令和8年度診療報酬改定では、2040年頃を見据えた医療機関の機能分化・連携と地域包括ケアシステムの推進に向けて、「円滑な入退院の実現」に関する4つの項目が見直されます。この4項目は、個別改定項目の「Ⅱ-2-2 円滑な入退院の実現」に位置づけられています。①~③は「関係機関との連携強化」「入院前からの支援」「生活に配慮した支援」を軸とした見直しであり、④は「専門人材の柔軟な活用」による入退院支援体制の底上げを図る見直しです。
4項目の概要は以下のとおりです。第1に、入退院支援加算等の見直しでは、地域包括医療病棟等への新点数(1,000点)の新設や退院困難な要因の拡大など7つのポイントが盛り込まれます。第2に、介護支援等連携指導料の見直しでは、従来の400点が「指導料1」に位置づけられ、平時からの連携を評価する「指導料2」(500点)が新設されます。第3に、回復期リハビリテーション病棟における高次脳機能障害者に対する退院支援の推進では、情報把握・退院時説明・文書提供の3つの体制が施設基準に追加されます。第4に、感染対策向上加算等における専従要件の見直しでは、介護施設への助言時間の拡大や他業務従事の容認など3つの柱で専従要件が緩和されます。
① 入退院支援加算等の見直し|7つのポイントで入退院支援を多面的に強化
入退院支援加算等の見直しは、「関係機関との連携」「生活に配慮した支援」「入院前からの支援」を強化する観点から、7つの項目で構成されます。
地域包括医療病棟等における入退院支援加算1の点数が新設されます。 地域包括医療病棟入院料・回復期リハビリテーション病棟入院料・地域包括ケア病棟入院料を対象とした新たな点数区分(1,000点)が設けられます。これらの病棟では「入院前に比べADLが低下し、退院後の生活様式の再編が必要」な患者の割合が多く、入退院支援の負担を適切に評価するための新設です。
地域連携診療計画加算に検査・画像情報提供加算(200点)が新設されます。 地域連携診療計画加算を算定する患者について、検査結果・画像情報等を添付して他の医療機関等に情報提供した場合に加算されます。従来は地域連携診療計画加算と検査・画像情報提供加算の併算定ができなかったため、この課題を解消するものです。
そのほかの見直しとして、以下の5項目があります。 介護保険施設等への誘導による金品収受の禁止が施設基準に追加されます。退院困難な要因に「要介護認定の区分変更が未申請であること」と「家族との連絡困難」が追加されます。入院患者への面会を妨げないよう求める規定が新設されます。入退院支援加算と精神科入退院支援加算の専従職員の兼務が明記されます。医療保護入院等診療料に多職種退院支援の評価(400点)が新設されます。
詳細は以下の記事で解説しています。
【令和8年度改定】入退院支援加算等の見直し7つのポイントを徹底解説
② 介護支援等連携指導料の見直し|新設の「指導料2」は500点で平時からの連携を評価
介護支援等連携指導料の見直しは、介護支援専門員等との連携と入院前からの支援を強化する観点から行われます。従来の介護支援等連携指導料(400点)を「指導料1」として位置づけたうえで、「指導料2」(500点)が新設されます。
指導料2は、入退院支援部門の担当者と介護支援専門員等との「平時からの連携」を評価する新区分です。 入退院支援加算1の届出病棟に入院中の患者が対象となります。入退院支援部門の担当者が、平時から連携体制を構築している介護支援専門員等と共同して説明・指導を行った場合に算定できます。
指導料1と指導料2には、主に3つの違いがあります。 1つ目は対象病棟の限定の有無で、指導料2は入退院支援加算1の届出病棟に限定されます。2つ目は指導を行う担当者の範囲で、指導料2は入退院支援部門の担当者が行います。3つ目は連携相手との関係性で、指導料2は平時から連携体制を構築している相手との共同指導が求められます。なお、同一入院中に指導料1と指導料2を併算定することはできません。
詳細は以下の記事で解説しています。
【令和8年度改定】介護支援等連携指導料が2区分に再編|新設の「指導料2」は500点
③ 回復期リハ病棟における高次脳機能障害者に対する退院支援の推進|3つの体制整備が施設基準に追加
回復期リハビリテーション病棟入院料1~5等の施設基準に、高次脳機能障害患者の退院支援体制に関する3つの要件が新たに追加されます。退院後に必要な障害福祉サービス等につながれない患者が多いという現場の課題を解消する目的です。
1つ目の「情報把握」では、高次脳機能障害者支援センターや障害福祉サービス事業所等の情報をあらかじめ把握することが求められます。 把握すべき情報は、所在地、連絡先、提供サービス等です。
2つ目の「退院時説明」では、高次脳機能障害に該当する患者の退院時に、把握した情報を患者または家族等に説明・提供することが必要です。 対象となる患者は、高次脳機能障害を伴った重症脳血管障害等に該当する患者です。
3つ目の「文書提供」では、退院後にリハビリテーションの継続を予定している患者について、利用予定先への情報提供体制を整備することが求められます。 患者等の同意を得たうえで、3カ月以内に作成したリハビリテーション総合実施計画書等を文書で提供できる体制を整えます。
詳細は以下の記事で解説しています。
【令和8年度改定】回復期リハ病棟に高次脳機能障害の退院支援体制が新要件化
④ 感染対策向上加算等における専従要件の見直し|3つの柱で専門人材の柔軟な活用を実現
感染対策向上加算等における専従要件の見直しは、医療現場の人手不足と業務効率化への対応として、3つの柱で構成されます。専門人材が介護保険施設等への支援と院内業務をより柔軟に両立できるようにすることが目的です。
第1の柱は、介護保険施設等への助言時間の上限拡大です。 感染対策向上加算、緩和ケア診療加算等の専従者が介護保険施設等に赴いて助言できる時間が、月10時間から月16時間に引き上げられます。
第2の柱は、感染制御チーム等の専従者に対する月16時間までの他業務従事の容認です。 専従者の業務時間が所定労働時間に満たない場合、月16時間までに限り他の業務に従事できるようになります。対象は感染制御チームの専従者、抗菌薬適正使用支援チームの専従者、医療安全対策加算1の専従の医療安全管理者です。
第3の柱は、入院栄養管理体制加算における専従管理栄養士の業務範囲の拡大です。 専従の管理栄養士が、病棟での業務に影響のない範囲で、当該病棟から退院した患者の外来栄養食事指導等を行えるようになります。入院から外来への栄養管理の切れ目ない提供が可能になります。
詳細は以下の記事で解説しています。
【令和8年度改定】感染対策向上加算等の専従要件が3つの柱で大幅緩和
まとめ
令和8年度診療報酬改定における「円滑な入退院の実現」は、4つの改定項目で構成されます。入退院支援加算等の見直しでは、地域包括医療病棟等への点数新設や退院困難な要因の拡大など7つのポイントにより、入退院支援が多面的に強化されます。介護支援等連携指導料の見直しでは、平時からの連携を評価する指導料2(500点)の新設により、入院前からの支援が促進されます。回復期リハビリテーション病棟の施設基準には、高次脳機能障害患者の退院支援体制が追加され、障害福祉サービスとの連携が強化されます。感染対策向上加算等の専従要件の見直しでは、3つの柱により専門人材の柔軟な活用が可能になります。これら4項目のうち、①~③に共通するのは「関係機関との連携強化」「入院前からの支援」「生活に配慮した支援」という方向性です。④はこれらとは異なり、「専門人材の柔軟な活用」により入退院支援を含む医療提供体制の底上げを図るものです。各医療機関は、施設基準や算定要件の変更点を確認し、対応を計画的に進めてください。










