質の高いゲノム医療の推進が、令和8年度診療報酬改定における重要な論点となっています。現行の遺伝カウンセリング加算は、検査実施時に月1回1,000点を所定点数に加算する仕組みであり、検査前の説明やライフステージの変化に応じた継続的な指導を評価できませんでした。本記事では、令和8年度改定で新設される「遺伝性疾患療養指導管理料」の内容と算定要件を解説します。
令和8年度改定は、遺伝性疾患の療養指導を「加算」から「医学管理料」へと評価体系を再編します。新設の「遺伝性疾患療養指導管理料」は、検査前の説明(300点)と検査後の療養指導(初回700点、2回目200点)の3段階で評価されます。これに伴い、従来の遺伝カウンセリング加算と遺伝性腫瘍カウンセリング加算は廃止されます。さらに、遠隔連携による療養指導や、がんゲノムプロファイリング検査時の算定方法も新管理料の枠組みで整理されます。
改定の背景:質の高いゲノム医療の推進が課題
ゲノム医療の質向上には、検査前後を通じた継続的な遺伝情報の伝達が不可欠です。遺伝学的検査の結果は患者本人だけでなく血縁者にも影響を及ぼします。そのため、検査前の十分な説明と、検査後のライフステージに応じた継続的な指導が求められます。しかし、現行の評価体系は、検査実施時の遺伝カウンセリング加算に限定されていました。
現行の遺伝カウンセリング加算は、療養指導を1回しか評価できない点が課題でした。具体的には、難病に関する検査や遺伝性腫瘍に関する検査の実施時に、月1回1,000点を所定点数に加算する仕組みです。また、がんゲノムプロファイリング検査については、別途「遺伝性腫瘍カウンセリング加算」として月1回1,000点が設定されていました。これらの加算は、検査前の意思決定支援や、検査後のライフステージ変化に応じた指導には対応していませんでした。
そこで令和8年度改定では、療養指導の評価体系を抜本的に見直すこととしました。具体的には、評価の枠組みを「加算」から「医学管理料」へと変更し、検査前後のライフステージ変化に応じて算定できる仕組みを新設します。この見直しにより、検査前の意思決定支援から検査後の継続的な療養指導までを、一貫して評価できる体系が構築されます。
新設「遺伝性疾患療養指導管理料」の3段階評価
遺伝性疾患療養指導管理料は、検査前後の各段階に応じて3区分で評価されます。3区分は、検査前の説明、検査後の初回指導、検査後の2回目指導に対応します。それぞれの区分は、患者1人につき1回に限り算定できます。
検査前の説明には、「1 医師が遺伝子検査の必要性等について文書により説明を行った場合」として300点が設定されます。この区分は、検査または病理診断を実施する前に算定する仕組みです。算定対象となるのは、遺伝学的検査(D006-4)、角膜ジストロフィー遺伝子検査(D006-20)、染色体構造変異解析(D006-26)、遺伝性網膜ジストロフィ遺伝子検査(D006-30)、遺伝性腫瘍に関する検査などです。
検査後の初回指導には、「2 イ 初回」として700点が設定されます。この区分は、検査または病理診断の結果に基づき療養上必要な指導を行った場合に算定します。検査結果が判明した後の最初の指導を評価する仕組みです。
検査後の2回目指導には、「2 ロ 2回目」として200点が設定されます。この区分は、過去に検査を実施した患者に対し、改めて療養上必要な指導を行った場合に算定します。具体的には、ライフステージの変化に応じた継続的な指導を想定した区分です。
旧加算の廃止と算定上の留意点
新管理料の創設に伴い、従来の遺伝カウンセリング加算と遺伝性腫瘍カウンセリング加算は廃止されます。両加算は、月1回1,000点として検体検査判断料やミスマッチ修復タンパク免疫染色に加算する仕組みでした。両加算は、検査時の1回のみの評価という限界を抱えていました。新管理料はこの限界を解消し、検査前後の継続的な評価を可能にします。
遠隔連携での療養指導も、新管理料の枠組みで評価されます。「遠隔連携遺伝性疾患療養指導管理」として、情報通信機器を用いて他の保険医療機関と連携して行う療養指導が算定対象となります。ただし、遠隔連携の対象は難病に関する検査に係るものに限られ、別途定める施設基準を満たす保険医療機関でのみ算定できます。
がんゲノムプロファイリング検査については、新管理料の中で取扱いが整理されます。具体的には、D006-19に掲げるがんゲノムプロファイリング検査について、検査前の説明(300点)、検査後の初回指導(700点)、検査後の2回目指導(200点)をそれぞれ患者1人につき1回算定できます。また、がん患者指導管理料のニを算定する場合、新管理料の「1」(検査前の説明)は併算定できません。
施設基準は、医師の配置と体制整備の2点が求められます。具体的には、遺伝性疾患の診療につき十分な経験を有する常勤医師の配置と、療養指導を行うにつき十分な体制の整備が必要です。遠隔連携での算定には、これらに加えて情報通信機器を用いた診療体制の整備も求められます。
まとめ:継続的な遺伝医療を支える評価体系へ
令和8年度改定は、遺伝性疾患の療養指導を「医学管理料」として段階的に評価する仕組みへと再編します。新設の「遺伝性疾患療養指導管理料」は、検査前の説明(300点)、検査後の初回指導(700点)、検査後の2回目指導(200点)の3段階で構成されます。これに伴い、従来の遺伝カウンセリング加算と遺伝性腫瘍カウンセリング加算は廃止されます。検査前の意思決定支援からライフステージに応じた継続的な指導までを一貫して評価することで、質の高いゲノム医療の推進が期待されます。










