令和8年度診療報酬改定では、常勤職員の常勤要件に係る所定労働時間数が見直されます。これまで「週32時間以上」とされていた常勤の所定労働時間要件が「週31時間以上」に引き下げられます。この見直しは、一般職の国家公務員の1日当たり勤務時間(7時間45分)を踏まえたものです。
今回の見直しでは、主に3つのポイントがあります。第一に、対象となる施設基準は、急性期一般入院料1等の常勤医師、有床診療所の医師配置加算、医師事務作業補助体制加算の3項目です。第二に、常勤換算の計算に用いる分母(所定労働時間の下限)は、従来どおり週32時間のまま据え置かれます。第三に、育児・介護休業法に基づく短時間勤務者の常勤要件(週30時間以上)は変更ありません。
見直しの背景|公務員の勤務時間と診療報酬の常勤要件にズレがあった
今回の見直しの背景には、国家公務員の勤務時間と診療報酬上の常勤要件との間に生じていた不整合があります。
診療報酬の施設基準では、常勤職員の要件として、従来から「週4日以上の常態勤務」かつ「所定労働時間が週32時間以上」であることが求められてきました。この週32時間という基準は、1日8時間×週4日=32時間を根拠としています。
一方、一般職の国家公務員の勤務時間は、平成20年の人事院勧告を受けて、平成21年4月1日から1日当たり8時間から7時間45分へと改定されています。この改定により、週4日勤務の公務員の所定労働時間は、7時間45分×4日=31時間となりました。
この結果、公務員として週4日・31時間勤務する常勤医師が、診療報酬上の常勤要件(週32時間以上)を満たせないという問題が生じていました。とりわけ過疎地等では、退職した常勤医師を再任用職員として確保せざるを得ない状況にあり、週31時間勤務の医師が常勤として算定できないことが、地域医療の確保に支障をきたしていました。こうした状況を踏まえ、令和7年の地方分権改革に関する提案でも、常勤要件の緩和が求められていました。
改定の内容|所定労働時間の要件を週32時間から週31時間に引き下げ
今回の改定では、常勤職員の常勤要件に係る所定労働時間数の基準が、週32時間から週31時間に引き下げられます。対象となる施設基準は、以下の3項目です。
1つ目は、急性期一般入院料1等に係る常勤医師の要件です。 急性期一般入院料1及び7対1入院基本料(特定機能病院入院基本料及び障害者施設等入院基本料を除く)に係る常勤医師の定義が、「所定労働時間が週31時間以上」に変更されます。あわせて、非常勤医師の常勤換算に関する規定が追加され、常勤職員の所定労働時間(32時間未満の場合は32時間)をもって常勤1名として換算する旨が明記されます。
2つ目は、有床診療所の医師配置加算に係る常勤医師の要件です。 医師配置加算の施設基準における常勤医師の定義も、同様に「所定労働時間が週31時間以上」に変更されます。この項目でも、常勤換算に関する規定が新たに追加され、所定労働時間(32時間未満の場合は32時間)をもって常勤1名として換算するルールが明確化されます。
3つ目は、医師事務作業補助体制加算に係る常勤職員の要件です。 医師事務作業補助者の勤務時間に関する常勤職員の定義も、「所定労働時間が週31時間以上」に変更されます。この項目では、従来から常勤換算自体は認められていましたが、今回の改定で常勤換算の計算方法が新たに明記され、所定労働時間(32時間未満の場合は32時間)をもって常勤1名として換算することとされます。
実務上の注意点|常勤換算の分母は週32時間のまま変わらない
今回の見直しでは、常勤換算の計算方法に関して注意すべき点があります。
常勤換算数を算出する際の分母となる所定労働時間の下限は、従来どおり週32時間のまま据え置かれます。つまり、常勤の「定義」は週31時間以上に緩和される一方、非常勤職員を常勤換算する際の計算式では、所定労働時間が32時間未満の場合は32時間を用いて計算します。この点を混同しないよう注意が必要です。
育児・介護休業法に基づく短時間勤務者の取扱いについても確認が必要です。正職員として勤務する者が、育児・介護休業法第23条第1項、同条第3項又は同法第24条の規定による措置を受けて所定労働時間が短縮された場合は、所定労働時間が週30時間以上であれば常勤として扱われます。この週30時間の基準は、今回の改定でも変更されていません。
まとめ
令和8年度診療報酬改定では、常勤職員の常勤要件に係る所定労働時間数が週32時間から週31時間に引き下げられます。対象は、急性期一般入院料1等の常勤医師、有床診療所の医師配置加算、医師事務作業補助体制加算の3項目です。常勤換算の分母は週32時間のまま据え置かれるため、常勤の「定義の緩和」と「換算方法」を区別して運用する必要があります。










