フィブリノゲン製剤は、出血を止める血液凝固に欠かせないたんぱく質「フィブリノゲン」を補い、大量出血時の止血を助ける重要な製剤です。この製剤を適正に使うには、投与の前に患者のフィブリノゲン値を迅速に測定する必要があります。しかし従来は、その迅速な測定を評価する仕組みがありませんでした。本稿では、迅速な測定を後押しするために令和8年度診療報酬改定で新設された「迅速フィブリノゲン測定加算」を解説します。
令和8年度改定では、迅速フィブリノゲン測定加算として150点が新設されました。この加算の対象は、後天性低フィブリノゲン血症の患者です。測定の目的は、フィブリノゲン製剤を投与すべきかどうかの判断です。そして算定には、手術室等の場所で迅速に測定することが求められます。
なぜ迅速フィブリノゲン測定加算が新設されたのか
迅速フィブリノゲン測定加算は、フィブリノゲン製剤の適正使用を支えるために新設されました。適正使用とは、必要な患者に、必要なタイミングで、過不足なく製剤を使うことです。この適正使用を実現するうえで鍵となるのが、フィブリノゲン値の迅速な測定です。
フィブリノゲン製剤を投与すべきかどうかは、患者のフィブリノゲン値を踏まえて判断します。一般にフィブリノゲン値が大きく下がっていれば、製剤の投与が検討されます。逆に値が十分であれば、投与は要らないと考えられます。いずれにせよフィブリノゲン値の把握が、投与判断の出発点になります。
その値を把握するための測定では、結果が出るまでに時間を要する場合があると考えられます。一般に検査は、採取した検体を検査室へ送り、そこで分析する流れになるためです。大量出血が進む手術室では、こうした待ち時間が課題になりうると考えられます。
そこで令和8年度改定では、手術室等での迅速な測定を新たに評価することになりました。手術室等でその場で測定すれば、待ち時間を抑えられると考えられます。この迅速な測定を評価することで、フィブリノゲン製剤の適正使用を後押しするのが、今回の加算のねらいです。
迅速フィブリノゲン測定加算の概要
迅速フィブリノゲン測定加算は、既存の出血・凝固検査に上乗せして算定します。上乗せの対象は、「フィブリノゲン半定量」と「フィブリノゲン定量」という2つの検査です。いずれもフィブリノゲンの量を調べる検査で、半定量はおおよその量を、定量は正確な量を測定します。
この2つの検査を迅速に行った場合に、所定点数へ150点を加算します。加算とは、もともとの検査の点数(所定点数)に上乗せする点数のことです。診療報酬は1点を10円として計算するため、150点は1,500円に相当します。
なお現行では、この加算は設けられていません。今回の改定で初めて新設される項目です。
算定できる3つの要件
迅速フィブリノゲン測定加算の算定には、3つの要件をすべて満たす必要があります。3つの要件とは、対象患者、測定目的、実施場所です。以下、順に説明します。
第1の要件は、対象患者です。対象は、後天性低フィブリノゲン血症の患者に限られます。後天性低フィブリノゲン血症とは、大量出血などによって後天的にフィブリノゲンが不足した状態を指します。
第2の要件は、測定目的です。測定は、フィブリノゲン製剤の適応の可否を判断する目的で行う必要があります。適応の可否とは、その患者に製剤を投与してよいかどうかの判断です。
第3の要件は、実施場所です。測定は、手術室等の場所で実施しなければなりません。手術室等でその場で測定することが、「迅速」な測定の条件となります。
まとめ
令和8年度診療報酬改定では、迅速フィブリノゲン測定加算150点が新設されました。この加算は、フィブリノゲン製剤の適正使用を支えることをねらいとしています。算定するには、後天性低フィブリノゲン血症の患者に対し、製剤の適応の可否を判断する目的で、手術室等の場所で測定する、という3つの要件を満たす必要があります。










