の簡素化が進みます。第4に、様式9の勤務時間算入要件が2つ追加され、小数点処理も統一されます。

詳しくは「【令和8年度改定】ICT・AI・IoT活用で変わる4つの業務効率化|看護配置から事務簡素化まで」をご覧ください。

Ⅰ-2-3 タスク・シェアリング/タスク・シフティング、チーム医療の推進

急性期病棟における多職種協働の取り組みを評価する「看護・多職種協働加算」が新設されます。生産年齢人口の減少により医療従事者の確保が難しくなる中、看護職員と他の医療職種が協働する新たな病棟運営モデルを提示するものです。

対象は、急性期一般入院料4と急性期病院B一般入院料のうち、急性期一般入院料1と同等の重症度を満たす病棟です。点数は加算1が277点(1日につき)、加算2が255点(1日につき)です。配置要件として、看護職員と他の医療職種(PT・OT・ST・管理栄養士・臨床検査技師)を合わせて25対1以上の配置が求められます。看護職員をさらに手厚く配置する方法でも、他の医療職種を組み合わせる方法でも要件を満たせます。施設基準では、重症度・医療・看護必要度の基準、平均在院日数16日以内、自宅等退院割合80%以上などの要件が定められています。

詳しくは「【令和8年度改定】看護・多職種協働加算を新設|急性期病棟の多職種連携が点数化」をご覧ください。

Ⅰ-2-4 医師の働き方改革の推進/診療科偏在対策

医師の働き方改革と診療科偏在対策は、外科医を中心とした処遇改善・勤務環境改善と、チーム制の施設基準緩和の2つの施策で構成されます。外科医師の減少が全国的な課題となる中、診療報酬上の新たな評価の導入と既存の施設基準の見直しが行われます。

処遇改善・勤務環境改善の施策は3つの柱で構成されます。地域医療体制確保加算が2段階化(加算1:620点、加算2:720点)され、医師確保が必要な診療科への特別な配慮を行う医療機関が高く評価されます。外科医療確保特別加算が新設され、高度手術を実施する基幹的な医療機関が手術の所定点数の15%を加算できます。特定地域医療提供医師等の時間外・休日労働時間の上限基準が、令和8年度は1,635時間以下、令和9年度は1,560時間以下へと段階的に引き下げられます。

チーム制の施設基準緩和では、処置・手術の休日等加算1について、緊急呼出し当番の人数要件の緩和、勤務間インターバルの選択肢追加、手当支給要件の整理が行われます。

詳しくは「【令和8年度改定】医師の働き方改革と診療科偏在対策|外科医処遇改善と休日等加算1の要件緩和」をご覧ください。

Ⅰ-2-5 診療報酬上求める基準の柔軟化

施設基準における人員配置の要件が、5つの項目で幅広く柔軟化されます。質の高い医療提供体制の維持と人材確保の両立を図ることを目的とした改定です。

第一に、看護職員の一時的な不足時に、最長3か月間、届出区分の変更が不要となる猶予ルールが新設されます。第二に、感染対策向上加算等の専従要件が3つの柱で見直されます。具体的には、専従者が介護保険施設等へ赴いて助言できる時間の上限が月10時間から月16時間に拡大されること、感染制御チーム等の専従者と医療安全管理者が所定労働時間に満たない場合に月16時間まで他業務に従事できるようになること、入院栄養管理体制加算の専従管理栄養士が退院患者への外来栄養食事指導等を行えるようになることの3点です。第三に、常勤職員の所定労働時間要件が週32時間から週31時間に引き下げられます。第四に、摂食嚥下機能回復体制加算の言語聴覚士の配置要件が「専従」から「専任」に緩和されるなど、嚥下機能に関する要件が見直されます。第五に、療法士の専従要件が5つの観点から大幅に緩和され、業務範囲と兼任ルールが見直されます。

詳しくは「【令和8年度改定】診療報酬上求める基準の柔軟化|5つの見直し項目を総まとめ」をご覧ください。

まとめ

令和8年度改定における「賃上げや業務効率化・負担軽減等の業務改善による医療従事者の人材確保に向けた取組」は、5つの施策で構成されています。医療従事者の処遇改善では、ベースアップ評価料の拡充と夜勤負担軽減計画の明確化により、賃上げの実効性が強化されます。ICT・AI・IoT等の利活用では、看護配置基準の柔軟化から事務の簡素化まで4分野の業務効率化が推進されます。タスク・シェアリング/タスク・シフティングでは、看護・多職種協働加算の新設により急性期病棟の多職種連携が評価されます。医師の働き方改革では、外科医を中心とした処遇改善とチーム制の要件緩和が導入されます。基準の柔軟化では、看護配置の猶予から療法士の専従要件緩和まで5項目の見直しが行われます。これら5つの施策はいずれも、医療の質を担保しつつ、限られた人材をより柔軟に活用できる仕組みを整備するものです。各医療機関においては、自院に該当する項目を確認し、届出準備と運用体制の見直しを計画的に進めることが重要です。

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