抗悪性腫瘍剤には、静脈内に点滴する製剤のほかに、皮下注射で投与する製剤があります。現行の外来腫瘍化学療法診療料は、皮下注射による投与を評価の対象としていませんでした。そこで令和8年度診療報酬改定では、皮下注射を新たに評価対象に加える見直しが行われます。本記事は、この外来腫瘍化学療法診療料の見直しを解説します。
今回の見直しは、投与方法に応じた評価と安全対策の強化という2つの柱で構成されます。第1に、皮下注射により外来化学療法を実施した場合の評価を新設しました。第2に、外来腫瘍化学療法診療料1について、患者の急変時等に対応する指針の整備を要件としました。あわせて、連携充実加算などの加算の対象範囲を、皮下注射を実施した場合にも拡大しました。
見直しの背景:外来での安心・安全な化学療法の推進
今回の見直しは、外来における安心・安全な化学療法を推進する観点から行われました。悪性腫瘍の患者に対する化学療法は、入院ではなく外来で実施される機会が増えています。外来での化学療法は、患者が日常生活を送りながら治療を続けられる利点があります。一方で外来では、副作用への対応や急変時の備えを、医療機関があらかじめ整えておく必要があります。
この背景のもとで、投与方法の多様化への対応が課題となりました。抗悪性腫瘍剤には、静脈内に点滴する製剤のほかに、皮下注射で投与する製剤があります。しかし現行の点数は、投与方法を区別せず、初回からの回数だけで評価していました。そこで今回の改定では、皮下注射を評価対象に加え、投与方法の違いを点数に反映させる見直しが行われました。
見直し①:皮下注射による外来化学療法の評価新設
第1の柱は、皮下注射による外来化学療法の評価を新設した点です。この新設は、投与方法に応じた点数区分の細分化として行われました。現行の点数は「初回から3回目まで」と「4回目以降」という回数だけで区分していました。改定案では、この各区分をさらに「静注製剤等の場合」と「その他の場合(皮下注射)」に細分化しました。
具体的な点数は、外来腫瘍化学療法診療料1で次のように変わります。現行では、初回から3回目までが800点、4回目以降が450点でした。改定案では、静注製剤等の場合は初回から3回目までが801点、4回目以降が451点となります。皮下注射を含むその他の場合は、初回から3回目までが351点、4回目以降が201点として新たに設けられます。
この細分化により、皮下注射の場合には静注製剤等とは別の点数が設定されました。皮下注射(その他の場合)の点数は、いずれの区分でも静注製剤等より低い水準です。なお診療料2と診療料3でも、同じ考え方で「静注製剤等の場合」と「その他の場合」への細分化が行われています。
見直し②:急変時対応指針の整備を要件化
第2の柱は、外来腫瘍化学療法診療料1について、急変時対応指針の整備を要件とした点です。この指針は、患者の急変時の緊急事態等に対応するためのものです。現行の施設基準では、この指針を整備することが「望ましい」という努力目標にとどまっていました。改定案では、この指針を整備していることが必須の要件となりました。
要件化の狙いは、外来での安全な化学療法の実施を確実にすることです。外来化学療法では、投与中や投与後に患者の状態が急変する可能性があります。急変時に医療機関が迅速に対応するには、あらかじめ指針を整えておく必要があります。努力目標から要件への格上げによって、診療料1を算定する医療機関には、安全対策の整備がより明確に求められることになりました。
見直し③:関連加算の対象を皮下注射にも拡大
皮下注射の評価新設に伴い、関連する加算の対象範囲も拡大されました。対象となるのは、連携充実加算とがん薬物療法体制充実加算の2つです。連携充実加算は月1回150点、がん薬物療法体制充実加算は月1回100点を、それぞれ所定点数に加算する仕組みです。
これらの加算は、現行では診療料1のイの(1)を算定した患者が対象でした。現行のイの(1)は、投与方法を区別しない「初回から3回目まで」の区分です。改定案では、皮下注射による投与を評価するイの(2)を新たに設けたことに伴い、加算の対象を「イの(1)又は(2)」に広げました。この見直しにより、皮下注射で化学療法を受ける患者に対しても、薬剤師による副作用の指導や処方提案などの体制が評価されることになりました。
まとめ:投与方法に応じた評価と安全対策を強化
令和8年度改定における外来腫瘍化学療法診療料の見直しは、外来での安心・安全な化学療法を推進するために行われました。見直しの柱は2つあります。第1に、皮下注射により外来化学療法を実施した場合の評価を新設し、投与方法に応じて点数を細分化しました。第2に、外来腫瘍化学療法診療料1について、急変時対応指針の整備を努力目標から要件に格上げしました。あわせて、連携充実加算などの加算の対象を、皮下注射を実施した場合にも拡大しました。これらの見直しにより、投与方法の多様化への対応と安全対策の強化が、診療報酬のうえで進められることになりました。










