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【令和8年4月】新薬6成分10品目の薬価収載をやさしく解説
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【令和8年4月】新薬6成分10品目の薬価収載をやさしく解説

片頭痛・乳癌・重症喘息・HIVなど6成分の新薬について、算定方式と補正加算のポイントを整理します

令和8年4月8日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第649回)で、4月15日に薬価基準へ収載予定の新医薬品が報告されました。新薬の薬価は、算定方式や補正加算の組み合わせで決まるため、資料の表だけでは値決めの理由が読み取りにくい構造です。本号では、この新薬収載の資料を読み解き、薬価の決まり方と実務上の注意点を整理します。

今回の新薬収載は、6成分10品目がすべて「革新的新薬薬価維持制度」の対象となった点が特徴です。第1に、6成分のうち5成分は類似薬効比較方式(Ⅰ)で、1成分は原価計算方式で薬価が算定されました。第2に、補正加算は4成分に認められ、このうち薬価が実際に上乗せされたのはHIV治療薬「イドビンソ配合錠」(計25%)など3成分でした。第3に、イドビンソ配合錠は、新薬に通常かかる「1回14日分まで」という処方日数制限を設けない例外扱いが提案されました。

収載予定の新薬と算定方式の全体像

今回収載予定の新薬は、内用薬4成分7品目と注射薬2成分3品目の計6成分10品目です。これら10品目の薬価は、既存の似た薬と比べる「類似薬効比較方式(Ⅰ)」を中心に算定されました。以下では、品目の顔ぶれ、類似薬効比較方式、原価計算方式の順に説明します。

収載予定の10品目は、片頭痛から希少疾患まで幅広い領域の薬で構成されています。主な内容は次のとおりです。

1. アクイプタ錠10mg/30mg/60mg(アッヴィ)

  • 効能・効果:片頭痛発作の発症抑制

  • 算定方式:類似薬効比較方式(Ⅰ)

  • 算定薬価:10mg 339.90円/30mg 831.30円/60mg 1,461.60円

2. ラヴィクティ内用液1.1g/mL(オーファンパシフィック)

  • 効能・効果:尿素サイクル異常症

  • 算定方式:原価計算方式

  • 算定薬価:41,455.40円(1瓶)

3. ツカイザ錠50mg/150mg(ファイザー)

  • 効能・効果:化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳癌

  • 算定方式:類似薬効比較方式(Ⅰ)

  • 算定薬価:50mg 2,818.40円/150mg 7,317.00円

4. エキシデンサー皮下注100mgシリンジ/ペン(グラクソ・スミスクライン)

  • 効能・効果:重症・難治の気管支喘息、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎

  • 算定方式:類似薬効比較方式(Ⅰ)

  • 算定薬価:シリンジ・ペンとも1,143,284円

5. サフネロー皮下注120mgオートインジェクター(アストラゼネカ)

  • 効能・効果:既存治療で効果不十分な全身性エリテマトーデス

  • 算定方式:類似薬効比較方式(Ⅰ)

  • 算定薬価:24,932円(1キット)

6. イドビンソ配合錠(MSD)

  • 効能・効果:HIV-1感染症

  • 算定方式:類似薬効比較方式(Ⅰ)

  • 算定薬価:6,610.50円(1錠)

類似薬効比較方式(Ⅰ)は、効能や薬理作用が最も似た既存薬(最類似薬)と1日あたりの薬価をそろえる方式です。たとえば片頭痛薬のアクイプタ錠60mgは、同じCGRP受容体拮抗薬であるナルティークOD錠75mg(1日薬価1,461.60円)と1日薬価をそろえました。同様に、皮下注射型のサフネローは、同じ成分の点滴静注製剤を比較薬としました。サフネローの薬価には、オートインジェクターという注射器部分の原材料費が上乗せされ、24,017円から24,932円となりました。

原価計算方式は、似た既存薬がない場合に、製造原価や営業利益などを積み上げて薬価を決める方式です。この方式が使われたのは、尿素サイクル異常症の治療薬ラヴィクティ内用液のみでした。ラヴィクティには同じ効能の既存薬フェニル酪酸ナトリウムがあります。しかし、この既存薬は薬価収載から10年以上が経過しているため、比較の基準となる最類似薬には当たらないと判断されました。

補正加算が認められた4成分

補正加算とは、比較薬より優れた点や開発上の配慮すべき事情がある新薬に、薬価を上乗せする仕組みです。今回は6成分のうち、ツカイザ、エキシデンサー、イドビンソ、ラヴィクティの4成分に加算が認められました。一方、アクイプタとサフネローには加算がありませんでした。以下では、薬価に実際に上乗せされた加算率の高い順に、各品目の加算とその理由を説明します。

イドビンソ配合錠には、市場性加算(Ⅰ)15%と迅速導入加算10%の計25%が適用されました。市場性加算(Ⅰ)の根拠は、本剤が希少疾病用医薬品に指定されている点です。加算率15%の根拠は、HIV-1感染症治療薬の治験では日本人データがないケースが多い中、事前評価の枠組みによらず国際共同試験に参加し、日本人症例数を積み重ねた点などです。迅速導入加算の根拠は、国際共同試験により開発され、優先審査の対象であり、日本での承認が諸外国と比べて最も早かった点です。迅速導入加算の加算率10%は、国際共同試験における日本人症例数が比較的多い点を踏まえたものです。これらの加算により、薬価は5,288.40円から6,610.50円に引き上げられました。

ツカイザ錠には、有用性加算(Ⅱ)10%が適用されました。この加算の根拠は、臨床試験で本邦の二次治療で効果不十分な患者群に有効性を示した点と、NCCNガイドラインで本剤・トラスツズマブ・カペシタビンの併用療法が乳癌の三次治療の第一推奨とされている点です。加算後の150mg錠の薬価は、さらに外国平均価格調整により6,811.80円から7,317.00円に引き上げられました。外国平均価格調整とは、日本の算定値が英独仏などの外国価格の平均と比べて大きく低い場合に、薬価を補正する仕組みです。

エキシデンサー皮下注には、有用性加算(Ⅱ)5%と小児加算5%の計10%が適用されました。有用性加算(Ⅱ)の根拠は、比較薬ヌーカラが4週に1回投与であるのに対し、本剤は26週に1回投与で済む点です。小児加算の根拠は、12歳以上の小児への用法・用量が明示されている点です。ただし、主たる効能・効果について12歳以上の小児への適応をもつ製剤が既に複数収載されているため、加算率は5%にとどまりました。加算後の1,143,142円に、シリンジ・ペンの特徴部位の原材料費が加わり、算定薬価は1,143,284円となりました。

ラヴィクティ内用液には、有用性加算(Ⅱ)5%と市場性加算(Ⅰ)5%が認められました。しかし、この2つの加算は、実際の薬価には上乗せされませんでした。原価計算方式では、原価の内訳をどこまで開示できたか(開示度)に応じて加算係数が決まります。ラヴィクティはこの加算係数が0とされたため、加算前後の薬価はどちらも41,455.40円となりました。

革新的新薬薬価維持制度と費用対効果評価

今回の6成分は、いずれも革新的新薬薬価維持制度の対象となりました。また、6成分のうちアクイプタとエキシデンサーの2成分は、費用対効果評価の対象にもなりました。以下では、この2つの制度への該当状況を順に説明します。

革新的新薬薬価維持制度は、一定の要件を満たす新薬について、収載後の薬価を維持しやすくする仕組みです。今回6成分が対象となった理由は、品目ごとに異なります。アクイプタは、制度対象品目の収載から3年以内の3番手以内の薬である点が理由です。ラヴィクティとイドビンソは、希少疾病用医薬品に指定されている点が理由です。ツカイザとエキシデンサーは、補正加算が適用された点が理由です。サフネローは、先行収載品の収載から5年以内である点が理由です。

費用対効果評価は、収載後に薬の効果と費用のバランスを検証し、その結果を薬価に反映させる仕組みです。エキシデンサーは、市場規模が大きい品目向けの区分H1に該当しました。企業の予測では、エキシデンサーのピーク時販売額は406億円で、今回の6成分で最大です。アクイプタは、既に評価対象となった品目に類似する品目向けの区分H5に該当しました。アクイプタのピーク時販売額は、企業予測で245億円です。

イドビンソ配合錠の14日ルール例外

新薬には原則として「1回14日分まで」という処方日数制限がかかりますが、イドビンソ配合錠には例外的に制限を設けないことが提案されました。以下では、14日ルールの原則、例外の条件、イドビンソへの当てはめの順に説明します。

14日ルールとは、新薬について、薬価基準収載の翌月1日から1年間、処方を1回14日分までに限る決まりです。この決まりは、使用経験の少ない新薬の安全性を、短い間隔の受診で確認するために設けられています。対象期間中は、長期処方が必要な患者でも、原則として2週間ごとの受診が必要になります。

14日ルールの例外は、平成22年10月27日の中医協了承により、2つの類型が定められています。1つ目の類型は、既収載品の組み合わせである配合剤などで、実質的に1年以上の臨床使用経験がある新薬です。2つ目の類型は、疾患や製剤の特性から14日を超える投薬に合理性があり、投与初期から14日を超える投薬の安全性が確認されている新薬です。1つ目の類型では、処方日数制限を設けません。2つ目の類型では、収載翌月から1年間の処方日数制限を、製剤の用法・用量から得られる最少日数に応じた日数とします。いずれの類型も、品目ごとに中医協の確認を得る必要があります。

イドビンソ配合錠は、2つ目の類型の条件を満たすとしたうえで、例外的に処方日数制限そのものを設けない案が示されました。この案の根拠は、HIV感染症治療薬に特有の安全性確保の枠組みです。HIV治療薬は、限られた臨床成績で迅速に承認されるため、市販後は原則として全例調査が行われます。さらに、HIV治療は専門医療機関への集約化が推奨されており、製薬企業が共同で市販後調査を行う枠組み(平成9年の厚生省通知に基づく)も整っています。このため、資料では、本剤が広範な医療機関で散発的に使われることはなく、患者の安全性確保は網羅的かつ効率的に行われていると考えられる、と整理されています。

まとめ:今回の新薬収載で押さえるべき3点

令和8年4月15日収載予定の新薬6成分10品目は、すべて革新的新薬薬価維持制度の対象となりました。第1に、薬価は5成分が類似薬効比較方式(Ⅰ)で、ラヴィクティのみが原価計算方式で算定されました。第2に、補正加算は4成分に認められ、イドビンソは計25%の加算を受けました。一方、ラヴィクティは加算係数0のため、加算が薬価に反映されませんでした。第3に、イドビンソはHIV治療薬特有の安全性確保の枠組みを根拠に、14日ルールの例外として処方日数制限を設けない案が示されました。医療機関や薬局では、特にイドビンソの処方日数の扱いを、今後の通知で確認しておくと安心です。

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