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半月板再生の「セイビスカス注」は医療機器の例で扱う案|中医協654回
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半月板再生の「セイビスカス注」は医療機器の例で扱う案|中医協654回

自己滑膜幹細胞を使う半月板損傷の治療製品について、医療機器の例で償還価格を検討する案が示されました

令和8年8月5日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第654回)で、再生医療等製品「セイビスカス注」の医療保険上の取扱いが議題となりました。再生医療等製品は、医薬品と医療機器のどちらの例で扱うかによって、価格を検討する組織も、収載される基準も変わります。本号では、この製品がどちらの例で扱われる案となったのか、その理由と製品の中身を解説します。

結論として、セイビスカス注は「医療機器の例」により対応し、材料価格基準への収載を審議する案が示されました。この案の根拠は、作用原理が細胞による組織修復と考えられること、そして関節鏡下で損傷部に直接塗布する手術手技を伴うことの2点です。製品は患者自身の滑膜から採った幹細胞を培養したもので、採取・製造・縫合・投与という流れで使います。国内第Ⅲ相試験(対照群のない試験)では、膝の機能スコアの改善量が事前に定めた閾値を上回り、製品と因果関係のある有害事象は発生しませんでした。

取扱い案:医療機器の例で償還価格を検討

セイビスカス注は、医療機器の例により保険適用の手続きを進める案が示されました。この案が了承されると、保険医療材料等専門組織が償還価格を検討します。その結果を踏まえ、中医協総会が材料価格基準への収載を審議する流れです。

この手続きは、平成26年11月5日の中医協総会で了承されたルールに基づきます。このルールでは当面の間、個別の製品特性と薬事承認の結果を踏まえ、医薬品の例か医療機器の例かを判断することになっています。医薬品の例なら薬価算定組織が価格を検討し、薬価基準への収載を審議します。医療機器の例なら保険医療材料専門組織が価格を検討し、材料価格基準への収載を審議します。再生医療等製品に独自の保険上の体系を作るかどうかは、知見の蓄積を待って引き続き検討するとされています。

このルールは、条件及び期限付き承認を受けた製品にも同様に適用されます。令和8年1月14日の中医協総会で、条件及び期限付き承認の製品についても、通常の承認と同じく薬事承認の結果を踏まえて判断することが了承されました。なお、セイビスカス注の承認区分は「新再生医療等製品」で、承認日は令和8年5月8日です。

判断理由:組織修復という作用原理と、手術手技を伴う使用方法

医療機器の例とする案には、作用原理と使用方法という2つの理由があります。

1つめの理由である作用原理は、主構成体である幹細胞による組織修復と考えられています。資料では、作用原理として次の2点が挙げられました。

  • 損傷部と周囲の滑膜組織に接着し、軟骨細胞へ分化して軟骨基質を産生することで、損傷部を癒合させ組織を再生する

  • 損傷部に滑膜組織を誘導し、体内にもともとある滑膜由来の幹細胞の供給を増やすことで、損傷した半月板の再生を促進する

2つめの理由である使用方法は、医療機器と類似しています。本品は、関節鏡下で半月板の損傷部に直接塗布する手術手技を伴います。この手術手技を伴う点が、医療機器と類似した使用方法と評価されました。

製品の概要:自己滑膜幹細胞を培養し、縫合後の損傷部に投与

セイビスカス注は、患者自身の滑膜から採った間葉系幹細胞を培養した製品です。間葉系幹細胞とは、軟骨や骨などさまざまな細胞に分化できる細胞を指します。製品の基本情報は次のとおりです。

  • 販売名:セイビスカス注

  • 一般的名称:ヒト(自己)滑膜由来間葉系幹細胞

  • 類別:ヒト体性幹細胞加工製品

  • 製造販売業者:富士フイルム富山化学株式会社

  • 効能、効果又は性能:半月板切除術が適応となる半月板損傷

  • 承認日:令和8年5月8日

製品の構成は、細胞懸濁液の「主構成体」と、運搬用キットの「副構成体」に分かれます。主構成体は、培養した幹細胞を液体に懸濁したものです。副構成体は、滑膜組織を運ぶ「滑膜組織運搬セット」と、全血を運ぶ「血液採取キット」です。

使用の流れは、医療機関と製造施設の間を往復する4段階です。

  1. 全血の採取と輸送:医療機関で全血を採取し、1~20℃で保存して製造施設へ送る

  2. 滑膜の採取と輸送:膝関節から滑膜組織を採取し、10~22℃で保存して製造施設へ送る

  3. 前処置:患者の状態を考慮し、投与直前までに半月板の損傷部を形成的に修復する(縫合による修復)

  4. 受入れと投与:凍結した製品を受け取り−80℃以下で保存し、投与直前に融解して関節鏡下で1.5×10⁷~9.0×10⁷個を投与する

承認には、適正な使用を確保するための2つの条件が付いています。1つめは、一定数の症例データが集まるまで、全症例を対象に使用成績調査を実施することです。2つめは、適正使用のために必要な措置を講ずることです。具体的には、関連学会の協力で作成された適正使用指針の周知や講習の実施などにより、十分な知識と経験を持つ医師が、体制の整った医療機関で本品を用いるようにします。

臨床成績:膝の機能が大きく改善し、製品による有害事象はなし

国内第Ⅲ相試験(JP301試験)では、膝の機能スコアの改善量が事前に定めた閾値を上回りました。この試験は、半月板切除術が適応となる半月板損傷患者19例を対象とした、非盲検・非対照・多施設共同試験です。縫合による修復後に本品を1回投与し、投与後104週まで有効性と安全性を評価しました。対照群がないため、既存治療と直接比べた試験ではありません。

主要評価項目では、膝の機能を示すLysholm scoreが大きく改善しました。フラップ断裂を有する患者15例で、スクリーニング時から投与後52週時までの変化量(最小二乗平均)は53.5点(95%信頼区間:48.7~58.2点)でした。この信頼区間の下限値は、既存治療の文献報告から事前に定めた閾値22点を上回りました。

副次評価項目でも、改善が確認されました。

  • 膝関節機能(KOOS)と疼痛(NRS):患者自身が評価するすべてのサブスケールで改善した

  • 半月板構造:血流がなく自然治癒が期待できない半月板中央部の完全癒合が、投与後52週時にフラップ断裂を有する患者の35.7%(5/14例)、全体の44.4%(8/18例)で認められた

  • 再手術:投与後2年間の観察期間中に、半月板病変に対する再手術はなかった

安全性では、治験製品と因果関係のある有害事象は発生しませんでした。処置による疼痛は、20名中17名(85.0%、33件)に発生しました。また、製品の不具合は発現しませんでした。

まとめ:医療機器の例で、材料価格基準への収載を審議へ

セイビスカス注は、医療機器の例により対応し、材料価格基準への収載を審議する案が示されました。案の根拠は、細胞による組織修復という作用原理と、関節鏡下で塗布する手術手技を伴う使用方法です。製品は自己滑膜幹細胞を培養したもので、採取・製造・縫合・投与の流れで使います。第Ⅲ相試験では膝の機能スコアの改善量が閾値を上回り、治験製品と因果関係のある有害事象はありませんでした。今後は、保険医療材料等専門組織で検討される償還価格に注目してください。

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