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令和8年度改定:非がん患者の緩和ケアはどう変わるか|対象疾患の追加と包括範囲の見直し
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令和8年度改定:非がん患者の緩和ケアはどう変わるか|対象疾患の追加と包括範囲の見直し

緩和ケア診療加算・緩和ケア病棟入院料の対象拡大と、神経ブロックの出来高算定を整理します

緩和ケアの診療報酬は、これまで悪性腫瘍、後天性免疫不全症候群及び末期心不全の患者を主な対象として評価されてきました。しかし、末期の呼吸器疾患や腎不全の患者も、呼吸困難、倦怠感、痛みといった身体的苦痛をがん患者と同程度の頻度で抱えており、現行の評価体系ではその苦痛に対する専門的な緩和ケアを十分に評価できていませんでした。令和8年度診療報酬改定は、この対象疾患のずれを是正するため、非がん患者に対する緩和ケアの評価を見直します。本稿では、その見直しの内容を3点に整理して解説します。

見直しの柱は、対象疾患の拡大と包括範囲の見直しの2つです。第1に、緩和ケア診療加算、外来緩和ケア管理料及び在宅麻薬等注射指導管理料等の対象に、末期呼吸器疾患患者と末期腎不全患者が加わります。第2に、緩和ケア病棟入院料の対象患者に、終末期の末期腎不全患者が加わります。第3に、緩和ケア病棟入院料の包括範囲から神経ブロックが除外され、出来高で算定できるようになります。

1. 緩和ケア診療加算等の対象に、末期呼吸器疾患と末期腎不全が加わる

緩和ケア診療加算等の対象疾患には、末期呼吸器疾患と末期腎不全が追加されます。追加の対象となるのは、緩和ケア診療加算(A226-2)、外来緩和ケア管理料、在宅麻薬等注射指導管理料(C108)、注入ポンプ加算(C161)及び携帯型ディスポーザブル注入ポンプ加算(C166)です。ただし、現行の対象疾患は項目ごとに異なります。したがって、追加される疾患も項目ごとに2通りに分かれます。

第1の系統は、緩和ケア診療加算と外来緩和ケア管理料です。この2項目の現行の対象は、悪性腫瘍、後天性免疫不全症候群及び末期心不全の患者です。呼吸器疾患と腎不全は、いずれも対象に入っていません。そのため、この2項目には末期呼吸器疾患と末期腎不全の2疾患が追加されます。

第2の系統は、在宅麻薬等注射指導管理料、注入ポンプ加算及び携帯型ディスポーザブル注入ポンプ加算です。この3項目の現行の対象には、末期の心不全と呼吸器疾患の患者が既に含まれています。含まれていないのは、腎不全だけです。そのため、この3項目に追加されるのは末期の腎不全のみです。この追加を受けて、在宅麻薬等注射指導管理料の「3」は、名称が「心不全、呼吸器疾患又は腎不全の場合」(1,500点)に改められます。

この2通りの追加のうち、範囲が大きく広がるのは第1の系統です。緩和ケア診療加算の改定案は、算定対象を「一般病床に入院する悪性腫瘍、後天性免疫不全症候群、末期心不全、末期呼吸器疾患又は末期腎不全の患者」と規定します。これらの患者のうち、疼痛、倦怠感、呼吸困難等の身体的症状又は不安、抑うつなどの精神症状を持つ者が、患者の同意に基づく緩和ケアチームの診療を受けた場合に算定できます。外来緩和ケア管理料についても、同様の取扱いとなります。

対象拡大にあたり、末期呼吸器疾患の患者には3つの要件がすべて示されます。第1に、呼吸器疾患に対して適切な治療が実施されていることです。第2に、在宅酸素療法又はNPPV(非侵襲的陽圧換気)を継続的に実施していることです。第3に、過去半年以内に10%以上の体重減少を認めることです。これら3要件のいずれにも該当する患者が、末期呼吸器疾患の患者に当たります。

一方、末期腎不全の患者には、2通りの該当パターンが示されます。共通する前提は、腎不全に対して適切な治療が実施されていること、及び器質的な腎障害により慢性的に日本腎臓学会慢性腎臓病重症度分類Stage G5以上に該当し腎代替療法を必要とする状態であることの2点です。この2点に加え、血液透析療法又は腹膜透析療法を実施しており、かつPalliative Performance Scale(PPS)が40%以下である患者が、第1のパターンに該当します。もう一方は、腎代替療法を必要とする状態であるものの、透析療法の開始又は継続が困難な患者です。

これらの対象拡大に伴い、施設基準も同様に見直されます。緩和ケア診療加算の施設基準では、緩和ケアに関する研修を受けた医師の配置要件について、対象疾患の記載に末期呼吸器疾患と末期腎不全が加わります。注2に規定する施設基準についても、同じ記載の見直しが行われます。

2. 緩和ケア病棟入院料の対象患者に、終末期の末期腎不全患者が加わる

緩和ケア病棟入院料の対象患者には、終末期の末期腎不全患者が追加されます。透析の差し控えや中断を選択した末期腎不全患者は、末期のがん患者と同様に急速に身体機能が悪化し、密度の高い緩和ケアを要します。この臨床経過を踏まえ、緩和ケア病棟の対象患者が見直されました。

対象患者の追加は、算定要件の注1に反映されます。現行の注1は、悪性腫瘍の患者及び後天性免疫不全症候群の患者以外が入院した場合、特別入院基本料の例により算定すると規定していました。改定案では、この例外規定の対象から終末期の末期腎不全の患者が外れます。つまり、終末期の末期腎不全患者は、緩和ケア病棟入院料そのものを算定できるようになります。

算定要件の見直しに合わせて、施設基準も改められます。緩和ケア病棟入院料1の施設基準では、入院させる患者の範囲に「終末期の末期腎不全に罹患している患者」が加わります。緩和ケアに関する研修を受けた医師の配置要件についても、対象疾患に終末期の末期腎不全の患者が加わります。

3. 緩和ケア病棟入院料の包括範囲から神経ブロックが除外される

緩和ケア病棟入院料の包括範囲からは、神経ブロックが除外されます。神経ブロックは、緩和的放射線治療と同じくがん疼痛に対して有効な場合があります。しかし現行では、放射線照射が包括範囲外で出来高算定できる一方、神経ブロックは包括範囲内に置かれていました。この取扱いの差がある中で、緩和ケア病棟入院患者への神経ブロックの実施割合は、放射線治療と比較して低い状況にあります。

包括範囲からの除外は、算定要件の注3に反映されます。改定案では、包括範囲から除く費用として、第11部第2節神経ブロック料が新たに列挙されます。あわせて、神経ブロックに係る第3節薬剤料及び第4節特定保険医療材料料も除外されます。したがって、緩和ケア病棟入院患者に神経ブロックを実施した場合、手技料と関連する薬剤料・材料料を出来高で算定できます。

なお、緩和ケア病棟入院料は、点数自体も引き上げられます。緩和ケア病棟入院料1は、30日以内の期間が5,135点から5,277点に、31日以上60日以内の期間が4,582点から4,724点に、61日以上の期間が3,373点から3,515点になります。緩和ケア病棟入院料2は、30日以内の期間が4,897点から5,025点に、31日以上60日以内の期間が4,427点から4,555点に、61日以上の期間が3,321点から3,449点になります。この引き上げの理由は、個別改定項目の文書には示されていません。

まとめ:対象疾患の拡大と包括範囲の見直しが2本柱

令和8年度改定は、非がん患者に対する緩和ケアの評価を2つの方向で見直します。対象疾患の面では、緩和ケア診療加算、外来緩和ケア管理料及び在宅麻薬等注射指導管理料等に末期呼吸器疾患患者と末期腎不全患者が加わり、緩和ケア病棟入院料には終末期の末期腎不全患者が加わります。包括範囲の面では、緩和ケア病棟入院料から神経ブロックが除外され、出来高算定が可能になります。対象疾患の追加には要件が細かく定められているため、算定を検討する医療機関は、末期呼吸器疾患の3要件と末期腎不全の2パターンの要件を早期に確認してください。

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