歯科医療が十分に提供されていない地域では、歯科巡回診療車を用いた巡回診療が行われています。しかし、これまで巡回診療に対する診療報酬上の評価はありませんでした。令和8年度診療報酬改定では、自治体と連携した歯科巡回診療を適切に推進するため、新たな評価が設けられました。
今回の改定では、歯科巡回診療に関して2つの評価が新設されました。第一に、初診料・再診料に「地域歯科医療加算」100点が新設されました。第二に、巡回診療時の処置・手術・歯冠修復及び欠損補綴に対して、所定点数の30%に相当する加算が新設されました。本記事では、これら2つの新設評価について、算定要件と留意事項を解説します。
地域歯科医療加算100点の新設
地域歯科医療加算は、歯科巡回診療車を用いた巡回診療を行った場合に、初診料・再診料に100点を加算できる新たな評価です。
この加算の対象となるのは、巡回診療によらなければ歯科医療の確保が困難な地域、または専門歯科医療機関が身近にない地域に居住する患者です。対象となる患者に対して、歯科ユニット等を搭載した歯科巡回診療車の中で歯科診療を実施した場合に算定できます。
算定にあたっては、保険医療機関が自治体等と連携し、巡回診療実施計画を提出する必要があります。この「自治体等との連携」が、本加算の重要な要件です。
自治体連携の3つの要件
自治体等との連携は、次の3つのいずれかに該当する必要があります。
第一の要件は、自治体等が設置している保険医療機関が歯科巡回診療車を所有していることです(イに該当)。自治体立の医療機関が巡回診療車を保有しているケースが、この要件にあたります。
第二の要件は、都道府県の定める医療計画等の自治体の計画に基づく巡回診療であることです(ロに該当)。都道府県が医療計画の中で位置づけた巡回診療が、この要件にあたります。
第三の要件は、上記イまたはロに準ずるものです(ハに該当)。イ・ロには直接該当しないものの、実質的に自治体と連携した巡回診療と認められるケースが、この要件にあたります。
これら3つの要件のうち、いずれに該当するかを診療録と診療報酬明細書(レセプト)の摘要欄に記載する必要があります。
巡回診療時の処置等に対する30%加算の新設
地域歯科医療加算を算定した患者に対して巡回診療時に処置等を行った場合、所定点数の30%に相当する点数が加算されます。
この30%加算の対象となるのは、処置、手術、歯冠修復及び欠損補綴の各通則です。いずれも、地域歯科医療加算を算定した患者に対して巡回診療時に実施した場合に算定できます。
ただし、処置の通則第5号に掲げる加算を算定する場合は、この30%加算は算定できません。両者は併算定ができない点に注意が必要です。
まとめ
令和8年度診療報酬改定では、歯科巡回診療に対する2つの評価が新設されました。初診料・再診料への「地域歯科医療加算」100点と、処置・手術・補綴に対する所定点数の30%加算です。いずれも自治体等との連携が前提であり、巡回診療実施計画の提出やレセプト摘要欄への連携区分の記載が求められます。歯科医療が十分に提供されていない地域での歯科診療を推進するうえで、今回の改定は重要な一歩といえます。










