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令和8年4月施行|オンライン診療受診施設と保険医療機関管理者の新ルールを解説
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令和8年4月施行|オンライン診療受診施設と保険医療機関管理者の新ルールを解説

薬局内開設の是非や管理者の責務・経験要件など、中央社会保険医療協議会の検討内容を詳しく紹介

令和7年12月に公布された医療法等の一部を改正する法律により、オンライン診療と保険医療機関の管理体制に関する新たな規定が設けられました。この改正を受けて、中央社会保険医療協議会では保険診療上の具体的な対応について議論が進められています。

本記事では、中医協総会(第641回)で示された2つの主要論点を解説します。第一に、新設される「オンライン診療受診施設」の保険診療における位置づけです。第二に、保険医療機関の管理者に新たに課される責務と経験要件です。いずれも令和8年4月1日の施行に向けて、療担規則等の改正が検討されています。

オンライン診療受診施設の保険診療上の対応

医療法改正により、患者がオンライン診療を受ける専用の施設として「オンライン診療受診施設」が新たに創設されます。この施設は、公民館や郵便局、駅ナカブース、職場、介護事業所など、医療機関以外の場所に設置できます。

オンライン診療受診施設の定義は、施設の設置者が業として、オンライン診療を行う医師または歯科医師の勤務する医療機関に対して、患者がオンライン診療を受ける場所を提供する施設です。設置者は設置後10日以内に都道府県へ届け出る必要があります。オンライン診療を行う医療機関の管理者は、受診施設の設置者に対してオンライン診療基準への適合性を確認する責務を負います。

厚生労働大臣は「オンライン診療基準」を定め、医療機関はこの基準に従ってオンライン診療を実施することになります。オンライン診療基準には、医師-患者関係や患者合意、診療計画、本人確認、薬剤処方・管理、診察方法といった診療提供に関する事項が含まれます。加えて、医師の所在、患者の所在、通信環境といった提供体制に関する事項も規定されます。

保険薬局内へのオンライン診療受診施設開設に関する論点

医療法上、オンライン診療受診施設の設置場所に制限はありません。しかし、保険薬局内に設置する場合は、医薬分業の観点から複数の課題が生じます。

第一の課題は、保険薬局と保険医療機関の独立性です。薬担規則では、健康保険事業の健全な運営を確保するため、保険薬局は保険医療機関と一体的な構造・経営が禁止されています。保険薬局内で患者が保険医療機関による診療を受ける状況は、この独立性の観点から整理が必要です。

第二の課題は、特定の保険薬局への誘導です。療担規則では保険医療機関が特定の保険薬局へ誘導することが禁止されています。薬局内で患者が受けたオンライン診療で発行された処方箋は、概ね当該薬局で調剤されると想定されます。保険薬局でのオンライン診療受診施設は、当該薬局での調剤へ誘導する効果を生むことになります。

第三の課題は、経済上の利益の提供による誘引です。薬担規則では、患者を紹介する対価として経済上の利益を提供し、自己の保険薬局で調剤を受けるよう誘引することが禁止されています。保険薬局が自らオンライン診療受診施設を開設しない場合でも、運営事業者に場所を提供すれば、同様の誘引効果が生じる可能性があります。

これらの課題を踏まえ、中医協では薬担規則において保険薬局とオンライン診療受診施設の一体的な構造・経営の禁止、経済上の利益の提供による誘引の禁止を明記する方向で検討が進められています。ただし、医療資源が少ない地域への配慮として、医療計画におけるへき地に所在する保険薬局については、一体的な構造・経営の禁止を適用せず、薬局内での受診施設設置を可能とする例外措置も検討されています。

保険医療機関の管理者に課される責務

医療法改正に伴い、保険医療機関の管理者に新たな責務が課されます。この責務は療担規則において規定され、適正な保険医療を効率的に提供するための体制整備を求めるものです。

管理者に課される責務は4つあります。第一は、保険医療機関内の保険医が療担規則第2章「保険医の診療方針等」を遵守するよう監督することです。第二は、厚生労働大臣等に対する申請・届出や診療報酬の請求に係る手続が適正に行われるよう監督することです。第三は、診療録の記載・整備および帳簿・書類等の保存が適正に行われるよう監督することです。第四は、医師・歯科医師・薬剤師その他の従業者の連携を図るとともに、地域の保健医療サービス・福祉サービス提供者との連携を図ることです。

管理者がこれらの責務を果たさず、相当の注意及び監督を尽くしていなかったために診療報酬の不正請求等が行われた場合は、厚生労働大臣が保険医療機関の指定取消しまたは保険医の登録取消しを行うことが可能となります。責務違反の判断は、監査要綱に基づき故意または重大な過失の繰り返しに該当するか否かを個別具体的に判断することになります。

保険医療機関の管理者に求められる経験要件

保険医療機関の管理者には、一定の経験を有することが要件として求められます。健康保険法第70条の2第1項において、管理者は現に保険医であること、および臨床研修修了後に保険医療機関で3年以上診療に従事した経験を有することが定められました。

医師の場合は、2年の臨床研修修了後、保険医療機関(病院に限る)における3年以上の保険医従事経験が必要です。歯科医師の場合は、1年の臨床研修修了後、保険医療機関における3年以上の保険医従事経験が必要です。従事経験は週4日以上常態として勤務し、かつ所定労働時間が週32時間以上であることを基本とします。育児・介護により所定労働時間が短縮されている者には配慮措置が設けられ、週4日常態として勤務する要件を求めないとともに、所定労働時間を週30時間以上に緩和します。

原則的な要件を満たせない場合でも、以下の4類型に該当すれば管理者となることができます。第一類型は、キャリアの事情により要件を満たせない場合です。地域枠や自治医科大学卒業者のうち義務年限中の医師、基本領域の専門医資格を持つ者などが該当します。第二類型は、公務員等として5年以上勤務した場合です。矯正医官や医師である自衛官などが該当します。第三類型は、複数の経験を合算して5年の経験年数がある場合です。第四類型は、管理者の急逝により緊急に保険医療機関を承継するなど、やむを得ない事情がある場合です。

経過措置と届出の留意点

令和8年4月1日の施行に向けて、既存の保険医療機関に対する経過措置が設けられています。

施行日において現に保険医療機関の管理者である者は、3年間は要件を満たさない場合でも引き続き管理者であり続けることが可能です。ただし、この経過措置は同一機関の管理者である間に限って適用されます。施行日において現に臨床研修を修了した医師または歯科医師である者は、保険医療機関において3年以上保険医として診療その他管理及び運営に関する業務を行った経験があれば、管理者となることが可能です。この要件は、法に規定する「病院での診療従事経験」に比べて診療以外の業務も認める緩和した要件となっています。

届出については、既存の保険医療機関の管理者情報は厚生労働省(地方厚生局)で把握済みのため、施行に伴う新たな届出は不要です。施行日以降に管理者を変更する場合は、従来どおり変更届出を行います。届出に際しては、要件を満たすことを証明する書類の添付が求められる予定です。

まとめ

令和7年医療法改正により、オンライン診療受診施設の創設と保険医療機関管理者への新たな責務・要件が定められました。中医協では、保険薬局とオンライン診療受診施設の一体的な構造・経営の禁止を薬担規則で明記する方向で検討が進んでいます。保険医療機関の管理者には、保険医の監督や適正な手続の確保、診療録管理、地域連携という4つの責務が課されます。管理者要件として臨床研修後3年以上の経験が求められますが、代替要件や経過措置も設けられています。令和8年4月1日の施行に向けて、医療機関は新たなルールへの対応準備を進める必要があります。

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