令和8年度診療報酬改定は、地域支援体制加算の名称と要件を全面的に見直します。この加算は、これまで薬局の立地と規模に応じて要件が定められており、地域における医薬品供給の実態を十分に反映していませんでした。そこで本記事では、地域での医薬品供給を通じた医療提供体制の構築を促進するという改定の狙いにそって、答申で示された見直しの内容を整理します。
見直しの柱は、名称変更、点数体系の再編、算定要件の追加の3点です。第一に、名称が「地域支援体制加算」から「地域支援・医薬品供給対応体制加算」へ改まり、区分が4つから5つに増えます。第二に、点数は新設の加算1(27点)を土台とし、現行の4区分に相当する区分がいずれも現行から27点引き上げられます。第三に、算定要件には後発医薬品の数量割合85%以上が加わるほか、調剤室の面積やセルフメディケーション関連機器の設置といった体制要件が施設基準通知で新たに規定される予定です。これら3点を踏まえ、記事の後半では薬局が届出に向けて確認すべき実務項目を示します。
1. 名称変更と区分再編:加算1の新設が評価体系の土台になる
名称変更と区分再編は、医薬品の供給機能を加算の入口に据える再構築です。改定後の名称は「地域支援・医薬品供給対応体制加算」となり、区分は加算1から加算5までの5つに再編されます。この再編の中心が、新設される加算1です。
新設の加算1は、地域医療への貢献ではなく、医薬品の供給体制だけを評価します。加算1の施設基準は2つです。ひとつは、地域における医薬品の安定供給を確保するために必要な体制を有することです。もうひとつは、後発医薬品のある先発医薬品と後発医薬品を合算した規格単位数量に占める後発医薬品の割合が85%以上であることです。なお、加算1の詳細は、答申資料のⅣ-1「医薬品の安定供給に資する体制に係る評価の新設及び後発医薬品調剤体制加算の廃止」に記載されています。つまり加算1は、廃止される後発医薬品調剤体制加算の受け皿にあたります。
加算2から加算5までの4区分は、加算1の要件に地域医療への貢献を上乗せする構造です。加算2と加算3は、調剤基本料1を算定する薬局が対象です。加算4と加算5は、調剤基本料1または特別調剤基本料B以外を算定する薬局が対象です。この後者の要件は調剤基本料1の薬局も満たしますが、点数が高い加算2・加算3を算定することになります。それぞれの組のうち、下位の区分(加算2・加算4)は「十分な実績」を、上位の区分(加算3・加算5)は「相当の実績」を求めます。
この構造を現行と対応させると、現行の4区分がそれぞれ1つずつ繰り下がったことがわかります。現行の加算1が改定後の加算2に、現行の加算2が加算3に、現行の加算3が加算4に、現行の加算4が加算5に対応します。区分番号だけを見て改定前後を比べると誤読するため、対応関係の確認が欠かせません。
2. 点数体系:既存4区分はいずれも現行から27点上がる
点数体系の見直しは、加算1の27点を全区分に積み上げる形で行われます。改定後の点数は、加算1が27点、加算2が59点、加算3が67点、加算4が37点、加算5が59点です。このうち加算2から加算5までの点数は、対応する現行区分の点数に加算1の27点を加えた額と一致します。
具体的な対応は、次のとおりです。
加算1:27点 ── 新設のため、対応する現行の区分はありません
加算2:59点 ── 現行の地域支援体制加算1(32点)+27点
加算3:67点 ── 現行の地域支援体制加算2(40点)+27点
加算4:37点 ── 現行の地域支援体制加算3(10点)+27点
加算5:59点 ── 現行の地域支援体制加算4(32点)+27点
この一律27点の上乗せは、単純な引き上げではありません。後発医薬品調剤体制加算が廃止されるため、これまで両方の加算を算定していた薬局では、2つの加算が1つに統合された形になります。したがって薬局全体の収入への影響は、後発医薬品調剤体制加算のどの区分を算定していたかによって変わります。
なお、特別調剤基本料Aを算定する薬局では、これらの点数の10分の1が加算されます。この取扱いは現行と変わりません。また、特別調剤基本料Bを算定する薬局は、従来どおりこの加算を算定できません。
3. 算定要件:後発医薬品85%と体制要件の格上げがハードルになる
算定要件の見直しは、既存の届出薬局にも再確認を求める内容です。要件面の変更点は2つあります。ひとつは全区分に共通する後発医薬品85%要件の追加、もうひとつは調剤基本料1以外の薬局に対する体制要件の引き上げです。
後発医薬品85%要件は、加算1の施設基準として全区分に及びます。加算2から加算5までの施設基準は、いずれも「(1)に掲げる施設基準を満たすこと」を最初の要件に置いているためです。つまり後発医薬品の数量割合が85%に届かない薬局は、地域医療への貢献の実績があっても、加算を一切算定できません。
この85%要件には、令和9年5月31日までの経過措置が設けられます。令和8年3月31日時点で後発医薬品調剤体制加算1、2または3の届出を行っている薬局は、この期間に限り85%要件を満たすものとみなされます。したがって現時点で85%に届かない薬局も、後発医薬品調剤体制加算を届け出ていれば当面は算定できます。ただし、このみなしが及ぶのは85%要件だけです。加算1のもうひとつの要件である医薬品の安定供給体制は、経過措置の対象に含まれません。
体制要件の引き上げは、調剤基本料1以外の薬局に影響します。現行の加算3は「地域医療への貢献に係る必要な体制」で足りていました。これに対し改定後の加算4は、加算2と同じ「地域医療への貢献に係る十分な体制」を求めます。この結果、体制要件の水準は調剤基本料1の薬局と同一になります。
4. 施設基準通知で規定予定の内容:3つの体制要件と3つの実績要件
施設基準通知では、体制と実績それぞれについて新たな規定が予定されています。答申の資料は「以下の内容等を規定する予定」として、体制を3項目、実績を3項目示しました。ここで示された6項目は、いずれも「地域医療への貢献に係る体制及び実績」に関する規定です。したがって適用されるのは加算2から加算5までであり、加算1だけを算定する薬局には及びません。いずれも確定した通知ではないため、今後の発出内容を確認する必要があります。
体制については、次の3項目が示されています。第一に、令和8年6月以降に開設する薬局、または改築もしくは増築する薬局は、面積が16平方メートル以上の調剤室を有することです。第二に、セルフメディケーション関連機器を設置していることです。第三に、薬事未承認の研究用試薬・検査サービスを販売または提供していないことです。
実績については、次の3項目が示されています。第一に、調剤時の薬剤一元管理による疑義照会や残薬調整に係る評価項目を一定程度算定していることです。第二に、かかりつけ薬剤師による服薬指導を一定程度実施していること、すなわち服薬管理指導料1のイを算定していることです。第三に、服用薬剤調整支援料2の見直しに伴い、実績要件の項目から服用薬剤調整支援料を削除することです。
これら6項目のうち、調剤室の面積要件だけは対象が限定されます。適用されるのは令和8年6月以降に開設・改築・増築する薬局であり、既存の薬局はそのままでは対象になりません。一方、残る5項目は既存の薬局にも及ぶため、届出内容の点検が必要です。
5. 届出に向けた実務対応:確認すべき5項目
届出に向けた実務対応は、要件ごとに確認と準備を進めることが基本です。ここでは、これまで述べた要件を薬局の作業単位に置き換え、5つの確認項目として整理します。なお、2から5までは加算2から加算5までを目指す薬局が対象です。
後発医薬品の数量割合を確認する。 直近の実績が85%以上かを確認し、下回る場合は経過措置の期限である令和9年5月31日までの達成計画を立てます。
実績要件の項目を入れ替える。 服用薬剤調整支援料が実績項目から外れるため、疑義照会・残薬調整に係る算定回数と、服薬管理指導料1のイの算定回数を確保します。
セルフメディケーション関連機器の設置を検討する。 対象となる機器の範囲は通知で示されるため、発出後すみやかに導入の可否を判断します。
研究用試薬・検査サービスの取扱いを点検する。 薬事未承認の研究用試薬や検査サービスを販売・提供している場合は、取扱いの中止を検討します。
開設・改築・増築の計画を見直す。 令和8年6月以降に着手する場合は、16平方メートル以上の調剤室を確保できる設計かを確認します。
まとめ:3つの変更点を押さえ、経過措置の期限から逆算する
令和8年度診療報酬改定は、地域支援体制加算を「地域支援・医薬品供給対応体制加算」へ改め、医薬品の供給機能を評価の土台に据えます。押さえるべき変更点は3つです。名称変更にあわせて区分が4つから5つに再編されること、点数は新設の加算1(27点)を全区分に上乗せする形で見直されること、そして後発医薬品85%要件と新たな体制・実績要件が加わることです。とりわけ後発医薬品85%要件は全区分に及ぶため、経過措置の期限である令和9年5月31日から逆算した準備が求められます。今後発出される施設基準通知で、体制と実績の具体的な水準を必ず確認してください。










