患家における残薬の整理や適切な服薬管理の推進は、令和8年度診療報酬改定における重要な見直しテーマとなります。この見直しは、関連する診療報酬項目の算定要件と指定訪問看護の運営基準にまたがる横断的な対応として整理されます。本メルマガでは、改定によって新たに求められる対応内容を3つのポイントに分けて解説します。
今回の改定は、外来・在宅・訪問看護の3領域にまたがる見直しとなります。具体的には、第1に地域包括診療加算および地域包括診療料の算定要件として、残薬確認と適切な服薬管理が追加されます。第2に在宅時医学総合管理料および施設入居時等医学総合管理料についても、同様の要件が新設されます。第3に指定訪問看護の運営基準において、服薬状況(残薬を含む)の把握と薬局への情報提供が明確化されます。
地域包括診療加算・地域包括診療料の要件見直し
地域包括診療加算および地域包括診療料では、診療の際に患家における残薬を確認した上で適切な服薬管理を行うことが新たに算定要件となります。あわせて、処方薬を把握し管理する手段として電子処方箋システムの活用が含まれることも明確化されます。
残薬確認の具体的な実施方法は、患者またはその家族からの聴取を基本とします。聴取によって得られた残薬の状況に応じて、担当医は適切な服薬管理を行うとともに、必要に応じて処方内容の調整を実施します。処方内容の調整が他の保険医療機関に関わる場合は、当該医療機関へ処方の変更を依頼する対応も求められます。なお、これらの情報把握は、担当医の指示を受けた看護職員等が行うことも引き続き可能です。
電子処方箋システムは、患者の処方薬を全て把握・管理する手段として位置付けられます。現行の要件では「他の保険医療機関と連携及びオンライン資格確認を活用して、患者が受診している医療機関を全て把握する」と規定されていますが、改定後は「他の保険医療機関と連携並びにオンライン資格確認及び電子処方箋システム等を活用して」と変更されます。この明確化により、電子処方箋システムを通じた処方情報の把握・管理が、要件を満たす手段として明示的に位置付けられます。
在宅時医学総合管理料・施設入居時等医学総合管理料の要件新設
在宅時医学総合管理料および施設入居時等医学総合管理料についても、残薬確認と適切な服薬管理を行うことが算定要件として新たに規定されます。現行では関連する規定が存在しないため、今回の改定で新設される要件となります。
新設される算定要件の内容は、地域包括診療加算等と同様の構成となっています。具体的には、患家における残薬の状況を患者またはその家族から聴取した上で、その状況に応じて適切な服薬管理および処方内容の調整を行うことが求められます。情報の把握については、担当医の指示を受けた看護職員等が代行することも可能です。
要件の新設にあたっては、看護職員等への業務分担が認められている点が運用上のポイントとなります。在宅医療を提供する医療機関では、聴取結果の記録方法や処方調整の判断フローを事前に整備しておくことが望まれます。また、地域包括診療加算等と同様の要件構成であるため、両方の項目を算定する医療機関では、業務手順の標準化を進めることで効率的な対応が可能となります。
指定訪問看護における残薬対策の明確化
指定訪問看護の運営基準では、サービス提供時の利用状況等の把握項目に「服薬状況(残薬の状況を含む)」が明確に位置付けられます。さらに、把握した服薬状況については、主治医への情報提供に加えて、薬局への情報提供を行うことが望ましいと規定されます。
服薬状況の把握は、適切な訪問看護を提供するための基礎情報として整理されます。基準省令第9条に基づき、訪問看護事業者は利用者の心身の状況や病歴等とあわせて、服薬状況(残薬の状況を含む)の把握に努めることが求められます。把握した内容は訪問看護記録書に記入し、基準省令第30条の規定に基づき保存することが必要です。
主治医および薬局への情報提供は、多職種連携を通じた残薬対策の実効性を高める仕組みとなります。主治医に対しては、利用者の心身の状況や服薬状況(残薬の状況を含む)に係る必要な情報を提供することが求められます。薬局に対しては、必要に応じて利用者の同意を得た上で、調剤を行う保険薬局に服薬状況の情報を提供することが望ましいとされます。
まとめ:3領域の連携で残薬対策を実効化
令和8年度改定における残薬対策の見直しは、外来・在宅・訪問看護の3領域にまたがる横断的な対応として整理されます。地域包括診療加算および地域包括診療料では、残薬確認が新たに算定要件となるとともに、電子処方箋システム活用の取扱いが明確化されます。在宅時医学総合管理料および施設入居時等医学総合管理料では、残薬確認と適切な服薬管理が算定要件として新設されます。指定訪問看護では、服薬状況(残薬を含む)の把握と主治医・薬局への情報提供が明確化されます。これらの見直しを通じて、患家における残薬の整理と適切な服薬管理が一層推進されることが期待されます。










