周産期医療では、母体・胎児集中治療室(MFICU)が、リスクの高い妊産婦と胎児を集中的に管理する。このMFICUを評価する診療報酬が、母体・胎児集中治療室管理料である。しかし現行の管理料は、医師配置の要件が地域の実情に合わず、周産期医療の体制構築を十分に評価できていない。そこで本記事は、令和8年度診療報酬改定における母体・胎児集中治療室管理料の見直しを解説する。
今回の見直しは、母体・胎児集中治療室管理料の要件を3つの点で変更する。第一に、医師配置に係る要件を緩和する。第二に、母体搬送の受入件数や帝王切開の実施件数などの実績を、新たな要件とする。第三に、算定対象となる「母体・胎児集中治療室管理を要する状態」に「産科異常出血」を追加する。
1. 医師配置要件の緩和
第一の見直しは、母体・胎児集中治療室の医師配置に係る要件を緩和する。この緩和の背景には、オンコールでの対応により速やかに診察を開始できる現状がある。
現行の医師配置要件は、2つの選択肢のいずれかを満たすことを求めている。1つ目の選択肢は、専任の医師が常時、治療室内に勤務することである。2つ目の選択肢は、産婦人科または産科の医師が常時2名以上、院内に勤務することである。今回の緩和は、この2つ目の選択肢を対象とする。具体的には、届出病床数が6床以下の医療機関に限り、2名以上の配置を1名以上に緩める。ただし1名以上への緩和には、条件がある。その条件は、別の産婦人科・産科医が緊急呼出し当番により、30分以内に当該治療室での診療を開始できる体制の確保である。
2. 実績要件の導入
第二の見直しは、母体搬送の受入や帝王切開などの実績を、新たな算定要件とする。この実績要件は、地域周産期医療関連施設からの母体救急搬送の受入や、緊急帝王切開術への対応の重要性を踏まえたものである。
実績要件では、次の4つのうち3つ以上を満たすことを求める。
① 救急用の自動車または救急医療用ヘリコプターによる妊産婦の搬送受入件数が、年間10件以上であること
② 多胎妊娠の分娩件数が、年間10件以上であること
③ 帝王切開術による分娩件数が、年間50件以上であること
④ 分娩時の妊娠週数が22週以上34週未満である分娩件数が、年間10件以上であること
3. 算定対象への産科異常出血の追加
第三の見直しは、算定対象となる状態に「産科異常出血」を追加する。産科異常出血は、分娩前のリスク因子にかかわらず生じうる。このため産科異常出血は、その状態に応じて、産後からの母体・胎児集中治療室での管理が必要となる。
産科異常出血の追加とあわせて、算定対象の範囲も広がる。現行の算定対象は、リスクの高い妊娠と認められる妊産婦であった。改定後は、この妊産婦に加えて、分娩時または分娩後に重篤な合併症を来した者も、算定対象に含める。
4. 経過措置
実績要件の導入には、既存の届出施設に配慮した経過措置を設ける。令和8年3月31日の時点で総合周産期特定集中治療室管理料を届け出ている治療室は、令和9年5月31日までの間に限り、実績要件を満たしているものとみなす。
まとめ
令和8年度改定は、母体・胎児集中治療室管理料の要件を3つの点で見直す。第一に、6床以下の施設で医師配置要件を緩和する。第二に、母体搬送や帝王切開などの実績を要件とする。第三に、算定対象に産科異常出血を追加する。これらの見直しは、地域の周産期医療の体制構築を適切に評価することを目指す。










