バイオ後続品使用体制加算は、バイオ後続品の使用を促進する体制を整備した医療機関を評価する入院基本料等加算です。この加算には、算定日と実績要件の2点で運用上の課題がありました。中医協では、入院初日の時点ではバイオ医薬品を使用するかどうかが確定しないケースがあると指摘されています。令和8年度診療報酬改定は、この課題に対応するため、加算の要件を全面的に見直します。本稿では、個別改定項目「Ⅳ-1-② バイオ後続品使用体制加算の見直し」の内容を、現行との対比で解説します。
今回の見直しは、算定日の変更、実績要件の再編、対象成分の追加、掲示要件の拡充という4点で構成されます。第1に、算定日が入院初日から退院日に変更されます。第2に、直近1年間の使用回数100回超という要件が廃止され、少なくとも1成分で規格単位数量50以上という要件に置き換わります。第3に、置換率を判定する対象成分の区分に8項目が加わり、うち7成分が新たに判定の対象となります。第4に、掲示要件にバイオ後続品の導入に関する説明の実施が加わります。あわせて、新たに追加された成分には令和9年5月31日までの経過措置が設けられます。
1. 算定日は入院初日から退院日に変更される
バイオ後続品使用体制加算の算定日は、入院初日から退院日に変更されます。この変更は、入院初日以降にバイオ医薬品を使用する場合の算定方法を明確にすることが目的です。あわせて、告示・通知上の用語が「先発バイオ医薬品」から「先行バイオ医薬品」に改められます。
現行の算定日である入院初日には、バイオ医薬品を使用するかどうかが確定していない場合があります。中医協の議論では、入院初日の時点でバイオ医薬品の使用が明確になっていないケースが現場の実態として示されました。バイオ後続品を最初から使用するか、途中で切り替えるかは、患者の意向にも左右されます。その結果、入院2日目以降に先行バイオ医薬品やバイオ後続品を使用した患者について、算定の可否や算定日の扱いが判然としませんでした。
改定後の算定日である退院日には、入院期間中の使用実績がすでに確定しています。退院日を算定日とすることで、入院初日以降に使用を開始した患者も、加算の対象として整理されます。加算は、退院の日に1回に限り所定点数に加算します。
算定日の変更は、レセプト実務の運用にも影響します。月をまたぐ入院では、加算を計上する月が入院月から退院月に移ります。長期入院の患者では、算定の時期が従来より後ろにずれます。医事課と薬剤部は、この時点のずれを前提に算定漏れの確認手順を組み直す必要があります。
2. 使用回数100回超の要件は規格単位数量50以上の要件に置き換わる
実績要件は、使用回数の合計を問う形から、成分ごとの取扱量を問う形に再編されます。現行の「直近1年間の使用回数の合計が100回を超えること」という施設基準は廃止されます。かわりに、対象成分のうち少なくとも1つ以上の成分で、直近1年間に調剤した規格単位数量の合計が50以上であることが求められます。
現行の施設基準は、使用回数の要件と置換率の要件の2階建てでした。使用回数の要件は、直近1年間の先発バイオ医薬品とバイオ後続品の使用回数の合計が100回を超えることを求めます。置換率の要件は、対象成分ごとにバイオ後続品の規格単位数量の割合が80%以上または50%以上であることを求めます。ただし、直近1年間の規格単位数量が50未満の成分は、置換率の判定から除外されていました。
この2階建ての構造では、置換率の判定が働かない場合が理論上ありえました。すべての対象成分の規格単位数量が50未満であれば、置換率を判定する成分が1つも残りません。それでも使用回数が100回を超えていれば、加算の算定は可能でした。改定資料は要件見直しの理由を明示していませんが、今回の変更はこの点を整理するものと読めます。
改定後の施設基準は、成分ごとの取扱量を必ず問う形に整理されます。告示では、使用回数を問う規定が削除されます。かわりに、実績要件は「バイオ後続品のある先行バイオ医薬品及びバイオ後続品の使用について、十分な実績を有すること」という包括的な規定に改められます。成分ごとの割合の基準も告示から削除され、通知に集約されます。通知では、規格単位数量が50未満の成分について基準未満でも差し支えないとしたうえで、少なくとも1つ以上の成分で規格単位数量の合計が50以上であることを求めます。この結果、置換率の判定は必ず1成分以上で行われます。
3. 対象成分に7成分が加わり、ラニビズマブは80%区分に移る
置換率を判定する対象成分には、80%以上の区分に4項目、50%以上の区分に4項目が加わります。この8項目のうち、ラニビズマブは50%以上の区分から80%以上の区分への移動です。したがって、新たに判定の対象となる成分は7成分です。追加の考え方は、バイオ後続品のある先行バイオ医薬品として新たに収載された医薬品等を、その使用状況に応じて対象に加えるというものです。
80%以上の区分には、ラニビズマブ、インスリングラルギン、ダルベポエチン、フィルグラスチムの4項目が加わります。この区分は、成分全体の規格単位数量に占めるバイオ後続品の割合が80%以上であることを求めます。改定後の対象は、従来の4成分とあわせて8成分になります。
50%以上の区分には、アフリベルセプト、ウステキヌマブ、ペグフィルグラスチム、トシリズマブの4項目が加わります。この区分は、成分全体の規格単位数量に占めるバイオ後続品の割合が50%以上であることを求めます。改定後の対象は、ラニビズマブが抜けたうえで4項目が加わるため、現行の9成分から12成分になります。
改定後の対象成分は、次のとおり整理されます。
■ 80%以上の区分(改定後:8成分)
現行から継続:エポエチン/リツキシマブ/トラスツズマブ/テリパラチド
今回加わる4項目:ラニビズマブ(50%区分からの移動)/インスリングラルギン/ダルベポエチン/フィルグラスチム
■ 50%以上の区分(改定後:12成分)
現行から継続:ソマトロピン/インフリキシマブ/エタネルセプト/アガルシダーゼベータ/ベバシズマブ/インスリンリスプロ/インスリンアスパルト/アダリムマブ
今回加わる4項目:アフリベルセプト/ウステキヌマブ/ペグフィルグラスチム/トシリズマブ
対象成分の拡大は、政府のバイオ後続品の数値目標を背景としています。以下の数値は、中医協および社会保障審議会医療保険部会の資料によるものです。政府は、2029年度末までに、バイオ後続品が80%以上を占める成分数を全体の成分数の60%以上とする目標を設定しました。2024年度時点で80%以上置き換わった成分数は、18成分中4成分の22.2%にとどまります。バイオ後続品への置換え率も、金額ベースで33.7%(令和6年薬価調査)です。対象成分の追加は、この目標と実績の差を縮める施策の一つと位置づけられます。
4. 掲示要件が拡充され、追加成分には経過措置が設けられる
施設基準の掲示要件は、説明の実施状況を含む内容に拡充されます。あわせて、今回追加された成分の割合基準には、令和9年5月31日までの経過措置が設けられます。この2点は、届出済みの医療機関が改定時に確認すべき実務上の要点です。
掲示要件は、現行の1項目から2項目に増えます。現行の掲示事項は、入院及び外来においてバイオ後続品の使用に積極的に取り組んでいる旨です。改定後は、これに加えて、バイオ後続品の導入に関する説明を積極的に行っている旨を掲示します。院内の掲示物は、改定に合わせて記載を差し替える必要があります。
経過措置は、令和8年3月31日時点でバイオ後続品使用体制加算を届け出ている医療機関が対象です。対象の医療機関は、令和9年5月31日までの間に限り、今回加わった8項目について、割合の基準を満たしているものとみなされます。この8項目には、50%以上の区分から80%以上の区分に移るラニビズマブも含まれます。この猶予により、新たに対象となった成分の置換えが進んでいない場合でも、届出を継続できます。
ただし、経過措置の適用には条件が付きます。経過措置により基準を満たす医療機関は、従来から対象であった成分のうち少なくとも1つ以上で、直近1年間の先行バイオ医薬品及びバイオ後続品の規格単位数量の合計が50以上である必要があります。従来の対象成分の取扱量が乏しい医療機関は、経過措置を利用できません。届出の継続を見込む医療機関は、まず従来成分の規格単位数量を確認してください。
改定に向けた準備は、次の4点に整理できます。第1に、直近1年間の成分別の規格単位数量を集計します。第2に、新たに対象となった成分の置換状況を確認します。第3に、院内の掲示物の記載を見直します。第4に、退院日算定への変更に合わせてレセプト運用を見直します。
まとめ:4つの変更点を押さえて改定に備える
令和8年度診療報酬改定は、バイオ後続品使用体制加算の要件を4点で見直します。算定日は、入院初日から退院日に変更されます。実績要件は、使用回数100回超の基準が廃止され、少なくとも1成分で規格単位数量50以上という基準に置き換わります。対象成分は、80%以上の区分と50%以上の区分にそれぞれ4項目が加わり、うち7成分が新たに判定の対象となります。掲示要件は、バイオ後続品の導入に関する説明の実施を含む内容に拡充されます。届出済みの医療機関は、令和9年5月31日までの経過措置の適用条件をあわせて確認してください。










