生成AIの活用が急速に広がる中、データセキュリティと国内完結性への要求が高まっています。特に教育機関や公的機関では、機密情報の海外流出リスクを避けながら最新のAI技術を活用したいというニーズが強まっています。このような背景の中、2025年5月14日にさくらインターネットが「SAKURA Gen AI PLATFORM」を発表し、miiboがこのプラットフォーム上で利用可能になりました。
今回の連携により、miiboユーザーは国産LLM「cotomi」を含む複数の基盤モデルを選択でき、データの送信から保存まで完全に国内で完結する会話型AIを構築できるようになります。京都芸術大学での先行導入では、学習プロセスの可視化と個人の成長を促進する新しい教育アプローチが実現しています。セキュリティと利便性を両立させたこの新しいプラットフォームは、会話型AI開発の新たな選択肢として注目を集めています。
SAKURA Gen AI PLATFORMとmiiboの戦略的連携
SAKURA Gen AI PLATFORMは、さくらインターネットが提供する生成AI向けのフルマネージド実行プラットフォームです。このプラットフォームは、APIとRAG用のベクトルデータベースを提供し、LLMなどの基盤モデルと「高火力」生成AIクラウドサービスとの接続を可能にします。miiboは、このプラットフォーム上でノーコード会話型AI構築サービスとして動作し、ユーザーに高度なAI開発環境を提供します。
プラットフォームの最大の特徴は、複数の基盤モデルから選択できる柔軟性です。現在はNECが開発した国産LLM「cotomi」が利用可能で、今後は国内外の様々な企業との連携により選択肢が拡大される予定です。この多様性により、ユーザーは用途や要件に応じて最適な基盤モデルを選択できます。
サーバーレス環境での即座な利用が可能な点も重要な利点です。SAKURA Gen AI PLATFORMが実行プラットフォームの構築と管理の大部分を担うため、LLMの専門知識がなくても様々な基盤モデルをすぐに利用できます。これにより、miiboユーザーは会話型AIアプリケーションの開発に集中できる環境が整います。
基盤には「NVIDIA H100 Tensor Core GPU」を搭載した「高火力」生成AIクラウドサービスが採用されています。AI開発と機械学習に特化したこの高性能GPUにより、大規模なモデルの高速処理が可能となり、miiboで構築する会話型AIのレスポンス速度と精度が向上します。
国産基盤がもたらすセキュリティと信頼性の向上
完全国内完結のデータ処理は、SAKURA Gen AI PLATFORMの最も重要な特徴の一つです。基盤モデルの利用時、データの送信と保存がすべて国内で完結するため、機密情報の海外流出リスクが完全に排除されます。この特性は、特に公的機関や教育機関、医療機関など、高度なセキュリティ要件を持つ組織にとって決定的な利点となります。
国産LLM「cotomi」の採用により、日本語処理の精度と文化的文脈の理解が大幅に向上しています。NECが独自開発したこのモデルは、日本特有の表現や慣用句、敬語などの複雑な言語体系を適切に処理できます。miiboと組み合わせることで、より自然で文脈に適した日本語での会話型AIが実現可能になります。
データガバナンスの観点からも、国内完結型のシステムは大きな価値を持ちます。日本の法規制に完全準拠したデータ管理が可能となり、個人情報保護法やその他の規制要件への対応が容易になります。また、データの所在が明確であることは、監査やコンプライアンス対応においても重要な利点となります。
さくらインターネットの国内データセンターによる安定したインフラ基盤も信頼性を支えています。国内に複数のデータセンターを持つさくらインターネットは、災害対策やBCP(事業継続計画)の観点でも優れた環境を提供し、miiboユーザーに安心して利用できるプラットフォームを提供します。
京都芸術大学での先行導入と今後の展開
京都芸術大学での先行導入事例は、SAKURA Gen AI PLATFORMとmiiboの実用性を実証しています。同大学では、生成AIを活用した教育と創造的表現の可能性を積極的に探求しており、今回のプラットフォームを通じて新しい教育アプローチを実現しています。具体的には、個人の記録や思考から始まる学習プロセスの可視化により、より豊かな学習成果の創出を目指しています。
導入における特筆すべき点は、生成AIを単なる情報提供の一方的なサポートとしてではなく、各個人の好奇心と成長を育む基盤として活用していることです。miiboのノーコード開発機能により、技術的な専門知識を持たない教育者でも、教育目的に特化した会話型AIを構築できます。この民主化されたAI開発環境は、教育現場でのAI活用を大きく前進させています。
今後の展開として、さくらインターネットは様々な企業との連携を通じて、プラットフォーム上で利用可能な基盤モデルとアプリケーションの範囲を拡大する計画です。miiboも、この拡張されたエコシステムの中で、より多様なユースケースに対応できる会話型AIプラットフォームへと進化していきます。国内外の企業との協業により、セキュリティと利便性を両立させた選択肢が増えることが期待されます。
株式会社miiboの功刀雅士CEOは、「様々なLLMを適切な場所とタイミングで安全に利用し、特定のユースケースに合わせたAIアプリケーションを開発するニーズが急速に高まっている」と述べています。SAKURA Gen AI PLATFORMの技術資産を活用することで、miiboは国産モデルの利用と安全なRAGの重要性が高まる中、生成AIの社会実装をさらに推進していく方針です。
会話型AI開発の新たな選択肢として
SAKURA Gen AI PLATFORMとmiiboの連携は、日本における会話型AI開発に新たな選択肢をもたらしました。完全国内完結のデータ処理、国産LLMの活用、ノーコードでの開発環境という3つの要素が組み合わさることで、セキュリティと利便性を両立させた理想的なプラットフォームが実現しています。京都芸術大学での成功事例は、このアプローチが教育分野をはじめとする様々な領域で有効であることを示しており、今後さらに多くの組織での採用が期待されます。
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