令和8年6月24日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第651回)で、医療機器1品目と臨床検査2品目の保険適用案が示されました。3品目はいずれも新しい区分や新しい算定ルールを伴うため、価格だけでなく算定要件の確認が欠かせません。本号では、3品目の保険償還価格・保険点数と、請求時に押さえるべき留意事項を整理します。
3品目の要点は「新しい治療・検査の選択肢が、使用場面を限定して保険に組み込まれる」ことです。1つめの吸収性食道用ステントは、償還価格261,000円で令和8年9月1日に収載予定です。2つめのAPOE遺伝型検査は、2,274点で令和8年7月1日に収載予定です。3つめのp16/Ki-67二重免疫染色は、1,067点で令和8年7月1日に収載予定です。
ELLA-BDステントPX
区分:C1(新機能)
価格:261,000円
収載予定日:令和8年9月1日
PrismGuide APOE 遺伝型判定キット
区分:E3(新項目)
点数:2,274点
収載予定日:令和8年7月1日
ベンタナ CINtec PLUS Cytology Dual Stain
区分:E3(新項目)
点数:1,067点
収載予定日:令和8年7月1日
※C1(新機能)は新たな機能区分の設定が必要な医療材料、E3(新項目)は新しい測定項目の検査を指します。
吸収性食道用ステント「ELLA-BDステントPX」:261,000円で新たな材料区分を設定
ELLA-BDステントPX(株式会社パイオラックスメディカルデバイス)は、難治性良性食道狭窄に使う吸収性の食道用ステントです。このステントには、価格、臨床成績、算定ルールの3点で押さえるべき情報があります。
価格は、原価計算方式により261,000円とされました。 この価格は、補正加算なしで算定されています。企業は有用性加算15%を含む383,000円を希望していました。外国平均価格(274,522円)との比は、企業希望の1.4に対し、決定案では0.95です。ピーク時(10年度)の予測販売金額も、企業予測の2.28億円から1.55億円に下がりました。なお、関連技術料は「K522-2 食道ステント留置術」6,300点です。
臨床成績は、企業提出資料で2つの試験結果が示されました。 18例の検証的試験では、留置3か月後の狭窄改善割合が61.1%、嚥下障害スコアの改善割合が66.7%でした。無処置生存期間(再処置なしで過ごせた期間)の中央値は97.4日でした。資料では、従来の治療であるバルーン拡張術の無処置生存期間を20日としています。30例の治験では、狭窄改善割合が36.7%、嚥下障害スコアの改善割合が46.7%、無処置生存期間の中央値が100.0日でした。
安全性では、再狭窄と粘膜過形成が多く見られました。 30例中、再狭窄は23例、粘膜過形成は21例で発生しました。重篤な有害事象は7例で、脳膿瘍と食道左房瘻が含まれます。この結果を受け、適正使用指針では、ステント留置部位に放射線療法や放射線化学療法を施行している患者が禁忌とされました。この適正使用指針は、日本消化器内視鏡学会と日本食道学会が公表予定で、対象患者、実施施設基準、実施医基準などが示されます。
算定ルールは、新設される「245 吸収性食道用ステント」の留意事項で定められます。 留意事項は次の3点です。
使用条件:関連学会の指針に従い、難治性良性食道狭窄の患者に使った場合に限り算定できます。医学的必要性を診療報酬明細書の摘要欄に記載します。
手術あたりの上限:1回の手術につき1個まで算定できます。
患者あたりの上限:患者1人につき原則2個まで算定できます。3個以上算定する場合は、医学的必要性を摘要欄に記載します。
APOE遺伝型検査「PrismGuide APOE 遺伝型判定キット」:2,274点でARIAリスク判定を補助
PrismGuide APOE 遺伝型判定キット(シスメックス株式会社)は、抗アミロイドβ抗体薬を使う前に、副作用リスクを把握するための検査です。この検査についても、価格、臨床性能、算定ルールの順に見ていきます。
点数は、既存の「D006-17 NUDT15遺伝子多型」を準用し、2,274点とされました。 準用とは、新しい検査に既存の検査項目の点数を当てはめる方法です。企業は、NUDT15遺伝子多型の令和8年度改定前の点数(2,100点)2回分にあたる4,200点を希望していました。ピーク時(2年度)の予測販売金額は、企業予測の9.8億円から5.3億円になりました。推定適用患者数はピーク時(6年度)で28,800人です。
臨床性能は、APOEε4保因状況別に見た対照法との判定一致率が100%でした。 この結果は、抗アミロイドβ抗体薬の国際共同第Ⅲ相試験の検体を使った臨床性能試験によるものです。この検査は、全血から抽出したゲノムDNAでAPOE遺伝型をリアルタイムPCR法により判定します。判定の目的は、ARIA(アミロイド関連画像異常)の発現リスクを把握することです。ARIAは抗アミロイドβ抗体薬の投与後にMRIで見られる異常所見で、まれに致命的となります。ARIAの発現割合は、APOEε4を持たない人、1つ持つ人(ヘテロ接合型)、2つ持つ人(ホモ接合型)の順に高くなりました。
算定ルールは、最適使用推進ガイドラインの対象に限られます。 対象は、アルツハイマー病による軽度認知障害・軽度の認知症の進行抑制薬について、厚生労働省のガイドラインが定める患者と投与施設です。算定は、投与の可否や治療方針を判断する目的で測定した場合に、患者1人につき1回に限られます。
子宮頸部病変の検査「ベンタナ CINtec PLUS Cytology Dual Stain」:1,067点でコルポスコピーの要否判断を支援
ベンタナ CINtec PLUS Cytology Dual Stain(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)は、子宮頸部上皮内病変の診断を補助する検査です。この検査も、価格、臨床性能、算定ルールの順に整理します。
点数は、2つの既存項目を合算した1,067点とされました。 合算の内訳は、「N002 免疫染色 8 p16タンパク」720点と「D023 微生物核酸同定・定量検査 10 HPV核酸検出」347点です。企業はp16タンパク2回分にあたる1,440点を希望していました。ピーク時(9年度)の予測販売金額は、企業予測の10.61億円から5.4億円になりました。
臨床性能は、HPV DNA検査より特異度と陽性的中率が有意に高い結果でした。 この検査は、子宮頸部の細胞でp16タンパクとKi-67タンパクを同時に染め分けます。両方が陽性の細胞は、細胞周期に異常をきたした細胞と判定されます。IMPACT Studyの細胞診LSIL群(25~65歳、741例)の結果は次のとおりです。
≧CIN2の検出(本品/HPV DNA検査)
感度:93.0%/90.6%
特異度:35.1%/24.6%
陽性的中率:23.0%/20.1%
≧CIN3の検出(本品/HPV DNA検査)
感度:97.0%/97.0%
特異度:31.5%/22.9%
陽性的中率:6.2%/5.5%
感度は両検査で同程度でした。一方、特異度(p<0.0001)と陽性的中率(≧CIN2:p=0.0002、≧CIN3:p=0.0311)は、本品が有意に高い結果でした。
算定ルールは、対象患者と施設要件の両方で限定されます。 対象は、子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)が疑われ、事前の細胞診でベセスダ分類上LSIL(軽度扁平上皮内病変)と判定された患者です。算定は、コルポスコピーや生検の要否を判断する目的で実施した場合に限られます。施設要件は次の2点です。
医師要件:産婦人科の経験を5年以上有する医師が配置されていること
標榜要件:産婦人科を標榜し、常勤の医師が配置されていること
まとめ:3品目とも「使う場面」を絞った保険適用
中医協第651回総会で示された3品目は、いずれも対象患者や目的を限定したうえで保険に組み込まれます。吸収性食道用ステントは261,000円で、学会指針に沿った使用と個数上限が条件です。APOE遺伝型検査は2,274点で、抗アミロイドβ抗体薬の投与判断のため患者1人1回に限られます。p16/Ki-67二重免疫染色は1,067点で、LSIL判定後の精密検査の要否判断と施設要件が条件です。3品目とも企業希望価格を下回っており、請求時は摘要欄の記載や算定回数の上限に注意しましょう。
出典:中央社会保険医療協議会 総会(第651回、令和8年6月24日)資料「総-3 医療機器及び臨床検査の保険適用について」 ※本号の価格・点数・留意事項は、同資料で示された案に基づきます。臨床成績は企業提出資料を基にした内容です。










