令和8年度診療報酬改定では、歯科点数表について、歯科診療の実態を踏まえた整理が行われます。歯科点数表には、解釈が示されていない項目、内容が類似する項目、算定告示と算定要件が一致していない項目が残されていました。本稿では、個別改定項目Ⅲ-7の⑫「歯科診療の実態に応じた評価の見直し・明確化」を、日々の算定に直結する形で解説します。
今回の見直しは、歯科点数表を「明確化」「統廃合と新設」「算定要件の見直し」という3つの方向で整理します。明確化では、画像診断の2枚目以降の算定方法、病理診断における口腔の臓器の数え方、歯肉剥離掻爬手術の術式が示されます。統廃合と新設では、テンポラリークラウン等を暫間歯冠補綴装置(48点)に統一し、ディスキング(40点)、補綴前処置(40点)、歯の破折片除去(30点)を新たに評価します。算定要件の見直しでは、麻酔薬剤料を算定できる範囲を広げ、口腔機能に係る3つの検査の施設基準を撤廃します。
1. 解釈が示されていなかった項目を明確化する
明確化の対象は、画像診断、病理診断、歯肉剥離掻爬手術の3項目です。いずれも、これまで点数表や留意事項通知に解釈が示されず、現場の判断に委ねられてきた項目です。以下では、3項目の内容を順に確認します。
画像診断では、診断料と撮影料の2枚目以降の算定方法が、通則と留意事項通知に整理されます。従来は写真診断の「注1」で2枚目以降の写真診断を100分の50としていました。改定案では、この注を削除し、通則2で「第2の診断以後の診断は所定点数の100分の50」と規定します。あわせて留意事項通知に、「同一の部位」「同時に」「2枚以上」「同一の方法」の定義が新設されます。
同一の方法による撮影の定義では、デジタル撮影とアナログ撮影を同じ方法として扱う点が示されます。「同一の部位」とは、部位的な一致に加え、通常同一フィルム面に撮影し得る範囲をいいます。「同時に」とは、診断するため予定されるものをいい、処置後又は手術後の評価を目的とした撮影は該当しません。第1枚目では診断が困難な異なる疾患を診断する目的で撮影した場合は、各区分の所定点数により算定できます。
病理診断では、口腔を1臓器として取り扱う考え方が明確になります。医科点数表のN000からN002までについては、口腔を1臓器として算定します。ただし、別の原因で病変が独立して生じており、組織学的形態が異なる場合は、2回を限度として算定できます。
歯肉剥離掻爬手術では、算定の前提となる術式が留意事項通知に示されます。示される術式は、歯肉弁を歯槽骨から剥離し、明視下で不良肉芽を除去する手順です。続いて、汚染歯根面のスケーリング・ルートプレーニングを行い、歯肉弁を適切な位置に復位縫合します。この一連の手技を、歯周ポケットの除去又は減少を目的として行った場合に算定します。
2. 類似する項目と実績のない項目を整理し、新たな評価を設ける
整理の対象は、内容が類似する項目、複数年にわたり算定実績がない項目、算定告示と算定要件が一致していない項目の3種類です。この整理により、暫間歯冠補綴装置をはじめとする新たな評価が設けられます。以下では、統合・廃止・見直し・新設の順に説明します。
暫間的な装置に係る類似項目は、暫間歯冠補綴装置(1歯につき48点)に統合されます。統合の対象は、テンポラリークラウン(34点)、歯周治療用装置(冠形態)、リテーナー、レジン連続冠固定法による暫間固定です。算定できる場面は、支台歯保護のための暫間装着、重度歯周病患者への冠形態の装置の装着、レジン連続冠固定法による暫間固定、前歯部1歯欠損症例での歯科用暫間被覆冠成形品の連結固定の4つです。前歯部1歯欠損症例では、隣在歯を歯数に含めない点に注意が必要です。
暫間歯冠補綴装置の算定では、包括される費用の範囲も明確になります。包括されるのは、印象採得、咬合採得、仮着、調整指導、修理、除去等の基本的な技術料と保険医療材料料です。広範囲顎骨支持型補綴(ブリッジ形態のもの)の患者にリテーナーを製作した場合は、手術日から装着までの期間に1回に限り算定します。この場合の特定保険医療材料料は、スクリュー、アバットメント及びシリンダーに限り別に算定できます。なお、歯周治療用装置のうち床義歯形態のものは、口腔内装置に位置付けられます。
算定実績がない項目は、歯科点数表から廃止されます。廃止されるのは、救急搬送診療料(1,300点)、退院前在宅療養指導管理料(120点)、在宅麻薬等注射指導管理料(1,500点)、在宅腫瘍化学療法注射指導管理料(1,500点)、在宅悪性腫瘍患者共同指導管理料(1,500点)です。歯髄切断については、失活歯髄切断(72点)が廃止され、生活歯髄切断(233点)のみが残ります。
歯周病患者画像活用指導料は、枚数に応じた評価から、画像の種類に応じた評価に見直されます。現行は10点を基本とし、2枚目から1枚につき10点を5枚まで加算する仕組みでした。改定案は、「1 口腔内画像 50点」と「2 顕微鏡画像 50点」の2区分に再編します。顕微鏡画像は、動機付けを目的として位相差顕微鏡による画像を用いて指導した場合に、患者1人につき1回に限り算定します。
う蝕を前提とした3項目は、対象の実態に合わせて名称が変わります。う蝕処置は単純処置(18点)に、う蝕歯即時充填形成は即時充填形成(128点)に、う蝕歯インレー修復形成はインレー修復形成(120点)になります。点数はいずれも据え置かれ、名称のみの変更です。
咬合調整の対象だった診療行為のうち2つは、独立した評価に位置付けられます。1つ目のディスキング(1歯につき40点)は、叢生に対して歯の隣接面を削除した場合に、歯数に応じて算定します。2つ目の補綴前処置(1装置につき40点)は、新たな義歯の製作又は義歯修理に当たり、レストシートやガイドプレーンの付与、リカントゥアリング等により鉤歯や対合歯を削除した場合に算定します。補綴前処置は1装置につき1回の算定であり、前処置の内容の要点を診療録に記載する必要があります。
歯の破折片除去は、準用による算定から独立した評価(1歯につき30点)になります。現行は口腔内軟組織異物(人工物)除去術の「1 簡単なもの」で算定していました。改定案では、一部残存した歯の破折片を非観血的あるいは簡単な切開で除去した場合に、歯数に応じて算定します。う蝕除去に伴うものは対象外であり、浸潤麻酔下で行った場合は浸潤麻酔料と使用麻酔薬剤料をそれぞれ算定します。
3. 麻酔薬剤料・施設基準・併算定の取扱いを見直す
取扱いの見直しは、麻酔薬剤料、施設基準、併算定の3点です。いずれも、日常的な診療で算定に迷いや負担が生じていた部分です。以下では、3点を順に確認します。
麻酔薬剤料は、算定できる項目の範囲が広がります。処置の部の通則7では、生活歯髄切断と抜髄に加え、歯髄保護処置(1又は2)が薬剤料を算定できる対象に追加されます。歯冠修復及び欠損補綴の部では、通則11が新設され、歯冠形成(1に限る。)を行う場合の麻酔薬剤料を算定できるようになります。
口腔機能に係る検査の施設基準は、撤廃されます。撤廃の対象は、口腔細菌定量検査、咀嚼能力検査、咬合圧検査の3つです。これらは歯科診療で一般的に行われている検査であるため、地方厚生局長等への届出がなくても算定できるようになります。算定回数の上限そのものは変わらず、咀嚼能力検査と咬合圧検査は3月に1回、口腔細菌定量検査は月2回又は3月に1回が上限です。
情報連携に係る評価は、併算定できる項目が見直されます。見直しの対象は、在宅歯科医療情報連携加算(月1回100点)です。改定案では、この加算を算定する場合に在宅患者連携指導料(C007)を別に算定できない旨が明記されます。同じ取扱いは、在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料と小児在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料の在宅歯科医療情報連携加算にも適用されます。
まとめ:明確化・統廃合・要件見直しの3点を押さえる
今回の⑫は、歯科点数表を歯科診療の実態に合わせて整える改定です。明確化では、画像診断の2枚目以降の算定方法、病理診断における口腔の臓器の数え方、歯肉剥離掻爬手術の術式が示されます。統廃合と新設では、暫間歯冠補綴装置(48点)への統合に加え、ディスキング(40点)、補綴前処置(40点)、歯の破折片除去(30点)が新設されます。算定要件の見直しでは、麻酔薬剤料の対象拡大、口腔機能に係る3検査の施設基準の撤廃、在宅歯科医療情報連携加算の併算定整理が行われます。本稿の内容は個別改定項目(改定案)に基づくものであり、実際の運用は今後の告示及び留意事項通知で確認してください。










