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【令和8年度改定】物件費高騰への3つの対応|初再診料・入院料の引上げから食事療養の見直しまで
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【令和8年度改定】物件費高騰への3つの対応|初再診料・入院料の引上げから食事療養の見直しまで

物価対応料の新設、入院時食費1食40円・光熱水費1日60円の引上げ、嚥下調整食の特別食加算追加の全体像を整理

令和8年度診療報酬改定では、持続的な物価高騰により増加した医療機関等の物件費負担に対応するため、基本診療料の見直しと入院時の食費・食事療養に関する制度改正が行われました。この対応は、個別改定項目「Ⅰ-1 医療機関等が直面する人件費や、医療材料費、食材料費、光熱水費及び委託費等といった物件費の高騰を踏まえた対応」に位置づけられています。

物件費高騰への対応は、大きく3つの施策で構成されています。第1に、初再診料等・入院基本料等の引上げと「物価対応料」の新設により、物件費全般の高騰に対応しました。第2に、入院時の食費基準額を1食40円、光熱水費基準額を1日60円引き上げ、食材料費・光熱費の高騰に対応しました。第3に、嚥下調整食の特別食加算への追加や特別メニュー料金の見直しにより、入院時の食事療養の質の向上を図りました。以下、それぞれの概要を解説します。

① 物件費の高騰を踏まえた対応——初再診料等・入院基本料等の引上げと物価対応料の新設

物件費全般の高騰への対応として、緊急対応分(改定率+0.44%)による初再診料等・入院基本料等の引上げと、物価対応分(改定率+0.76%)による「物価対応料」の新設が行われました。対応は医科・歯科・調剤・訪問看護の全領域に及びます。

この対応は3つの柱で構成されています。第1の柱は、令和6年度改定以降の経営環境の悪化に対する緊急対応です。医科では再診料が75点から76点に1点引き上げられ、歯科では歯科初診料が267点から272点に5点引き上げられました。入院基本料等も医療機能に応じて増点され、急性期一般入院料1は1,688点から1,874点へ186点の増点となっています。

第2の柱は、令和8年度以降の物価上昇に段階的に対応する「物価対応料」の新設です。物価対応料は、外来・在宅では初診時2点・再診時等2点、入院では算定する入院料に応じて一般病棟で17~66点が設定されています。この物価対応料は、令和9年6月以降に全区分で点数が2倍になる段階的な仕組みが最大の特徴です。

第3の柱は、高度機能医療を担う特定機能病院や急性期病院への特例的な評価です。急性期病院一般入院基本料が新設され、特定機能病院入院基本料はA・B・Cの3区分に再編されました。

詳しくは「【令和8年度改定】物価対応料の新設と初再診料・入院料の引上げを徹底解説」をご覧ください。

② 入院時の食費及び光熱水費の基準の見直し——食費1食40円・光熱水費1日60円の引上げ

食材料費や光熱・水道費の上昇を踏まえ、入院時の食費及び光熱水費の基準額が引き上げられました。食費は令和6年6月(30円)、令和7年4月(20円)に続く3回連続の引上げであり、光熱水費は平成18年の制度創設以来初の基準額(総額)の増額です。

食費の基準額は、入院時食事療養(Ⅰ)・(Ⅱ)及び入院時生活療養(Ⅰ)・(Ⅱ)の全区分で1食当たり40円引き上げられます。入院時食事療養(Ⅰ)の通常の食事療養は690円から730円に、流動食のみの提供は625円から665円にそれぞれ変更されます。

光熱水費の基準額は、入院時生活療養(Ⅰ)・(Ⅱ)ともに1日当たり60円引き上げられ、398円から458円になります。引き上げ幅の60円は、令和6年度介護報酬改定における多床室の居住費基準費用額の引上げ幅と同額であり、介護保険との均衡を図る趣旨もあります。

引上げの背景には、食材料費の高騰が続く中で、全面委託の約7割・一部委託の約5割の医療機関が委託事業者からの値上げの申し出に対応していたという実態があります。

詳しくは「令和8年度改定|入院時の食費が1食40円・光熱水費が1日60円引き上げへ」をご覧ください。

③ 入院時の食事療養に係る見直し——嚥下調整食の新評価と特別料金の柔軟化

入院時の食事療養の質の向上を図るため、嚥下調整食を必要とする患者への対応と、入院患者の多様な食事ニーズへの対応を目的とした制度の見直しが行われました。

この見直しは3つの変更で構成されています。第一に、嚥下調整食が特別食加算の対象として新たに追加されます。これまで特別食加算の対象は腎臓食や糖尿食などの治療食に限られ、嚥下調整食は対象外でした。嚥下調整食は普通食より食材費が高く、最もコストのかかる場合で1日あたり76円の差があるとの報告があります。見た目を改善し適切な栄養量を確保した嚥下調整食は、エネルギー摂取量の増加やADLの改善にも寄与することが示されています。

第二に、特別メニューの追加料金について、1食あたり17円の標準額が削除され、医療機関が柔軟に金額を設定できるようになります。食材費・人件費の高騰が続く中、17円では追加コストを賄えない状況が解消されます。

第三に、行事食やハラール食などの宗教に配慮した食事も、特別料金の対象として明確化されます。約8割の医療機関が行事食を追加料金なしで提供していた実態を踏まえ、コストを適正に収受できる道が開かれます。

詳しくは「【令和8年度改定】入院時の食事療養が変わる|嚥下調整食の新評価と特別料金の2つの見直し」をご覧ください。

まとめ

令和8年度診療報酬改定の物件費高騰への対応は、3つの施策で構成されています。第1に、初再診料等・入院基本料等の引上げと物価対応料の新設により、物件費全般の高騰に対応しました。第2に、食費1食40円・光熱水費1日60円の基準額引上げにより、食材料費・光熱費の高騰に対応しました。第3に、嚥下調整食の特別食加算への追加と特別料金の見直しにより、食事療養の質の向上を図りました。各医療機関は、自施設に関連する改定内容を確認し、令和9年6月以降の物価対応料の倍増も見据えた対応が求められます。

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