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一部の検体検査で点数が下がる|令和8年度改定「実勢価格を踏まえた適正化」の要点
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一部の検体検査で点数が下がる|令和8年度改定「実勢価格を踏まえた適正化」の要点

アデノウイルス抗原定性179→174点、SARS-CoV-2核酸検出700→650点の背景と現場対応

令和8年度診療報酬改定は、本体プラス2.41%(令和8年度)のプラス改定で決着しました。その一方で、改定の柱のひとつには「効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上」が据えられ、引下げ項目もあわせて並んでいます。引下げ項目を見落とすと、医療機関は改定後の収支見通しを誤ります。本稿は、この引下げ項目のひとつであるⅣ-3-1「① 実勢価格等を踏まえた検体検査等の評価の適正化」について、見直しの根拠、対象、内容、そして現場の対応を解説します。

この項目は、実際の取引価格に合わせて一部の検体検査の実施料等を見直すものであり、資料に示された例はいずれも引下げです。見直しの根拠は、衛生検査所検査料金調査で得られた実勢価格等です。見直しの対象は、保険償還価格と実勢価格の乖離が大きい検査です。見直しの内容は、公表資料に例示された2検査で確認でき、アデノウイルス抗原定性(糞便を除く。)が179点から174点へ、SARS-CoV-2核酸検出が700点から650点へと引き下げられます。医療機関の対応は、算定マスタの更新と、検査委託費の再点検の2点になります。

見直しの根拠:衛生検査所検査料金調査

見直しの根拠は、衛生検査所検査料金調査で把握した実勢価格等です。衛生検査所検査料金調査とは、医療機関が衛生検査所(登録を受けた検査施設)に検体検査を委託する際の実際の取引価格を、国が調べる調査を指します。医薬品の価格を調べる薬価調査、医療材料の価格を調べる材料価格調査と近い役割を、検査分野で担う調査だと理解すると分かりやすくなります。なお、この調査の位置づけの説明は、改定資料そのものの記載ではなく、理解を助けるための補足です。

この調査は、公定価格と実際の取引価格とのズレを可視化します。診療報酬の点数は公定価格であり、いったん設定されると自動では動きません。これに対し、検査の委託価格は、検査機器の性能向上や実施件数の増加により下がっていきます。結果として、点数が実勢価格を上回る状態、いわゆる乖離が生じます。

この乖離の是正が、今回の改定の基本的な考え方です。厚生労働省は、「衛生検査所検査料金調査による実勢価格等を踏まえ、検体検査の実施料等について評価を見直す」と明示しました。中医協の「これまでの議論の整理」でも、同じ文言が市場実勢価格を踏まえた適正な評価の項目に置かれています。

見直しの対象:乖離が大きい検査

見直しの対象は、保険償還価格と実勢価格の乖離が大きい検査に絞られます。すべての検体検査が一律に引き下げられるわけではありません。調査で乖離が確認された検査だけが、個別に評価の見直しを受けます。

乖離が大きくなりやすい検査の傾向は、一般論として次のように整理できます。ひとつは、実施件数が大きく増えた検査です。もうひとつは、検査キットや試薬の供給が安定し、単価が下がった検査です。ただし、個々の検査がどの理由で対象となったかは、改定資料には示されていません。

見直しの内容:例示された2つの検査

見直しの内容は、資料に例示された2つの検査で確認できます。ここで注意すべき点は、この2つが【評価を見直す検査の例】として掲げられたものにすぎないことです。対象となる検査は他にもあり、全容は告示および通知で確認する必要があります。

第1の例は、アデノウイルス抗原定性(糞便を除く。)です。この検査は、現行の179点から174点へと5点引き下げられます。引下げ率は約2.8%にとどまります。

第2の例は、SARS-CoV-2核酸検出です。この検査は、現行の700点から650点へと50点引き下げられます。引下げ率は約7.1%に達し、1件あたりの算定額は500円減ります。

この2例から、影響の大きさを決める要素が読み取れます。影響の大きさは、引下げ幅と実施件数の掛け算で決まります。1件あたりの減少額が小さくても、実施件数の多い検査であれば、年間の影響は無視できない規模になります。

医療機関の対応:マスタ更新と委託費の再点検

医療機関の対応は、算定マスタの更新と検査委託費の再点検という2点に整理できます。どちらも、施行前に着手すべき実務です。

第1の対応は、算定マスタの更新です。令和8年度改定の診療報酬本体は、令和8年6月施行とされています。レセプトコンピュータや電子カルテのマスタが更新されないまま6月を迎えると、返戻や査定の原因になります。ベンダーの更新スケジュールを、早めに確認してください。

第2の対応は、検査委託費の再点検です。今回の引下げは、実勢価格すなわち委託価格の低下を根拠としています。したがって、自院の委託契約が実勢価格の水準に見合っているかを確認する必要があります。委託単価が下がっていないまま点数だけが下がれば、検査部門の採算は確実に悪化します。

この2点に加えて、自院実施と外部委託の比較も検討に値します。検査の点数が下がる局面では、院内実施の固定費と外部委託の変動費のバランスが変わります。実施件数の多い検査ほど、この比較を行う意義は大きくなります。

まとめ

実勢価格等を踏まえた検体検査等の評価の適正化は、実際の取引価格に合わせて検体検査の実施料等を引き下げる見直しです。根拠は衛生検査所検査料金調査であり、対象は乖離が大きい検査に絞られます。例として示された検査は2つあり、アデノウイルス抗原定性(糞便を除く。)が179点から174点へ、SARS-CoV-2核酸検出が700点から650点へ引き下げられます。対象となる検査はこの2つに限られないため、自院で実施する検査の該当有無は告示および通知で確認してください。医療機関は、算定マスタの更新と検査委託費の再点検を、令和8年6月の施行前に進めてください。

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