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【令和8年度改定】重症度、医療・看護必要度の3つの見直しポイント|救急搬送加算・A/C項目追加・B項目測定
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【令和8年度改定】重症度、医療・看護必要度の3つの見直しポイント|救急搬送加算・A/C項目追加・B項目測定

救急患者応需係数の新設、A/C項目の拡充、B項目測定の柔軟化で急性期病棟の評価が大きく変わる

令和8年度診療報酬改定では、急性期入院医療における重症度、医療・看護必要度の評価方法が大きく見直されます。今回の見直しは、救急搬送症例や手術なし症例における評価の適正化を進める観点から行われるものです。この記事では、個別改定項目「Ⅱ-1-1 ② 重症度、医療・看護必要度の見直し」の内容を解説します。

見直しのポイントは3つあります。第1に、A項目「抗悪性腫瘍剤の使用」やC項目「救命等に係る内科的治療」「別に定める検査」「別に定める手術」の対象治療等が追加されます。第2に、病床あたり救急搬送受入件数に応じた「救急患者応需係数」が基準該当割合に加算される仕組みが新設されます。第3に、B項目の測定日が柔軟化され、毎日測定しない場合の運用ルールが明確になります。これらの見直しに伴い、従来の「基準該当割合」は「割合指数」に変更され、各入院料の基準値も改められます。経過措置は令和8年9月30日までです。

A項目・C項目の対象治療等の追加

第1の見直しは、A項目・C項目の対象治療等の追加です。内科系症例の適正評価を進めるため、4つの分野で対象が拡充されます。

A項目「専門的な治療・処置」のうち「抗悪性腫瘍剤の使用(注射剤のみ)」では、カルフィルゾミブ、シクロホスファミド水和物、フィルグラスチム(遺伝子組換え)などの注射薬剤が対象に追加されます。これらの薬剤は、内保連(内科系学会社会保険連合)が提案した候補のうち、入院での使用割合が高く、モラルハザードが起きにくいものとして選定されました。

C項目では、3つの区分で対象治療等が追加されます。「救命等に係る内科的治療」には、中心静脈注射用カテーテル挿入、脳脊髄腔注射(腰椎)、吸着式血液浄化法、持続緩徐式血液濾過などの処置が加わります。「別に定める検査」には、経食道心エコー法、経気管肺生検法、EBUS-TBNAなどが加わります。「別に定める手術」には、内シャント設置術、経皮的胆管ドレナージ術、内視鏡的胃・十二指腸ステント留置術などが加わります。

これらのA項目・C項目の追加は、次に述べる救急患者応需係数と組み合わせることで、手術なし症例の多い病棟における必要度該当割合を大きく改善する効果があります。この効果については、救急患者応需係数のセクションであわせて解説します。

救急患者応需係数の新設

第2の見直しは、救急患者応需係数の新設です。基準該当割合に救急搬送受入件数に応じた加算を行う仕組みが導入されます。この仕組みにより、従来の「基準該当割合」は「基準患者割合に係る指数(割合指数)」に変更されます。割合指数は「従来の該当患者割合+救急患者応需係数」で算出されるため、救急搬送受入件数の多い病棟ほど割合指数が高くなります。

救急患者応需係数の算出方法は、3つのステップで構成されます。まず、「救急搬送受入件数」とは、救急用の自動車または救急医療用ヘリコプターにより搬送された患者を受け入れた件数をいいます。次に、「病床当たり年間救急搬送受入件数」を算出します。この計算では、医療機関全体の直近1年間の救急搬送受入件数(全救急搬送受入件数)に、救急搬送により当該医療機関に入院した患者のうち対象病棟に入院した患者の割合を乗じ、届出病床数で除します。つまり、全救急搬送受入件数をそのまま使うのではなく、対象病棟への入院割合で按分する点に注意が必要です。最後に、この病床当たり年間救急搬送受入件数に0.005を乗じた数が救急患者応需係数となり、上限は1割(10%)です。

具体的な計算例を示します。ある医療機関の全救急搬送受入件数が年間2,000件で、そのうち急性期一般入院料の届出病棟(100床)に入院した患者の割合が50%であった場合、病床当たり年間救急搬送受入件数は「2,000件×50%÷100床=10件/床/年」となります。この10件に係数0.005を乗じると5%が得られ、この5%が基準該当割合に加算されます。たとえば、元の該当患者割合が22%であった場合、割合指数は27%(=22%+5%)となります。

A/C項目の追加と救急患者応需係数を組み合わせた場合の効果は、シミュレーション(DPCデータ2025年1~3月)で示されています。急性期一般入院料1の基準①該当割合は、平均28.3%から35.4%へ約7.1ポイント上昇します。とくに注目すべきは、救急搬送数が多く手術なし症例の多い病棟です。これらの病棟では約9.2ポイントの上昇となり、全体平均と同程度の水準に改善されます。従来の評価方法では、手術なし症例の多い病棟は手術あり症例の多い病棟と比べて該当患者割合が低くなる傾向がありましたが、今回の見直しにより、この格差が大きく是正されることになります。

B項目の測定日の柔軟化

第3の見直しは、B項目の測定日の柔軟化です。従来の毎日測定に加え、毎日測定しない場合のルールが新たに設けられます。

毎日測定しない場合の測定日は、入院初日から入院4日目までの各日、入院5日目以降は直近の測定日から少なくとも7日ごとに1回以上、そして退院日の3つの時点です。ただし、患者の状態に明らかな変化が生じた場合には、7日を待たずに測定を実施することが望ましいとされています。

測定日以外の日におけるB項目の評価は、直近の測定日における評価をもって代替できます。この取扱いにより、毎日のB項目測定に要する看護師の事務負担が軽減されます。

基準値の変更

A/C項目の追加と救急患者応需係数の導入に伴い、各入院料の基準値は変更されます。基準値の数字は引き上げられていますが、新たに導入される救急患者応需係数が割合指数に加算されるため、実質的な影響は病院ごとの救急搬送受入件数によって異なります。ここでは、主な入院料の新基準値を「割合指数」として整理します。

急性期一般入院料1(必要度Ⅱ)は、基準①が27%、基準②が34%です(現行は基準①20%、基準②27%)。急性期一般入院料2(必要度Ⅱ)は27%です(現行21%)。急性期一般入院料3(必要度Ⅱ)は23%です(現行18%)。急性期一般入院料4(必要度Ⅱ)は19%です(現行15%)。急性期一般入院料5(必要度Ⅱ)は14%です(現行11%)。

なお、必要度Ⅰを用いる場合は、必要度Ⅱよりも1ポイント高い基準が設定されます。たとえば、急性期一般入院料1(必要度Ⅰ)の基準①は28%、基準②は35%です。

7対1入院基本料(特定機能病院・一般病棟)については、必要度Ⅱで基準①が割合指数20%から27%に、基準②が27%から34%に変更されます。7対1入院基本料(専門病院)も同様に、必要度Ⅱで基準①が20%から21%に、基準②が27%から28%に変更されます。

急性期総合体制加算についても基準値が設定されています。急性期総合体制加算1(必要度Ⅱ)は基準①32%・基準②39%、加算2は基準①31%・基準②38%、加算3は基準①29%・基準②36%、加算4は基準①28%・基準②35%、加算5は基準①27%・基準②34%です。

経過措置

今回の見直しに伴い、経過措置が設けられます。令和8年3月31日時点で対象となる入院料を届け出ている病棟は、令和8年9月30日までの間、新基準を満たしているものとみなされます。

経過措置の対象は、急性期一般入院料1~5、結核病棟7対1入院基本料、特定機能病院入院基本料(一般病棟7対1)、専門病院入院基本料(7対1)、地域包括医療病棟、地域包括ケア病棟入院料など、17区分にわたります。

この経過措置の期間は6か月間であるため、各医療機関は令和8年4月の施行後、令和8年9月末までに新基準への対応を完了する必要があります。

まとめ

令和8年度改定における重症度、医療・看護必要度の見直しは、A/C項目の対象治療等の追加、救急患者応需係数の新設、B項目測定の柔軟化の3点が柱です。従来の「基準該当割合」は「割合指数」に変更され、救急搬送受入件数の多い病棟では割合指数が押し上げられます。各入院料の基準値は数字上は引き上げられますが、救急患者応需係数の加算により、とくに救急搬送数が多く手術なし症例の多い内科系病棟では、実質的な該当割合が大きく改善されます。経過措置は令和8年9月30日までです。各医療機関は、自院の救急搬送受入件数と対象病棟への入院割合を確認し、新たな割合指数がどの水準になるかを早期にシミュレーションすることが重要です。

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