近年、遺伝子組換え生物等を含む薬剤の投与機会が増えています。ところが、こうした薬剤の取扱いに必要なカルタヘナ法上の管理は、従来の診療報酬で評価されてきませんでした。そこで令和8年度診療報酬改定では、カルタヘナ法を遵守した薬剤投与と医学管理を推進する評価を新設します。
本改定の見直しは、大きく2つです。1つ目は、入院中の個室管理を評価する「特定薬剤治療環境特別加算」(1日につき300点)の新設です。2つ目は、特定薬剤治療管理料の対象拡大であり、自宅等での管理指導を新たに評価します。いずれの見直しも、カルタヘナ法に基づく管理が必要な薬剤を対象とし、新設加算ではその対象に再生医療等製品を含みます。
カルタヘナ法と対象薬剤を理解する
はじめに、カルタヘナ法と今回の対象薬剤を確認します。カルタヘナ法は、遺伝子組換え生物等が環境へ広がることを防ぐ法律です。医療では、この遺伝子組換え生物等を含む薬剤が、管理の対象となります。
カルタヘナ法は、遺伝子組換え生物等の使用を規制し、生物の多様性を守る法律です。正式名称は「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」といいます。この法律は、遺伝子組換え生物等が自然環境へ広がり、在来の生態系に影響を及ぼす事態を防ぐことを目的とします。医療分野では、遺伝子組換え技術を用いた薬剤が、この規制の対象に含まれます。
対象薬剤は、カルタヘナ法に基づく管理が必要な薬剤であり、再生医療等製品を含みます。具体的には、ウイルスを用いたがん治療薬や、遺伝子を導入する治療製品などが該当します。これらの薬剤は、投与後に患者の体液や排泄物を通じて、遺伝子組換え生物等が外部へ排出される可能性があります。そのため、薬剤を投与する医療機関には、拡散を防ぐための管理が求められます。
1つ目の見直し:個室管理を評価する「特定薬剤治療環境特別加算」
1つ目の見直しは、入院中の個室管理を評価する「特定薬剤治療環境特別加算」の新設です。この加算は、1日につき300点を算定できます。対象は、カルタヘナ法に基づく管理が必要な薬剤を投与する目的で個室に入院する患者です。
この加算は、遺伝子組換え生物等の拡散を防ぐ個室入院を評価します。対象薬剤を投与すると、遺伝子組換え生物等が患者から外部へ排出される可能性があります。個室での入院管理は、この排出物が他の患者や環境へ広がることを防ぎます。新設の加算は、こうした拡散防止の体制を、診療報酬の面から支えます。
算定要件は、対象薬剤の投与を目的とした個室入院です。具体的には、本加算を算定できる入院基本料または特定入院料を現に算定している患者が、算定の前提となります。この患者を、カルタヘナ法に基づく管理が必要な薬剤を投与する目的で個室に入院させた場合に、所定点数へ加算します。なお、対象薬剤には再生医療等製品も含まれます。
2つ目の見直し:特定薬剤治療管理料の対象拡大
2つ目の見直しは、特定薬剤治療管理料の対象拡大です。改定後は、カルタヘナ法に基づく管理が必要な薬剤を投与する患者への、自宅等での管理指導が評価対象に加わります。算定は、月1回に限られます。
今回拡大するのは、特定薬剤治療管理料のうち「注11 ロ」の規定です。この規定は現行で、サリドマイド及びその誘導体を投与している患者を対象としています。具体的には、これらの薬剤を投与している患者について、服薬の安全管理の遵守状況を確認し、その結果を所定の機関に報告するなどの管理を評価します。この確認により投与の妥当性を見極め、必要な指導を行った場合に、月1回算定できます。
改定後は、この注11 ロの対象に、カルタヘナ法に基づく管理が必要な薬剤を投与している患者が加わります。これらの患者は、退院後も自宅等で薬剤に由来する遺伝子組換え生物等を排出する可能性があります。そこで、自宅等における管理に必要な指導を行った場合に、月1回に限り所定点数を算定できるようにします。この拡大により、入院中だけでなく退院後の管理も、診療報酬で評価されます。
まとめ
令和8年度診療報酬改定では、カルタヘナ法に基づく医学管理を推進するため、2つの見直しを行います。1つ目は、入院中の個室管理を評価する「特定薬剤治療環境特別加算」(1日につき300点)の新設です。2つ目は、特定薬剤治療管理料の対象拡大であり、自宅等での管理指導を新たに評価します。これらの見直しにより、遺伝子組換え生物等を含む薬剤の安全な投与と管理が、診療報酬の面から支えられます。










