岡大徳のメルマガ
岡大徳のポッドキャスト
令和8年度改定|吸入薬指導加算の見直し インフルエンザ患者も対象に
0:00
-5:56

令和8年度改定|吸入薬指導加算の見直し インフルエンザ患者も対象に

対象患者・算定間隔・算定要件の変更点を、現行条文と改定案の対比で解説します

吸入薬指導加算は、喘息と慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者に対する保険薬局の吸入指導を評価してきました。一方、インフルエンザウイルス感染症の患者に対する吸入指導は、同程度の時間と労力を要しながら、評価の対象外でした。本稿では、令和8年度診療報酬改定における吸入薬指導加算の見直しを、対象患者、算定間隔、実務対応の3点から解説します。

今回の見直しは、対象患者を広げる一方で、算定間隔を長くする内容です。対象患者には、インフルエンザウイルス感染症の患者が加わります。算定間隔は、3月に1回から6月に1回へ延長されます。これに対して、求めに応じた指導、患者の同意、文書と練習用吸入器等の使用、保険医療機関への文書提供という算定要件は、現行のまま維持されます。

1. 対象患者の見直し|疾患名の限定から吸入薬の投薬による整理へ

対象患者の見直しは、条文から疾患名の限定を外す形で行われます。この整理により、インフルエンザウイルス感染症の患者が新たに算定対象へ加わります。

現行の条文は、対象患者を「喘息又は慢性閉塞性肺疾患の患者であって、吸入薬の投薬が行われているもの」と規定しています。この規定では、疾患名が喘息とCOPDに限定されます。そのため、インフルエンザ治療薬の吸入指導は、どれだけ丁寧に実施しても算定できませんでした。

改定案の条文は、対象患者を「吸入薬の投薬が行われている患者」と規定します。この規定は、疾患名ではなく、吸入薬が投薬されているという事実で対象を判断します。改定資料は、この整理の根拠として、患者が自ら吸入を行う吸入薬の適応症が喘息、慢性閉塞性肺疾患、インフルエンザウイルス感染症の3つのみである点を挙げています。

2. 算定間隔と評価の見直し|3月に1回から6月に1回へ

算定間隔の見直しは、同一患者に対する算定回数を実質的に絞る内容です。対象患者の拡大とあわせて読むと、今回の改定は「広く、ただし頻度は抑えて」評価する方向だと理解できます。

改定案では、算定間隔が3月に1回から6月に1回へ延長されます。この延長により、同一患者への算定機会は実質的に半減します。慢性疾患の患者を継続して支援している薬局では、算定回数が減る可能性があります。

点数は、現行と改定案のいずれも30点と記載されています。個別改定項目は変更箇所に下線を付す形式であり、改定案の条文で下線が付されているのは「6月」の部分だけです。したがって、資料上は点数が据え置かれると読み取れます。ただし「具体的な内容」には「算定可能な間隔及び評価を見直す」と記載されているため、最終的な点数は告示および関連通知で確認してください。

3. 見直しの背景|インフルエンザ吸入指導の実態調査

見直しの背景には、中央社会保険医療協議会(中医協)に示されたインフルエンザ吸入薬指導の実態があります。この実態が、慢性疾患と同様の労力を評価する根拠となりました。

指導時間について、調査はインフルエンザ吸入薬指導が喘息やCOPDの吸入指導と同程度の時間を要すると示しています。指導内容についても、感染症対策として個室を整備する薬局や、確実な吸入を確かめるために薬剤師の面前で実際に吸入してもらう薬局があります。こうした対応には、薬剤師が患者の呼気等を通じてウイルスに曝露する懸念も伴います。

これらの実態を受けて、中医協は「時間と労力が必要なインフルエンザ等の急性疾患に対する吸入指導は評価がされていない」と論点を整理しました。その結果、「令和8年度診療報酬改定に係るこれまでの議論の整理」には、慢性疾患と同様の服薬指導や曝露対策を実施している現状を踏まえて要件と評価を見直す方針が盛り込まれました。

4. 薬局に求められる実務対応|3つの準備

薬局は、インフルエンザ患者への吸入指導を算定へつなげるために、3つの準備を進めてください。いずれも、現行の算定要件がそのまま維持される点を前提とした準備です。

第一に、指導のきっかけと同意を記録する運用を整えます。加算は、患者本人や家族等、または保険医療機関からの求めに応じて、患者の同意を得た場合に算定できます。発熱外来からの処方箋を短時間で応需する場面でも、この確認と記録を省略できません。

第二に、文書と練習用吸入器等を、インフルエンザ治療薬にあわせて準備します。加算の算定には、文書および練習用吸入器等を用いた薬学的管理と指導が必要です。吸入デバイスは製剤ごとに操作が異なるため、喘息やCOPD向けの資材とは別に、該当製剤の説明文書と練習用吸入器を用意しておく必要があります。

第三に、保険医療機関への情報提供と算定間隔を管理する仕組みを用意します。加算は、指導内容を文書で医療機関へ提供して初めて算定できます。あわせて、6月に1回という間隔の管理と、服薬情報等提供料を併算定できない点の確認も必要です。

まとめ|対象は広がり、頻度は絞られる

令和8年度診療報酬改定は、吸入薬指導加算の対象患者を広げ、算定間隔を延ばします。対象患者は、疾患名による限定から吸入薬の投薬による整理へ変わり、インフルエンザウイルス感染症の患者が加わります。算定間隔は、3月に1回から6月に1回へ延長されます。算定要件の骨格は変わらないため、薬局は求めと同意の記録、指導資材の準備、医療機関への文書提供という基本を、急性疾患の患者にも同じ品質で実行する体制を整えてください。

このエピソードについてのディスカッション

Userのアバター

もっと続けますか?