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地域包括医療病棟・地域包括ケア病棟の現状と課題―高齢者救急の受け皿となる包括的入院医療の検証結果
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地域包括医療病棟・地域包括ケア病棟の現状と課題―高齢者救急の受け皿となる包括的入院医療の検証結果

令和7年度第13回入院・外来医療等の調査・評価分科会が明らかにした救急受入・後方支援機能の実態と高額薬剤使用の課題

令和7年9月25日に開催された第13回入院・外来医療等の調査・評価分科会において、包括的な機能を担う入院医療の検証結果がとりまとめられました。85歳以上の高齢者入院患者数が増加する中、新たな地域医療構想で位置づけられた「高齢者救急・地域急性期機能」と「在宅医療等連携機能」を担う地域包括医療病棟と地域包括ケア病棟について、その実態と課題が明らかになりました。地域包括医療病棟は急性期病棟との併設が多く、高齢者救急の受け皿として機能しています。地域包括ケア病棟は在宅復帰支援の役割を果たしていますが、白内障や大腸ポリープなど短期滞在手術が上位疾患となっている点が課題として指摘されました。両病棟ともに救急受入や後方支援機能には施設間で大きなばらつきがあり、高額薬剤使用患者の受入困難という課題を抱えています。

この検証では、地域包括医療病棟と地域包括ケア病棟の届出状況、入院患者の特徴、施設基準の充足状況、救急受入と後方支援の実態、高額薬剤使用の課題という4つの観点から分析が行われました。地域包括医療病棟では、緊急入院や手術の有無により医療資源投入量に差があり、85歳以上で在院日数が5~6日延長する傾向が確認されました。地域包括ケア病棟では、直接入院割合や救急受入件数に施設間で大きな差があり、救急搬送からの入院が15%を超える施設も存在します。両病棟ともに救急告示病院が多く、救急受入を実施していますが、後方支援機能を評価する加算の算定は二極化しています。高額薬剤使用患者の受入困難は、トルバプタンやパーキンソン病治療薬、骨粗鬆症治療薬、生物学的製剤、回復期リハビリテーション病棟では4分の1超の施設で抗がん剤が課題となっています。

地域包括医療病棟入院料の届出状況と医療機関の特徴

地域包括医療病棟を届け出た医療機関は、約3分の2が同一医療機関内に急性期一般入院料1~6のいずれかを有しており、地域包括ケア病棟を有する医療機関が半数以上でした。約3分の2が同一医療機関内にDPC対象病床を有しています。届出前から減少した入院料は、急性期一般入院料1が4割程度と最多であり、急性期一般入院料2~6、地域包括ケア病棟が続きました。急性期一般入院料2~6から移行したと思われる医療機関の半数程度では、地域包括医療病棟の届出後に急性期一般入院料を算定する病棟がなくなっています。

地域包括医療病棟を有する医療機関が併設している病棟の組み合わせは様々です。二次医療圏の人口区分別にみると、大都市型の二次医療圏では急性期機能を有する病院が多く、過疎地域型になるにつれ、回復期等~慢性期病棟のみを有する病院の割合が多くなっていました。地域包括医療病棟入院料を届け出ている施設のうち、同一・隣接敷地内に約半数が訪問看護ステーションを有しており、居宅介護支援事業所を有する施設も多くみられます。

地域包括医療病棟の届出を行った理由は、「高齢者の救急搬送の増加に伴いニーズに沿った対応が可能」「経営が安定すると考えた」「急性期一般病棟入院基本料等の重症度、医療・看護必要度の基準を満たすことが困難」が多く挙げられています。届出を行った結果、現時点で感じていることとしては、「他の入院料の病棟と組み合わせることで患者の状態に即した医療を提供できている」「経営が安定してきている」「実際の患者の状態により即した入院料等であると感じている」が上位でした。

急性期病棟を有する医療機関のうち、地域包括医療病棟を届け出ていない医療機関において、今後の届出を検討したものの実際には届け出ていない医療機関は約15%であり、届出を検討中の医療機関は3.7%です。地域包括ケア病棟を届け出ている施設では、届出を検討した医療機関は30.5%あり、実際に検討中の医療機関は7.5%で、急性期の医療機関と比較して届出を検討している施設が多い状況です。急性期病棟を有する医療機関の約8割、地域包括ケア病棟・病室を届け出ている施設の約6割は届出を検討していないと回答しています。

地域包括医療病棟に入院する患者像と施設基準の課題

地域包括医療病棟に入院する患者は、急性期一般入院料2~6の病棟と比べ年齢や要介護度が高く、認知症や低栄養リスクを有する患者の割合が多い特徴があります。入院初日のB項目3点以上、重症度、医療・看護必要度等の要件は概ね全ての病棟で満たされていました。入院患者数の多い疾患は、誤嚥性肺炎、肺炎、尿路感染症、心不全、脱水、その他の感染症などの内科系疾患と、股関節骨折(手術あり)、胸腰椎の圧迫骨折(手術なし)などの整形外科疾患です。

医療機関毎に手術に係るKコードの実施割合や、全体として患者数が上位である内科系疾患の入棟割合には大きなばらつきがあり、診療のパターンは一定ではありませんでした。急性期一般入院料2~6を算定する病棟と地域包括医療病棟の双方を有している場合に、各病棟に入院する疾患や要介護度、年齢層の分布には目立った特徴はみられていません。分科会では、多疾患を有する救急患者は、搬送時点で急性期病棟と地域包括医療病棟のいずれが適しているか判断が難しいとの意見や、患者像は大きな違いはなく、高齢者において頻度の高い疾患をそうした病棟でみることも考えられるのではないかとの意見がありました。

地域包括医療病棟に入院する患者の入棟元は自宅が最も多く、退棟先も自宅が最も多い結果です。自宅・居住系施設等への退院は全体の約85%でした。年齢は、在院日数の延長と関連する独立した因子であるとの文献的報告があり、急性期一般入院料2~6、地域包括医療病棟のいずれにおいても、年齢階級が上がるほど在院日数が長くなる傾向です。85歳以上では、在院日数の中央値が85歳未満と比べて5~6日程度延長していました。各施設における85歳以上の患者の割合にはばらつきがあります。分科会では、高齢であるほど在院日数が長いのは当然の結果であると思われ、どのような患者を受け入れているかを、急性期を含む入院の評価に組み込んではどうかとの意見がありました。

急性期病棟を有する医療機関は、地域包括医療病棟の届出にあたって満たすことが困難な施設基準として、「休日を含めすべての日にリハビリテーションを提供できる体制の整備」を回答した医療機関が半数を超えていました。続いて、「自院の一般病棟からの転棟が5%未満」「常勤のPT/OT/STの配置」「ADLが低下した患者が5%未満」が多くあげられています。一方、地域包括ケア病棟を有する医療機関における届出にあたって満たすことが困難な施設基準として、「重症度、医療・看護必要度の基準①を満たすこと」を回答した医療機関が半数程度でした。続いて、「在宅復帰率8割」「休日を含むリハビリの体制整備」「初日にB項目3点以上」「ADL低下が5%未満」を回答した施設が多く、急性期病棟を有する医療機関とは違った傾向がみられています。

同一医療機関内に地域包括医療病棟と急性期一般入院料2~6の病棟の双方を有する施設に直接入院した患者について、いずれの病棟に入院したかに分類して、入退院時のADLの変化を比較したところ、病棟の種類による違いは大きくありませんでした。一方、ADLの変化のパターンは疾病ごとに異なり、誤嚥性肺炎や心不全では、整形外科系症例と比較し、入院期間中のADLの改善幅は少ない結果です。急性期一般入院料2~6の病棟と地域包括医療病棟では、地域包括医療病棟においてADLが改善する患者が多い傾向でした。しかし、ADLが低下した患者の割合はいずれも5%を超えており、一時的に施設基準を満たせない医療機関があることが想定されました。

リハビリテーション・栄養・口腔連携加算の効果と課題

地域包括医療病棟において、リハビリテーション・栄養・口腔連携加算を届け出て算定している施設とそれ以外の施設で、入院中のADL変化の分布に大きな差はみられませんでした。算定している医療機関におけるADLが低下した患者の割合は4.7%であり、算定していない医療機関における5.5%より少ないものの、基準である3%未満には達していません。連携加算の算定回数が1回以上の施設は地域包括医療病棟全体の約11%でした。

70%にあたる19施設が加算を届け出ていない理由を回答し、「休日のリハビリテーション料の提供単位数が平日の提供単位数の8割以上を満たさないため」が最も多い結果です。次いで、「リハビリに習熟した常勤医師の確保が困難」「入棟後3日までに疾患別リハビリを算定された患者割合が8割に満たない」を回答した施設が多くありました。実際に、「休日のリハビリ提供単位数」については満たせていない施設が約6割あり、「ADLが低下した患者の割合が3%未満」を回答した施設も約3割ありました。

退院時にADLが悪化した患者の割合は連携加算の算定あり施設で7.9%、なし施設で4.9%でしたが、ADLが大きく改善した患者の割合は算定あり施設で多い結果です。ADLが低下する患者は要介護度や年齢が高い傾向でした。連携加算の算定有無によらず、退院時にADLが低下した患者の割合が5%未満の施設は60%程度です。連携加算の算定施設では、リハビリ実施割合、3日以内にリハビリ開始した割合がともに高く、1人1日当たりの平均リハビリ実施単位数は算定施設で3.3単位、算定なし施設で2.3単位と算定施設で多くなっています。土日祝日の施設全体のリハビリ提供量は算定施設で86%、算定なし施設で68%でした。

分科会では、ADLについて、リハビリテーション・栄養・口腔連携加算の算定有無とADLスコア平均や改善幅の検討だけでなく、実際に提供されたリハビリの量や介入の時期等を踏まえ、どのような取組が効果的なのかといった検討を進めるべきとの指摘がありました。

地域包括医療病棟における医療資源投入量の特徴

包括内の出来高点数に対する請求点数の比は、整形外科系の疾患等、出来高算定の手技を伴う疾患で高い傾向にありました。一方、誤嚥性肺炎、脳梗塞、尿路感染症等の内科系疾患においては包括内の出来高実績点数に比して請求点数が低い傾向です。内科系疾患は外科系疾患に比べ、救急搬送からの入院、緊急入院の割合が高く、高齢者では特に強くその傾向がみられました。

包括内の出来高実績点数にはばらつきがあり、緊急入院が多い診断群分類や、手術を行うことが少ない診断群分類において包括内の出来高実績点数が高い傾向です。地域包括医療病棟において、緊急入院の割合や手術実施の割合に基づいて診断群分類を層別化すると、1日あたりの包括内の出来高実績点数の分布は、手術のない緊急入院、手術を行う緊急入院、手術予定のない予定入院、手術目的の予定入院の順に高い結果でした。

患者ごとに予定/緊急入院、手術実施の有無により、1日当たりの包括内の出来高実績点数の患者ごと分布を比較すると、手術を行わない緊急入院群では手術目的の予定入院群と比較し、1日当たり包括内出来高実績点数の平均値は約440点高く、群による差が大きい状況です。医療資源投入量や年齢層が同じであってもADLや要介護度は様々であり、医療資源投入量では測定されない診療上の手間が示唆されました。

分科会では、手術に係るKコードを算定している地域包括医療病棟が多く、整形外科の標ぼうがある医療機関では療法士数や他の要件との兼ね合いから地域包括医療病棟を届出やすいのではないかとの指摘がありました。高齢者の疾患を幅広くみるという観点から、内科系疾患と外科系疾患の包括範囲内の医療資源投入量について、バランスがとれるよう、その内訳や診療内容を更に検討すべきではないかとの意見がありました。緊急入院の受入時には様々な手間がかかるので、看護師等の療養の世話の手間について、投入している医療資源の一環として評価方法を検討してはどうかとの意見もあります。

地域包括医療病棟の届出が伸びてこないのは施設基準の厳しさが影響している可能性があり、地域包括ケア病棟との患者像の類似も踏まえ、緩やかに統一していくような評価方法も検討できるのではないかとの意見がありました。下り搬送については、最初の搬送先が病床稼働率等の観点で、本来その病院で診療する必要のない患者を入院させるという事象もあるようなので、機能分化を進めても経営できるよう、評価を検討していってはどうかとの意見もあります。

地域包括ケア病棟入院料の在院日数と包括範囲の特徴

令和6年度改定で、入院41日目以降は入院料が低減する仕組みが導入されたものの、地域包括ケア病棟における入院日数の中央値は23日程度で、改定前後で変化はみられませんでした。地域包括ケア病棟及び病室を届け出ている病棟における在宅復帰率は、入院料・管理料1~2において90%以上の施設が基準を満たしており、改定前後を比較すると、改定後に高い傾向がみられています。入院料・管理料3~4においては在宅復帰率の施設基準を満たしていない施設がみられました。

地域包括ケア病棟における自宅等からの直接の入院割合は、医療機関ごとにばらついています。急性期病棟を有する施設では、有さない施設に比べ、直接入院する患者の割合は少ない施設が多いものの、施設によっては直接入院を多く受け入れていました。直接入院のうち、緊急入院の患者が少ない傾向にあります。

地域包括ケア病棟の入院患者数上位50位までの疾患について、1日あたりの包括内の出来高換算点数は地域包括医療病棟と比べて一定の範囲に集中していました。短期滞在手術等基本料3に該当する疾患では、請求点数が高い傾向です。地域包括ケア病棟における包括内の出来高実績点数は、地域包括医療病棟と比較しばらつきが少ない結果でした。入棟経路による包括内出来高実績点数の差は小さく、直接入院した群について、予定/緊急入院と手術の有無により群分けすると、地域包括医療病棟のように4群の差は明らかでないが、緊急入院は予定入院に比べて包括内の出来高実績点数が高い傾向です。

分科会では、地域包括ケア病棟の患者数上位2疾患が白内障や大腸ポリープであることについては、病棟の役割をふまえてどのように評価するか検討が必要であるとともに、地域包括医療病棟にそうした患者が少ないことは初日のB得点3点以上の患者が5割という要件が影響している可能性があるとの意見がありました。

地域包括ケア病棟では、管理栄養士の配置基準はなく、栄養管理に係る加算や管理料は包括されています。病棟における管理栄養士の配置数は全病棟種類の中でも少なく病棟で業務に従事している時間も短い傾向であり、低栄養リスクがスクリーニングで把握されている割合は低い状況です。分科会では、管理栄養士が介入することによって経口摂取に復せる割合は多いと思われ、管理栄養士の介入を評価する視点は重要ではないかとの指摘がありました。

包括的入院医療を担う医療機関の救急受入機能

地域包括医療病棟を有する医療機関の95%、地域包括ケア病棟入院料1を届け出ている医療機関の77.7%、地域包括ケア病棟入院料2を届け出ている医療機関の92.9%が救急告示病院です。地域包括医療病棟、地域包括ケア病棟入院料1~2を届け出ている医療機関の75%以上は二次救急医療機関であり、地域包括医療病棟を有する医療機関で救急部門のない医療機関はありませんでした。

地域包括医療病棟を有する医療機関の約90%、地域包括ケア病棟を有する医療機関の約70%が毎日救急受入をしています。地域包括ケア病棟を有する医療機関では、救急受入が日中のみの病院が1割弱みられました。救急受入件数の中央値は784件です。救急受入件数が2000件以上の医療機関は約22%あり、1~199件の医療機関数と同程度でした。救急受入件数が2000件以上の医療機関は、いずれも急性期病棟を有しています。

救急搬送からの入院や、自宅または施設からの緊急入院は、地域包括医療病棟では多く、地域包括ケア病棟では少ない医療機関が多い状況です。救急搬送からの入院が15%を超える地域包括ケア病棟があり、これらは在宅復帰率80%以上、平均在院日数22日以下の施設が多いが、重症度、医療・看護必要度の得点は低い傾向でした。分科会では、緊急入院等を多く受け入れている地域包括ケア病棟は一定の評価を検討すべきではないかとの意見がありました。

後方支援機能の実態と評価の課題

後方支援に関する現状の評価として、在宅かかりつけ医の求めに応じて入院医療を提供した場合に算定する在宅患者緊急入院診療加算や、介護保険施設の入所者が入院を要する状態になった場合に、当該介護保険施設の職員の求めに応じて往診した際の介護保険施設等連携往診加算、必要に応じて入院医療を提供した場合に算定する協力対象施設入所者入院加算等があります。地域包括医療病棟、地域包括ケア病棟の双方において、救急搬送受入件数が少なくても、これらの加算を多く算定している医療機関が存在しました。

地域包括医療病棟、地域包括ケア病棟における在宅患者緊急入院診療加算1~3、協力対象施設入所者入院加算1・2の病床あたり算定回数は、いずれの加算についても0件の施設が最も多く、算定回数は二極化しています。入院料ごとに比較すると、地域包括医療病棟が最も多く、地域包括ケア病棟では入院料1・3で2・4より多い結果です。介護保険施設等連携往診加算は届出医療機関数が少ないが、その8割は包括期の病棟を有する医療機関でした。

在宅患者緊急入院診療加算や協力対象施設入所者入院加算の算定回数、緊急入院の件数等は互いに相関していませんでした。これらの加算の病床あたり算定回数は、包括期の病棟単独よりも病院全体でみたほうが多く、急性期の病棟でより算定されている施設が多いことが示唆されます。協力対象施設入所者入院加算の施設基準である在宅療養支援病院、在宅療養後方支援病院、地域包括ケア病棟を有する病院のいずれも満たさなくても、施設からの緊急入院を多く受け入れている地域包括医療病棟がありました。

在宅患者緊急入院診療加算や協力対象施設入所者入院加算の算定件数が多い施設では、退院時共同指導も多く行われる傾向にあります。地域包括医療病棟入院料・地域包括ケア病棟入院料1・2を届け出ている施設のうち、入退院支援加算1を届け出ている施設における連携機関数は、25~50施設が最も多い結果です。地域包括医療病棟を届出施設の半数以上で、10以上の介護保険施設の協力医療機関を引き受けています。地域包括医療病棟を有する医療機関の約1割において、7以上の障害者支援施設と連携していました。

協力対象施設への医療提供内容として、診療の求めがあった場合の診療、入所者の急変時等の相談体制の確保、入院を要する入所者の原則受入体制確保を9割以上の医療機関が提供しています。協力医療機関となることを断った件数が1件以上ある場合の理由として、「診療の求めがあった場合の診療が困難」「入院必要時の受入困難」「既に複数の介護施設と連携しており、これ以上の拡充が困難」をあげた施設が多い状況です。

各病棟を届け出ている医療機関の半数以上が、地域貢献活動の取組として「地域ケア会議への参加」「地域医療構想調整会議への参加」を実施していました。地域包括医療病棟を有する医療機関では、特に地域医療構想調整会議へ参加している割合が多い結果です。

分科会における後方支援機能の評価に関する議論

分科会では、高齢者の入院医療においては、救急の受入とともに在宅との連携も重要であり、在宅医療を含めて地域医療全体を考えることは重要なテーマとの意見がありました。救急搬送から自宅に退院するまで1つの病院で加療できることが望ましく、病院単位でどのような役割をどのように評価するかといった観点で検討が必要ではないかとの意見もあります。

新たな地域医療構想のとりまとめが行われましたが、まだ医療法は審議中、かつガイドラインの議論は始まっていないため、診療報酬のみで先に議論を始めないよう、慎重に進めるべきとの指摘がありました。地域包括ケア病棟の3つの機能について、病院単位で救急受入等を評価すると、結局ほとんど急性期の病棟に入院している場合があるので、形だけの救急告示ではなく、実際に果たしている後方支援機能等を評価する仕組みが必要ではないか、との意見があります。

後方支援の加算について、病棟の役割という観点では何割程度を実際に包括期の病棟で受け入れているかを指標とする考え方もあるのではないかとの意見がありました。介護施設からの入院を多く受け入れている地域包括医療病棟があり、その役割に照らせば加算等の評価対象としてもよいことを検討しうるのではないかとの意見もあります。

後方支援機能は地域の拠点を担う上で重要と考えられますが、指標として検討された加算の現行の施設基準では、200床や400床といった病床規模の制限が設けられています。地域の医療資源を有効に活用できるよう、柔軟に見直しを検討してもよいのではないかとの意見がありました。

包括算定病棟における高額薬剤使用の課題

地域包括ケア病棟、回復期リハビリテーション病棟、療養病棟において、入院受入が困難となる理由として「高額薬剤を使用している」と回答した施設の割合は、いずれの入院料においても40%を超えています。特に困難である薬剤として、4割を超える施設がトルバプタン、パーキンソン病治療薬、血友病以外の出血傾向の抑制に係る医薬品が該当すると回答しました。

自由記載では、骨粗鬆症治療薬や、生物学的製剤を含む分子標的治療薬が多く挙げられています。4分の1を超える回復期リハビリテーション病棟を有する病院で抗がん剤が回答されており、他の病棟と除外薬剤の範囲が異なる影響と考えられました。療養病棟では特定の薬剤ではなく「高額な薬剤」のように薬価に言及した施設が多い状況です。

分科会では、転院前に急性期の病院で大量の高額薬剤の処方をしなければならなくなり、包括期だけの問題ではなく、急性期の病院の負担になっているケースも多いとの指摘がありました。高額薬剤を使用しているために、包括期の病棟の適応があるにも関わらず受入困難となる事例は実際にあり、適切な在宅復帰等の観点で不合理であると思われます。薬剤や有害事象の管理が難しいといった事由がないか、維持期の薬剤として使われうるか、薬価と入院料の関係等の視点を踏まえ、使用や受入の状況について検討を深めてはどうかとの意見がありました。

抗悪性腫瘍剤や生物学的製剤を長期に使いながら維持期を過ごす患者が増えていることは事実であり、回復期リハビリテーション病棟と地域包括ケア病棟との間に除外薬剤の差があることや、除外薬剤そのものの考え方について改めて検討する必要があるのではないかとの意見がありました。

まとめ

令和7年度第13回入院・外来医療等の調査・評価分科会の検証結果から、地域包括医療病棟と地域包括ケア病棟が高齢者救急と在宅医療の受け皿として重要な役割を果たしていることが明らかになりました。地域包括医療病棟では、緊急入院や手術の有無により医療資源投入量に差があり、手術を行わない緊急入院群で1日当たり約440点高い状況です。85歳以上で在院日数が5~6日延長する傾向があり、医療資源投入量が同程度でもADLや要介護度は様々であることから、医療資源投入量では測定されない看護ケアの手間が示唆されています。地域包括ケア病棟では、救急受入や後方支援機能に施設間でばらつきがあり、実際に果たしている機能を評価する仕組みが求められます。白内障や大腸ポリープが上位疾患となっている点や、管理栄養士の介入評価の重要性も指摘されました。

両病棟ともに救急告示病院が多く、75%以上が二次救急医療機関ですが、後方支援機能を評価する加算の算定は二極化しています。協力医療機関として10以上の介護保険施設と連携している施設もある一方、施設基準を満たさなくても緊急入院を多く受け入れている病棟の存在も確認されました。高額薬剤使用患者の受入困難は40%超の施設で課題となっており、トルバプタン、パーキンソン病治療薬、骨粗鬆症治療薬、生物学的製剤、回復期リハビリテーション病棟では4分の1超の施設で抗がん剤が問題となっています。

新たな地域医療構想で位置づけられた「高齢者救急・地域急性期機能」と「在宅医療等連携機能」を担う包括的入院医療の適切な評価に向けて、まだ医療法は審議中、かつガイドラインの議論は始まっていないため、診療報酬のみで先に議論を始めないよう慎重に進めるべきとの意見がありました。病院単位での役割の評価、緊急入院を多く受け入れる病棟への評価、後方支援の実態を反映した指標、病床規模制限の柔軟な見直しなどが検討課題として挙げられており、引き続き診療データの分析と実態調査が進められます。

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