表皮水疱症などの難治性皮膚疾患を持つ利用者は、潰瘍や水疱が繰り返し発生するため頻回な訪問看護ケアを必要とします。しかし、在宅難治性皮膚疾患処置指導管理を受ける利用者は、別表第八の対象外であったため、訪問看護は原則週3日までに制限されていました。令和8年度診療報酬改定では、手厚いケアの必要がある重症な難治性皮膚疾患を持つ利用者への訪問看護を充実させる観点から、この制約を見直します。
本改定では、在宅難治性皮膚疾患処置指導管理を受けている利用者が、訪問看護基本療養費等を週4日以上算定できる対象に追加されます。具体的には、別表第八の項目二に「在宅難治性皮膚疾患処置指導管理」が追記されます。これにより、表皮水疱症患者および水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症患者に対して、訪問看護基本療養費、退院後訪問指導料、在宅患者訪問看護・指導料、同一建物居住者訪問看護・指導料等を週4日以上算定できるようになります。
改定の背景|難治性皮膚疾患患者の在宅ケアの実情
難治性皮膚疾患を持つ利用者は、皮膚状態に応じた繰り返しの専門的ケアを在宅で必要としています。在宅難治性皮膚疾患処置指導管理料(1,000点)の対象となる表皮水疱症や水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症は、難治性の皮膚病変に対する特殊な処置が必要な疾患です。これらの患者には、水疱、びらん、潰瘍等の皮膚の状態に応じた薬剤の選択や被覆材の選択等について、月1回を限度として療養上の指導が行われます。
表皮水疱症は、先天的素因により日常生活で外力の加わる部位に水疱が反復して生ずる一群の疾患です。本疾患は指定難病36に指定されており、単純型、接合部型、栄養障害型の3大病型に分類されます。患者は出生時から外力が加わりやすい部位の皮膚に水疱やびらんの形成を繰り返し、症状は生涯にわたって持続します。合併症は病型により異なり、栄養障害型では偽合指症、関節拘縮、食道狭窄、貧血、低栄養、心不全、腎不全、有棘細胞癌等を伴います。
訪問看護では、皮膚状態の観察と並行して、状態に応じた多様な処置を実施しています。具体的なケアは「ドレッシング材を剥がす」「保清」「水疱穿刺」「軟膏・ドレッシング材による保護」の4工程で構成されます。各工程では、感染兆候の確認、滲出液の性状観察、新生水疱の穿刺、被覆材の選択とカットなど、専門的な判断と手技が求められます。潰瘍や水疱が繰り返し発生するため、こうしたケアを頻回に実施する必要があります。
現行制度では、在宅難治性皮膚疾患処置指導管理は別表第八に規定されておらず、週4日以上の訪問看護が認められていませんでした。別表第八は、特掲診療料の施設基準等に定められた「週4日以上の訪問看護が可能となる利用者」の一覧です。現行の項目二には、在宅自己腹膜灌流指導管理、在宅血液透析指導管理、在宅酸素療法指導管理など10種類の在宅指導管理が列挙されていますが、在宅難治性皮膚疾患処置指導管理は含まれていません。この制約により、手厚いケアを必要とする重症患者であっても、訪問看護は原則週3日以内に限られていました。
改定の具体的内容|別表第八への追加
本改定では、別表第八の項目二に「在宅難治性皮膚疾患処置指導管理」が追加されます。改定後の項目二は、現行の10種類の在宅指導管理に在宅難治性皮膚疾患処置指導管理を加えた11種類を対象とします。この見直しにより、在宅難治性皮膚疾患処置指導管理を受けている利用者は、別表第八に該当する利用者として位置づけられます。
別表第八への追加により、対象利用者は週4日以上の訪問看護を算定できるようになります。算定対象となる報酬は、訪問看護ステーションの訪問看護基本療養費、医療機関の在宅患者訪問看護・指導料、同一建物居住者訪問看護・指導料、退院後訪問指導料等です。訪問看護基本療養費および在宅患者訪問看護・指導料は「週3日目まで」と「週4日目以降」で点数が区分されており、改定後は週4日目以降の点数(訪問看護基本療養費6,550円、在宅患者訪問看護・指導料680点等)を算定できます。
本改定の対象は、在宅難治性皮膚疾患処置指導管理料の算定要件を満たす利用者です。算定要件は、表皮水疱症患者または水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症患者であって、難治性の皮膚病変に対する特殊な処置が必要なものとされています。在宅難治性皮膚疾患処置指導管理料は月1回に限り算定する管理料ですが、当該管理を受けていれば訪問看護の頻度制限が緩和される構造となります。
改定の意義|重症患者への手厚いケアの実現
本改定は、重症な難治性皮膚疾患患者に対する在宅ケアの質を高める意義を持ちます。在宅難治性皮膚疾患処置指導管理を受けている利用者は、訪問看護師による手厚いケアのニーズが高い患者群です。週4日以上の訪問が可能となることで、皮膚状態の変化に応じた適時の処置や、感染リスクの早期発見が実現します。
訪問看護ステーションおよび医療機関にとっては、算定機会の拡大という実務的な影響があります。これまで週3日以内に制限されていた訪問について、利用者の状態に応じて週4日以上の訪問を計画できるようになります。実務上は、在宅難治性皮膚疾患処置指導管理料の算定状況を主治医と連携して確認し、訪問看護計画に反映させることが重要です。
利用者と家族にとっては、在宅療養の安心感が高まる改定です。表皮水疱症のような難病を抱える患者では、家族の介護負担が大きく、専門職による頻回な訪問支援が在宅療養の継続を支えます。本改定により、医療依存度の高い難治性皮膚疾患患者が、地域で安心して療養を続けられる体制が整備されます。
まとめ|頻回訪問看護の対象拡大が在宅療養を支える
令和8年度診療報酬改定では、在宅難治性皮膚疾患処置指導管理を受ける利用者が別表第八の対象に追加されます。これにより、表皮水疱症などの重症患者に対して、訪問看護基本療養費等を週4日以上算定することが可能となります。手厚いケアを必要とする難治性皮膚疾患患者の在宅療養を支える、重要な制度見直しです。










