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令和8年度改定|訪問看護の適正化と記録書記載の明確化を解説
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令和8年度改定|訪問看護の適正化と記録書記載の明確化を解説

短時間訪問の規制と看護目標・計画に沿った実施の必須化を厚労省告示資料から実務目線で整理

訪問看護は、在宅医療の中核を担うサービスとして利用者数が増加している。一方で、利用者の状態に応じない画一的な訪問や、短時間訪問の濫用、記録書の記載内容のばらつきが課題となってきた。本稿では、令和8年度診療報酬改定における「適正な訪問看護の推進」の改定内容を、訪問看護ステーションの実務担当者向けに解説する。

本改定は、訪問看護の実施基準の明確化と記録書記載要件の厳格化を進める。第一に、標準時間(30分から1時間30分程度)を下回る訪問が頻繁に行われている場合は、指定訪問看護を実施したと認めない旨を明文化する。第二に、看護目標及び訪問看護計画に沿った実施を明記し、漫然かつ画一的な訪問を禁じる。第三に、利用者の状態を踏まえない一律の日数、回数、実施時間及び人数の決定を認めないことを明確化する。第四に、目標達成の評価と訪問看護記録書への記録、及び実際の訪問開始時刻と終了時刻の記載を求める。

改定の背景と基本的な考え方

本改定は、利用者の状態を適切に把握し、適正な訪問看護を提供するため、記録書の記載内容を明確化することを目的としている。背景には、訪問看護の利用拡大に伴う実施内容のばらつきと、画一的な訪問や短時間訪問の濫用への懸念がある。改定の方向性は、既存の人員・運営基準に立ち返り、その遵守を通知レベルで明文化する点にある。

訪問看護の利用拡大は、改定の出発点である。在宅医療の推進により、訪問看護ステーションの利用者は年々増加してきた。この拡大の中で、利用者の心身の状況に十分配慮しない訪問や、評価を伴わない訪問が一部で見られるようになった。こうした状況が、本改定の必要性を後押ししている。

画一的な訪問と短時間訪問の濫用は、本改定が踏み込む論点である。一律の日数や回数による訪問は、利用者ごとの状態に即した看護とは言えない。また、標準時間を下回る訪問の頻繁な実施は、診療報酬の趣旨に反する運用である。本改定は、通知において具体的な禁止事項を示すことで、こうした懸念に対応する。

標準時間を下回る訪問の規制

本改定により、標準時間を下回る訪問の頻繁な実施に対する規制が通知に明文化される。訪問看護基本療養費(Ⅰ)及び(Ⅱ)の標準時間は、1回の訪問につき30分から1時間30分程度である。標準時間を下回る訪問が頻繁に行われている場合は、指定訪問看護を実施したとは認められない。本規制は、短時間訪問の濫用を防ぐ趣旨である。

標準時間の位置づけは、改定の前提である。訪問看護基本療養費(Ⅰ)及び(Ⅱ)では、1回の訪問につき30分から1時間30分程度が標準時間とされている。この標準時間自体は、現行通知から変更されていない。改定で追加されるのは、標準時間を下回る訪問への取扱いに関する留意事項である。

頻繁な短時間訪問の規制は、新設される運用ルールである。具体的には、同一日に同一の利用者に複数回、又は複数の利用者に対し、標準時間を下回る訪問が頻繁に行われている場合が対象となる。これらのケースでは、指定訪問看護を実施したとは認められない。ただし、標準時間の訪問計画を作成し、訪問時の利用者側のやむを得ない事情により標準時間を下回った場合は、規制の対象から除外される。

訪問看護実施における基本原則の明確化

本改定により、訪問看護の実施に関する2つの基本原則が通知に明記される。1つ目は、看護目標及び訪問看護計画に沿った実施の徹底である。2つ目は、利用者の状態を踏まえない一律の決定の禁止である。両原則ともに、既存の運営基準を実務レベルで具体化したものである。

看護目標及び訪問看護計画に沿った実施は、第1の原則である。実施にあたっては、利用者の心身の状況等に応じて妥当適切に行うことが求められる。妥当適切な実施とは、漫然かつ画一的なものにならない訪問を意味する。この原則の根拠は、指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準(平成12年厚生省令第80号)第14条第1項にある。

利用者の状態を踏まえない一律の決定の禁止は、第2の原則である。一律の決定とは、利用者の心身の状況等を考慮せずに、訪問看護の日数、回数、実施時間及び人数(指定訪問看護の日数等)を定めることを指す。さらに、定期的な指定訪問看護を実施していない者が指定訪問看護の日数等を定めることも認められない。この禁止事項により、計画と実施の連動性が担保される。

記録・評価に関する具体的要件

本改定により、訪問看護の記録と評価に関する2つの要件が新設・明確化される。1つ目は、目標達成の評価と訪問看護記録書への記録である。2つ目は、実際の訪問開始時刻と終了時刻の記載である。両要件ともに、提供されたサービスの妥当性を客観的に検証する仕組みを目指す。

目標達成の評価と記録は、新設される要件である。指定訪問看護の提供にあたっては、目標達成の程度及びその効果等について評価を行わなければならない。評価に関する内容は、訪問看護記録書に記録することが求められる。評価結果に応じて、訪問看護計画書の見直しと改善も努力義務として位置づけられる。

実際の訪問開始時刻と終了時刻の記載は、明確化される要件である。従来の通知では「開始時刻及び終了時刻」とのみ記載されていた。改定後は「実際の指定訪問看護の開始時刻及び終了時刻」と明記される。この明確化により、計画上の予定時刻ではなく、実績時刻の記録が必須であることが示される。

訪問看護ステーションが取り組むべき実務対応

本改定への実務対応は、訪問計画・実施運用・記録の3点を整えることに集約される。第一に、標準時間に基づく訪問計画を作成し、計画に沿った実施を徹底する。第二に、利用者ごとの状態に応じて訪問条件を決定する運用ルールを徹底する。第三に、訪問看護記録書において評価内容と実際の訪問時刻を記載する。

訪問計画の整備は、第1の対応事項である。計画には、標準時間(30分から1時間30分程度)に基づく訪問時間を設定する必要がある。計画には、利用者の心身の状況に基づく看護目標も具体的に記載する。これにより、短時間訪問の濫用を防ぎ、後続の評価と計画見直しが実効性を持つ。

実施運用の整備は、第2の対応事項である。訪問の日数、回数、実施時間及び人数は、利用者の状態を踏まえて個別に決定しなければならない。定期的な指定訪問看護を実施していない者が訪問条件を定めることは認められない。この運用ルールを組織全体で共有することが、改定対応の鍵となる。

訪問看護記録書の整備は、第3の対応事項である。記録書には、毎回の訪問内容に加え、目標達成の程度や効果に関する評価を記載する。訪問時刻については、計画上の時刻ではなく、実際の開始時刻と終了時刻を記録する。これらの記載は、算定要件を満たすための必須事項である。

まとめ

令和8年度改定は、適正な訪問看護の推進に向け、実施基準の明確化と記録要件の厳格化を進める。訪問看護ステーションは、標準時間に基づく訪問計画の作成、看護目標及び訪問看護計画に沿った実施、利用者の状態に応じた個別対応、目標達成の評価と記録、実際の訪問時刻の記載という5点を確実に整える必要がある。これらの対応は、診療報酬の算定要件であると同時に、訪問看護の質を高める実務改善の機会でもある。

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