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iPS細胞由来心筋シート「リハート」保険適用へ|償還価格5,320万円
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iPS細胞由来心筋シート「リハート」保険適用へ|償還価格5,320万円

第653回中医協総会で了承。条件及び期限付承認製品の価格算定と準用技術料のポイントを整理

令和8年7月22日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第653回)で、iPS細胞由来の心筋細胞シート「リハート」(クオリプス株式会社)の保険適用が了承されました。リハートは条件及び期限付承認を受けた製品であり、通常の承認品とは異なる診療報酬上のルールが適用されます。本号では、医療機関や医療事務の担当者が押さえるべき価格と算定ルールを整理します。

リハートは、令和8年9月1日に償還価格5,320万円で保険収載される予定です。第一に、価格は原価計算方式で算定され、市場性加算(Ⅰ)10%が適用されました。第二に、材料の算定は「1人につき1回」に限られ、移植手技と前処置には既存の技術料を準用します。また、移植後の免疫抑制剤の管理が特定薬剤治療管理料1の対象に加わります。第三に、本品は条件及び期限付承認製品のため、有用性系加算と費用対効果評価の判断は「改めて承認を受けた際」に持ち越されます。

リハートとはどのような製品か

リハートは、標準治療で効果不十分な虚血性心筋症による重症心不全に使う、ヒト(同種)iPS細胞由来の心筋細胞シートです。本品は全身麻酔下の左側開胸手術で心臓の表面に移植されます。

作用の仕組みは、移植した心筋細胞からの分泌物質による心筋の改善です。移植した細胞はサイトカインや成長因子などを分泌します。これらの物質が血管新生を促し、線維化を抑えることで、心機能と運動耐容能の改善・維持が期待されています。

有効性は、8例を対象とした国内臨床試験(非盲検・非対照)で「推定」されました。主要評価項目である移植後26週の左室駆出率(LVEF)は、8例中2例で5%以上改善しました。副次評価項目では、NYHA心機能分類が8例全例で1度以上改善しています。この結果から、有効性を推定できる一定の基準を満たすと判断されました。

安全性は、臨床試験で死亡率0%と報告されています(追跡は移植後3年が5例、移植後5年が3例)。iPS細胞特有の腫瘍化リスクには、未分化細胞を除去する製造工程で対応しています。他人の細胞を移植することによる免疫拒絶には、移植翌日から90日間の免疫抑制剤投与で対応します。

承認後の検証として、全例を対象とした使用成績調査が実施されます。目標症例数は75例です。この調査では、外部対照との比較により有効性を検証的に評価します。

価格:原価計算方式で5,320万円

リハートの償還価格は、原価計算方式により5,320万円と決まりました。区分はC2(新機能・新技術)で、類似する機能区分がないため原価から積み上げる方式が採られています。

補正加算は、市場性加算(Ⅰ)10%が適用されました。市場性加算(Ⅰ)は、一般に希少疾病用として指定された製品に適用される加算です。加算係数は1.0であり、これは原価の開示度が高いことを示します。

企業希望価格との差は、20万円です。企業は5,340万円を希望していましたが、了承された価格は5,320万円でした。外国平均価格との比は、資料上「-」となっています。

市場規模は、ピーク時(10年度)に使用患者96人、販売金額51.1億円と予測されています。なお、推定適用患者数(ピーク時)は初年度の690人です。この690人は対象となりうる患者数であり、実際の使用患者数(96人)とは異なります。

算定ルール:1人1回、2つの準用技術料と管理料の対象追加

リハートの算定は「1人につき1回まで」に限られ、移植手技と前処置には既存の技術料を準用します。新たに「248 ヒトiPS細胞由来心筋細胞シート」という機能区分が設けられます。

材料の算定条件は、関連学会の適正使用指針に従って使用することです。対象は、虚血性心筋症による重症心不全患者のうち、薬物治療や侵襲的治療を含む標準治療で効果不十分な症例に限られます。使用時には、診療報酬明細書の摘要欄に理由と医学的根拠を詳しく記載する必要があります。

関連する点数は、移植手技・前処置・術後管理の3つです。このうち移植手技と前処置は「準用」、術後管理は既存の管理料の「対象追加」という違いがあります。

  • 移植手技:K605-5 骨格筋由来細胞シート心表面移植術(準用)9,420点

  • 移植の前処置:K920 輸血 注12 血小板洗浄術加算(準用)580点

  • 術後の免疫抑制剤管理:B001 2 イ 特定薬剤治療管理料1(対象患者に追加)470点

移植手技は、K605-5の所定点数を準用します。企業はK539心膜切開術(9,420点)の準用を希望していましたが、案では細胞シートを心臓表面に移植する手技であるK605-5とされました。点数はどちらも9,420点です。

前処置は、K920輸血の注12「血小板洗浄術加算」の点数を準用します。K920の留意事項に、新たに(27)として追記されます。

術後管理は、特定薬剤治療管理料1の対象患者に追加されます。対象は、移植後に拒絶反応を抑えるため免疫抑制剤を投与している患者です。血中濃度を測定して投与量を精密に管理した場合、月1回に限り算定できます。

条件及び期限付承認製品としての取扱い

リハートの価格算定には、令和8年1月14日に中医協が了解した「条件及び期限付き承認を受けた再生医療等製品」のルールが適用されています。このルールは、有効性が「確認」ではなく「推定」の段階で承認されたことを前提にしています。

算定時の取扱いでは、有用性系加算の該当性を判断しません。原価計算方式の場合、営業利益率は平均的な営業利益率に0.5を乗じた値を使います。一方、有用性系以外の補正加算は算定時に判断されます。リハートに市場性加算(Ⅰ)が適用されたのは、このルールに沿った結果です。

収載後の取扱いでは、費用対効果評価の該当性判断が先送りされます。分析に必要なデータが不十分と想定されるためです。一方、市場拡大再算定は通常の承認品と同様に扱われます。

改めて承認を受けた際には、価格が再検討されます。具体的には、営業利益率の係数や補正加算の適用・控除を専門組織で検討し、中医協総会の了承を経ます。つまり、使用成績調査の結果次第で、リハートの価格は将来見直される可能性があります。

まとめ:9月1日収載に向けて押さえる3つのポイント

iPS細胞由来の心筋細胞シート「リハート」は、令和8年9月1日に償還価格5,320万円で保険収載される予定です。

  • 価格:原価計算方式で算定され、市場性加算(Ⅰ)10%が適用されました。

  • 算定ルール:材料は1人1回に限られます。移植手技(9,420点)と前処置(580点)は既存の技術料を準用し、免疫抑制剤管理は特定薬剤治療管理料1(470点)の対象に追加されます。

  • 承認後の対応:条件及び期限付承認製品のため、有用性系加算と費用対効果評価は改めて承認を受けた際に判断されます。

対象となる医療機関では、関連学会の適正使用指針の確認と、摘要欄への記載体制の準備を進めておきましょう。


参考資料:中央社会保険医療協議会 総会(第653回)資料「総-2 再生医療等製品の保険適用について」「総-2参考 条件及び期限付き承認を受けた再生医療等製品に対する対応について(概要)」(令和8年7月22日)

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