へき地では在宅医療を担う常勤医師の確保が困難な状況が続いてきました。この常勤医師要件が、へき地診療所における在宅時医学総合管理料及び施設入居時等医学総合管理料の算定を妨げる要因となっていました。令和8年度診療報酬改定では、この課題を解消し、へき地における在宅医療提供体制を確保するため、両管理料の施設基準を見直します。
今回の見直しでは、派遣元の保険医療機関が時間外対応体制を担う場合、非常勤医師でもへき地診療所で両管理料を算定可能とします。対象となるのは、「へき地保健医療対策事業について」に規定するへき地診療所に限定されます。連携先となる派遣元は、へき地医療拠点病院又は医療提供機能連携確保加算を算定する別の保険医療機関でなければなりません。さらに、派遣元医療機関は、緊急時の連絡体制及び24時間診療体制を確保する役割を担います。
改定の背景:へき地の在宅医療を阻む常勤医師要件
へき地診療所では、常勤医師の確保が在宅医療提供の最大の障壁となってきました。
現行の在宅時医学総合管理料及び施設入居時等医学総合管理料の施設基準では、在宅医療を担当する常勤医師の勤務が必須要件です。この要件は、継続的な訪問診療等を実施できる体制を確保する目的で設けられています。しかし、医師確保が難しいへき地では、常勤医師の配置が困難なケースが多く存在してきました。
医師確保の困難さは、へき地住民が在宅医療を受ける機会の減少につながっています。常勤医師を配置できないへき地診療所では、両管理料を算定できず、結果として在宅医療の提供自体を断念せざるを得ない状況も生じています。この状況は、2040年頃を見据えた地域医療の確保という観点で大きな課題となっています。
改定の内容:連携医療機関との兼務による要件緩和
今回の改定では、連携医療機関との兼務を前提に、常勤医師要件を緩和します。
具体的には、在宅患者の時間外対応体制を派遣元の保険医療機関が担う場合、へき地診療所における両管理料の算定を可能とします。派遣元の医療機関が時間外対応を担保することで、へき地診療所の医師は常勤でなくとも、継続的な在宅医療提供体制を確保できると整理されました。この緩和措置により、へき地診療所と連携医療機関の両方で勤務する医師による在宅医療が制度的に位置付けられます。
派遣元による時間外対応体制の確保は、在宅患者の安心・安全に直結します。在宅医療では24時間の緊急対応が患者の生命に関わる場面も少なくありません。常勤性ではなく実質的な対応体制で要件を判断する今回の見直しは、地域実情に即した制度運用への転換と言えます。
算定要件:対象施設と連携体制の具体的条件
要件緩和の適用には、対象施設の限定と連携体制の明確化という2つの条件があります。
対象施設は、「へき地保健医療対策事業について」(平成13年5月16日医政発第529号)に規定するへき地診療所に限定されます。一般の診療所や、本制度上のへき地診療所に該当しない医療機関は、緩和措置の対象外です。
連携先となる派遣元医療機関は、へき地医療拠点病院又は医療提供機能連携確保加算を算定する別の保険医療機関に限定されます。派遣元はへき地診療所自身ではなく、外部の連携医療機関でなければならない点に注意が必要です。これらの医療機関が派遣元となることで、安定した在宅医療提供体制が制度的に裏付けられます。
派遣元医療機関は、緊急時の連絡体制及び24時間診療体制をへき地診療所と連携して確保する責務を負います。派遣元と派遣先の役割分担を明確にすることで、患者にとって切れ目のない医療提供が実現します。連携体制は形式的なものではなく、実際に機能する体制でなければなりません。
実務への影響:医療機関が押さえるべきポイント
へき地診療所と連携医療機関の双方は、要件適合性の確認と連携体制の文書化が必要です。
へき地診療所側は、自施設が対象となるかの確認から始める必要があります。施設基準該当性の判断は、平成13年通知に基づくへき地診療所の指定有無で確定します。対象に該当する場合は、連携先となる派遣元医療機関の選定と協議に進みます。
派遣元医療機関側は、両施設で勤務する医師の勤務体制の整備が求められます。同一医師がへき地診療所と派遣元の両方で勤務する形態が想定されており、勤務シフトや責任所在の明確化が必要です。緊急時の連絡体制及び24時間診療体制の運用ルールも、両施設間で文書化しておくことが望まれます。
連携体制の構築後は、実際の運用が要件を満たしているかの継続的な検証が重要です。形式的な連携にとどまり、実態として時間外対応が機能していない場合、施設基準を満たさない可能性があります。定期的な体制確認と、患者対応の実績記録が、適正な算定の前提となります。
まとめ:へき地の在宅医療提供体制を支える制度的基盤
令和8年度改定は、へき地診療所における常勤医師要件を緩和し、在宅医療提供体制を確保します。連携医療機関との兼務により、非常勤医師でも在宅時医学総合管理料及び施設入居時等医学総合管理料の算定が可能となります。対象はへき地診療所に限定され、派遣元はへき地医療拠点病院又は医療提供機能連携確保加算を算定する別の保険医療機関でなければなりません。派遣元医療機関は、緊急時の連絡体制及び24時間診療体制を担います。今回の見直しは、地域実情に即した在宅医療提供の実現に向けた重要な一歩となります。










