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【令和8年度改定】短期滞在手術等基本料の4つの見直しポイントを解説
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【令和8年度改定】短期滞在手術等基本料の4つの見直しポイントを解説

基本料1の点数引下げ、基本料3の対象拡大・DPC統一・入院手術対応加算の新設を詳しく解説

令和8年度診療報酬改定では、手術の外来移行を促す観点から、短期滞在手術等基本料が大幅に見直されます。今回の改定は、基本料1の評価適正化にとどまらず、基本料3の対象手術追加やDPC対象病院への算定拡大、さらには外来実施率の高い手術に対する新たな加算の創設を含む、包括的な改定です。

今回の見直しは、大きく4つのポイントに整理できます。第1に、基本料1の点数が引き下げられ、包括評価の実態に合った水準に適正化されます。第2に、基本料3の対象手術が追加され、既存の手術も実態を踏まえた点数に見直されます。第3に、DPC対象病院でも基本料3を算定する仕組みに変更されます。第4に、外来実施率が特に高い手術について、入院と外来の点数差を縮小する評価の見直しが行われるとともに、医学的に入院が必要な患者に限定した「入院手術対応加算」が新設されます。

改定の背景|手術の外来移行と算定方式の統一

今回の見直しの背景には、短期滞在手術の外来移行が十分に進んでいない現状と、算定方式が医療機関の類型によって分かれている問題があります。

短期滞在手術等基本料は、医療の質の向上と効率化を図るために設けられた仕組みです。日帰り手術を対象とする基本料1と、4泊5日までの入院手術を対象とする基本料3の2種類があります。基本料1は術前・術後の管理や一部の検査を包括的に評価し、基本料3は入院基本料や検査、手術、麻酔などを含む幅広い診療行為を包括しています。

これらの対象手術のうち、水晶体再建術と内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術は、特に算定回数が多い手術です。水晶体再建術(眼内レンズ挿入・その他)は総数165,699件のうち外来実施率が65.1%、内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術(長径2cm未満)は総数164,217件のうち外来実施率が79.1%に達しています。しかし、入院外実施率が0%の病院も一定数存在し、医療機関ごとのばらつきが大きい状況です。

この入院実施の理由として、「原則、外来で実施している」と回答した医療機関では、「臨床上、入院での周術期管理を行う必要性が高いため」が最多でした。具体的には、内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術では出血リスクの高い症例(抗血栓薬内服中、病変数が多い等)が、水晶体再建術では全身麻酔を要する症例(認知症により安静保持が困難等)が挙げられています。

さらに、白内障の水晶体再建術については、OECD諸国の多くが90%以上を外来で実施しているのに対し、日本の外来実施割合は54%にとどまっています。都道府県別でも32%から90%まで大きな格差があり、外来移行の余地が指摘されています。

算定方式の面では、入院で短期滞在手術を実施した場合、DPC対象病院のDPC算定病床ではDPC算定、DPC対象病院以外の病院では基本料3、有床診療所では出来高算定と、医療機関の類型によって算定方法が複数に分かれていました。同じ手術に対して異なる算定方式が適用される状況は、公平性の観点から課題となっていました。

ポイント1|基本料1の評価適正化

短期滞在手術等基本料1は、包括評価の実態に合わせて点数が引き下げられます。

基本料1は、日帰り手術の術前・術後管理と一部の検査を包括的に評価する仕組みです。令和4年度の改定で全身麻酔を伴わない手術における麻酔科医の配置要件が緩和されて以降、特に診療所での算定回数が顕著に増加しました。病院の算定回数は令和3年の約4,000件から令和6年の約15,000件へ、診療所は約6,000件から約124,000件へと急増しています。

しかし、基本料1を算定する場合と算定しない場合の手術実施月の総請求点数の差は、基本料1の点数とほぼ同程度でした。たとえば、内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術の場合、基本料1を算定した場合の総請求点数は8,592点、算定しない場合は7,350点で、その差は1,242点です。基本料1の点数1,359点と同程度であり、包括評価による効率化の効果は限定的であったことが明らかになりました。

こうした実態を踏まえ、「イ 主として入院で実施されている手術を行った場合」の区分は1点増(2,947点→2,948点、および2,718点→2,719点)にとどまる一方、「ロ イ以外の場合」の区分は大幅に引き下げられます。麻酔を伴う手術の場合は1,588点から795点へ、それ以外は1,359点から680点へ、いずれもほぼ半額に引き下げられます。

ポイント2|基本料3の対象手術追加と点数見直し

短期滞在手術等基本料3は、在院日数や医療資源投入量が一定範囲に収斂している手術が新たに対象に追加されます。

新規追加された手術の例として、K048骨内異物除去術の「11 中手骨」(15,207点)、K872-3子宮鏡下有茎粘膜下筋腫切出術等の「2 組織切除回収システム利用によるもの」(16,876点)などがあります。これらはいずれも、在院日数が短く、医療資源の投入量が安定している手術です。

既存の対象手術についても、実態を踏まえた点数の見直しが行われます。手術ごとに個別に評価が見直され、引き上げと引き下げの両方があります。引き上げの例として、K007-2経皮的放射線治療用金属マーカー留置術は30,882点から32,768点に、K282水晶体再建術(眼内レンズ挿入・その他・片側)は17,457点から18,001点に引き上げられます。一方、引き下げの例として、K890-3腹腔鏡下卵管形成術は100,243点から95,723点に、K046骨折観血的手術(手舟状骨)は36,240点から35,216点に引き下げられます。

ポイント3|DPC対象病院でも基本料3を算定

短期滞在手術等基本料3は、DPC対象病院においても算定する仕組みに改められます。

従来、基本料3の算定は「DPC対象病院又は診療所ではないこと」が施設基準とされていました。そのため、DPC対象病院のDPC算定病床では、同じ手術であってもDPCの包括評価で算定し、DPC対象病院以外の病院では基本料3で算定するという、異なる算定方式が併存していました。

今回の改定では、この施設基準が「病院であること」に変更されます。DPC対象病院であっても、入院した日から起算して5日以内に対象手術等を行う場合は、基本料3を算定することになります。この変更により、同じ短期滞在手術に対して、病院の類型にかかわらず統一された評価が適用されます。

なお、診療所については引き続き基本料3の算定対象外です。有床診療所で短期滞在手術を入院で実施する場合は、従来どおり出来高で算定します。

ポイント4|外来実施率が高い手術の評価見直しと入院手術対応加算の新設

基本料3の対象手術のうち、外来での実施率が特に高い手術について、2つの施策が講じられます。第1に、これらの手術の基本料3の点数が見直され、入院で実施した場合と外来で実施した場合の点数差が縮小されます。第2に、これらの手術を外来で一定程度実施している医療機関が、医学的に入院が必要な患者に対して入院で実施した場合の「入院手術対応加算」が新設されます。

この加算は、外来での手術に係る実績を一定程度有している病院を対象とする施設基準が設けられます。対象となる手術は、基本料3の対象手術のうち外来実施率が高い手術です。たとえば、K282水晶体再建術(眼内レンズ挿入・その他・片側)には548点、K721内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術(長径2cm未満)には366点が加算されます。

対象手術は幅広く、眼科手術(涙管チューブ挿入術273点、眼瞼内反症手術206点、眼瞼下垂症手術347点、翼状片手術265点、治療的角膜切除術477点、緑内障手術1,043点など)、血管系手術(経皮的シャント拡張術・血栓除去術767~802点、下肢静脈瘤血管内焼灼術552点、下肢静脈瘤血管内塞栓術645点など)、消化器系手術(痔核手術298点、肛門ポリープ切除術316点など)、整形外科手術(手軟部腫瘍摘出術462点、ガングリオン摘出術411点、手根管開放手術568点など)と多岐にわたります。

この加算の趣旨は、外来で実施可能な手術の外来移行を促しつつ、臨床上入院での周術期管理が必要な患者には適切な評価を確保することにあります。前述のとおり、出血リスクの高い症例や全身麻酔を要する症例など、医学的に入院が必要なケースは一定数存在します。加算の算定には外来手術の実績要件が設けられるため、外来移行に取り組む医療機関が、真に入院を要する患者に対して適切な医療を提供した場合に評価される仕組みです。

まとめ

令和8年度改定における短期滞在手術等基本料の見直しは、4つのポイントで構成されます。第1に、基本料1の「ロ イ以外の場合」の点数がほぼ半額に引き下げられ、包括評価の実態に合わせた適正化が図られます。第2に、基本料3の対象手術が拡大され、既存手術の点数も実態を反映した水準に見直されます。第3に、DPC対象病院でも基本料3を算定する仕組みに統一され、算定方式の公平性が確保されます。第4に、外来実施率の高い手術の基本料3点数が見直されて入院と外来の点数差が縮小されるとともに、入院手術対応加算が新設され、外来移行を促しながら、医学的に入院が必要な患者への適切な評価が確保されます。今回の改定は、手術の外来移行を加速させるとともに、入院での実施が必要な患者への対応を両立させる内容となっています。

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