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テロメライシン注の薬価は1瓶約310万円|食道癌の遺伝子治療が保険適用へ
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テロメライシン注の薬価は1瓶約310万円|食道癌の遺伝子治療が保険適用へ

根治切除も化学放射線療法も適応とならない食道癌に、放射線療法と併用する遺伝子治療用製品が令和8年8月13日に収載予定

令和8年8月5日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第654回)で、再生医療等製品「テロメライシン注」の保険適用が議題になりました。テロメライシン注は、根治切除も化学放射線療法も適応とならない食道癌に使う遺伝子治療用製品です。本号では、この製品の特徴と薬価が決まった仕組みを、資料「総-3」をもとに解説します。

テロメライシン注の算定薬価は、2mL1瓶あたり3,102,489円です。この薬価は、比較薬「デリタクト注」の1クール薬価をもとに算定されました。算定では、有用性加算(Ⅱ)・市場性加算(Ⅰ)・先駆加算の3つが、各10%ずつ上乗せされました。上乗せの根拠は、放射線療法との併用で一定の効果が認められたことと、希少疾病用・先駆け審査の指定です。

テロメライシン注はどんな製品か

テロメライシン注は、腫瘍の中で増えて腫瘍細胞を溶かす、遺伝子組換えウイルスの製品です。製造販売元はオンコリスバイオファーマ(株)、成分名はスラタデノツレブです。製造販売承認日は令和8年6月8日、薬価基準収載予定日は令和8年8月13日です。また、テロメライシン注は世界で最初に日本で承認されました。

作用の仕組み

テロメライシン注の正体は、遺伝子を改変したヒトアデノウイルス5型です。このウイルスは、hTERTという遺伝子のプロモーター(遺伝子のスイッチ)の制御下で増殖に必要な遺伝子が働くよう改変されています。hTERTを多く発現する腫瘍細胞にウイルスが感染すると、ウイルスが腫瘍内で増殖します。増殖したウイルスは腫瘍細胞を溶かし、抗腫瘍効果を示すことが期待されています。

対象となる患者

テロメライシン注の効能・効果は、「根治切除及び化学放射線療法の適応とならない食道癌」です。つまり、根治を目指す手術の適応がなく、抗がん剤と放射線を組み合わせる治療の適応もない患者が対象です。

使い方

テロメライシン注は、放射線療法と併用して使います。通常、成人には1回あたり1mLを、上部消化管内視鏡で見ながら腫瘍に直接注射します。投与間隔は概ね2週間で、合計3回投与します。腫瘍の大きさや数に応じて、1回あたり2mLまで増量できます。

臨床試験で示された効果

テロメライシン注の効果は、国内第Ⅱ相試験(OBP101JP試験)で検討されました。この試験は、比較対照を置かない非盲検試験で、目標症例数は37例です。対象は、根治切除も化学放射線療法も適応とならない、cStageⅡ・Ⅲの局所進行食道癌患者です。

試験の方法

試験では、テロメライシン注を内視鏡下で病変全体に行き渡るよう、5~10か所に分けて注射しました。放射線療法は、初回投与の3日後に始めました。放射線の量は1日2.0Gy(グレイ)で、週5日、約6週間続けました。

試験の結果

試験の主要評価項目は、局所完全奏効率(L-CR)です。L-CRとは、食道の病変(局所)で完全奏効が得られた患者の割合です。投与開始後24週までのL-CRは41.7%(36例中15例)でした。投与開始後18か月までの評価では、L-CRは50.0%(36例中18例)でした。

薬価はどのように決まったか

テロメライシン注の薬価は、「類似薬効比較方式(Ⅰ)」で算定されました。類似薬効比較方式とは、効き方が似た既存の製品の価格を基準に、新製品の価格を決める方法です。算定は、令和8年7月10日の薬価算定組織で検討されました。

比較薬はデリタクト注

テロメライシン注の比較薬には、第一三共(株)の「デリタクト注」(テセルパツレブ)が選ばれました。デリタクト注は、悪性神経膠腫(脳腫瘍の一種)に使う、遺伝子組換え単純ヘルペスウイルス1型の製品です。デリタクト注とテロメライシン注は、「腫瘍細胞選択的殺細胞作用/抗腫瘍作用」という薬理作用が共通しています。また、両者はどちらも注射剤です。

1クールあたりの価格をそろえる

テロメライシン注とデリタクト注は、投与回数が異なります。そのため、薬価は1クール(一連の治療)あたりの価格をそろえる方法で計算されました。

テロメライシン注

  • 投与方法:2週に1回、計3回

  • 1瓶の薬価:3,102,489円(2mL1瓶)

  • 1クールの薬価:9,307,467円(2mL1瓶×3回)

デリタクト注

  • 投与方法:4週に1回、6回まで

  • 1瓶の薬価:1,431,918円(1mL1瓶)

  • 1クールの薬価:8,591,508円(1mL1瓶×6回)

計算の出発点は、デリタクト注の1クール薬価から、市場性加算(Ⅰ)と先駆け加算に相当する額を差し引いた額です。この額とテロメライシン注の1クール薬価(2mL1瓶×3回)を合わせた結果、加算前の価格は2mL1瓶あたり2,386,530円になりました。

3つの加算で30%上乗せ

加算前の価格2,386,530円には、3つの補正加算が各10%ずつ、合計30%上乗せされました。この結果、算定薬価は2mL1瓶あたり3,102,489円になりました。

  • 有用性加算(Ⅱ)10%:既存の治療方法では効果が不十分な患者群で、放射線療法との併用により一定の効果が認められたためです。また、副次評価項目である嚥下障害(飲み込みにくさ)のスコアに改善が認められたためです。

  • 市場性加算(Ⅰ)10%:テロメライシン注が、希少疾病用再生医療等製品に指定されているためです。

  • 先駆加算 10%:テロメライシン注が、先駆け審査指定制度の対象に指定されているためです。

その他の算定上の扱い

テロメライシン注は、世界で最初に日本で承認されました。そのため、外国価格はなく、外国平均価格調整も行われません。また、テロメライシン注は「革新的新薬薬価維持制度」の対象と判断されました。主な理由は、希少疾病用再生医療等製品に指定されていることです。一方、費用対効果評価の対象には該当しませんでした。

市場規模の予測

テロメライシン注の市場規模は、ピーク時で年間22億円と予測されています。この予測は、収載を希望したオンコリスバイオファーマ(株)によるものです。ピークは10年度目で、その年度の投与患者数は241人と見込まれています。

まとめ:標準治療の適応とならない食道癌に新たな選択肢

テロメライシン注は、令和8年8月13日に薬価基準へ収載される予定です。テロメライシン注は、根治切除も化学放射線療法も適応とならない食道癌に、放射線療法と併用して使う遺伝子治療用製品です。算定薬価は2mL1瓶3,102,489円、1クール9,307,467円です。この薬価は、デリタクト注を比較薬とし、有用性・市場性・先駆の3つの加算を各10%上乗せして算定されました。加算の根拠は、放射線療法との併用で一定の効果が認められたことと、希少疾病用・先駆け審査の指定です。


参考資料:中央社会保険医療協議会 総会(第654回)「総-3 再生医療等製品の保険適用について」(令和8年8月5日)

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