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令和8年度改定|精神科急性期医師配置加算の見直し2つのポイント
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令和8年度改定|精神科急性期医師配置加算の見直し2つのポイント

加算1・3の実績要件と加算2イの対象入院料はこう変わる。届出前に確認すべき点を整理

令和8年度診療報酬改定では、精神科急性期医師配置加算(A249)の施設基準が見直されます。現行の施設基準は、治療抵抗性統合失調症の治療実績を加算の算定病棟だけで数えるため、医療機関全体で整えた治療体制を評価できていません。また現行の施設基準は、加算2イの算定対象入院料を限定するため、拠点的な急性期機能を担う病院の精神病棟を評価できていません。本稿は、この2つの課題に対応する見直しの内容と、届出に向けた実務上の確認点を解説します。

今回の見直しは、算定できる医療機関を広げる2つの要件緩和で構成されます。第一に、加算1及び加算3のクロザピン新規導入件数について、実績の集計範囲が算定病棟から医療機関全体へ広がります。第二に、加算2イの算定対象入院料に、精神病棟入院基本料及び特定機能病院入院基本料の精神病棟の15対1入院基本料が追加されます。いずれの見直しも、これまで要件を満たせなかった医療機関に届出の道を開くため、実績の集計方法と病棟ごとの届出区分を早めに確認する必要があります。

現行の精神科急性期医師配置加算と2つの課題

精神科急性期医師配置加算は、精神科の急性期医療に医師を手厚く配置する体制を評価する加算です。この加算は、加算1、加算2(イ及びロ)、加算3で構成されます。加算1(600点)と加算3(400点)は、急性期の精神疾患患者と治療抵抗性統合失調症患者への密度の高い入院医療を評価し、精神科救急急性期医療入院料と精神科急性期治療病棟入院料1を算定する病棟が対象です。加算2イ(500点)は、精神疾患と身体疾患を併せ持つ患者の入院医療体制を評価し、精神病棟入院基本料(10対1・13対1)と特定機能病院入院基本料(7対1・10対1・13対1)を算定する精神病棟が対象です。今回の見直しが対象とするのは、このうち加算1、加算3及び加算2イです。

加算1及び加算3の第一の課題は、クロザピンの新規導入実績を病棟単位で求める点にあります。クロザピンは、治療抵抗性統合失調症に有効な一方で無顆粒球症などの重篤な副作用を伴うため、CPMS(クロザピン患者モニタリングサービス)への登録をはじめとする医療機関単位の体制整備が欠かせません。現行の施設基準は、この体制を病棟単位の実績(加算1は年6件以上、加算3は年3件以上)で確認しています。しかし中央社会保険医療協議会(中医協)に示された調査では、クロザピンの新規導入が精神病棟入院基本料や特定機能病院入院基本料の病棟など、加算の対象外の多様な病棟でも実施されていました。

加算2イの第二の課題は、算定対象入院料の限定が実態と合わない点にあります。精神疾患と身体疾患を併せ持つ患者の受け入れには、精神病床を有する総合病院や特定機能病院の役割が期待されています。ところが中医協に示されたDPCデータ(令和7年1月時点)では、精神病床を有する特定機能病院又は拠点的な急性期機能を担う医療機関のうち、加算2イを算定している医療機関が101施設、算定していない医療機関が70施設でした。算定していない70施設の内訳は、算定可能な病棟を有する医療機関が36施設、算定可能な病棟を有しない医療機関が34施設です。算定可能な病棟を有しない34施設のうち27施設は、精神病棟入院基本料の15対1入院基本料を算定していました。つまり急性期医療の拠点でありながら、入院基本料の区分を理由に評価の対象外となる医療機関が存在していました。

見直し1:クロザピン新規導入実績を医療機関全体で評価

見直しの1つ目は、加算1及び加算3のクロザピン新規導入件数を、医療機関全体の実績で評価する変更です。施設基準の文言は、「治療抵抗性統合失調症患者に対する入院医療に係る実績」から「当該保険医療機関において治療抵抗性統合失調症患者に対する治療に係る実績」へ改められます。加算1は「相当程度」、加算3は「一定程度」という実績水準の表現が維持されます。一方で実績を数える範囲は、当該加算を算定する病棟から医療機関全体へ広がります。なお告示上は「入院医療に係る実績」が「治療に係る実績」へ改められるため、実績として数えられる範囲の細部は施設基準の通知で確認が必要です。

この変更は、加算の算定病棟以外でクロザピンを導入している医療機関に有利に働きます。従来は、精神科救急急性期医療入院料等を算定する病棟でクロザピンを導入しなければ、件数として数えられませんでした。今後は、精神病棟入院基本料の病棟や特定機能病院入院基本料の病棟で導入した件数も、医療機関全体の実績として合算できます。その結果、病棟の運用実態にかかわらず、医療機関としてのクロザピン提供体制がそのまま評価されます。

ただし具体的な件数の基準は、告示ではなく通知で示される点に注意が必要です。現行の年6件(加算1)及び年3件(加算3)という水準が据え置かれるかどうかは、令和8年度改定の施設基準通知で確認することになります。したがって届出を検討する医療機関は、直近1年間のクロザピン新規導入件数を病棟別に整理し、通知の公表後すぐに医療機関全体の件数へ組み替えられるよう準備しておくと安全です。

見直し2:加算2イの算定対象に15対1入院基本料を追加

見直しの2つ目は、加算2イの算定対象入院料に15対1入院基本料を追加する変更です。追加される入院料は、精神病棟入院基本料の15対1入院基本料と、特定機能病院入院基本料の精神病棟の15対1入院基本料の2つです。この見直しにより、拠点的な急性期機能を担いながら15対1入院基本料を算定してきた精神病棟が、新たに加算2イの算定対象に加わります。

精神病棟入院基本料では、算定要件の注記が「10対1入院基本料又は13対1入院基本料」から「10対1入院基本料、13対1入院基本料又は15対1入院基本料」へ改められます。あわせて施設基準でも、対象となる精神病棟入院基本料の区分に十五対一入院基本料が加えられます。この2か所の改正により、15対1の精神病棟が算定対象として明確に位置づけられます。

特定機能病院入院基本料では、算定要件の注記から入院基本料の区分の限定そのものが削除されます。現行の「精神病棟の7対1入院基本料、10対1入院基本料又は13対1入院基本料を算定するものに限る」という記載は、「精神病棟に限る」という記載へ改められます。施設基準でも同様に区分の限定が外れるため、特定機能病院の精神病棟は入院基本料の区分を問わず加算2イの対象となります。この改正の趣旨は、個別改定項目に明記されたとおり15対1入院基本料の追加にあります。

実務対応:届出前に確認したい3つのポイント

見直しを届出に結びつけるには、3つのポイントを順に確認します。確認すべき対象は、クロザピンの実績、病棟の入院基本料区分、そして加算2イの他の施設基準です。

第一のポイントは、クロザピンの新規導入件数を医療機関全体で集計し直すことです。集計にあたっては、病棟ごとの導入件数と導入日を一覧化し、加算1又は加算3のいずれの水準に届くかを確認します。この作業により、これまで要件を満たせず届出を見送っていた医療機関でも、算定の可能性が見えてきます。

第二のポイントは、精神病棟が算定している入院基本料の区分を確認することです。確認の結果、精神病棟入院基本料の15対1又は特定機能病院入院基本料の精神病棟を算定していれば、加算2イの届出候補になります。この判定は、届出の要否を検討する最初の入口となります。

第三のポイントは、加算2イの他の施設基準を満たせるかを点検することです。加算2イは、当該病棟の常勤医師配置16対1以上、内科・外科等の標榜、入院を要する(第二次)救急医療体制等の設置、精神科リエゾンチーム加算の届出、直近3か月間の新規入院患者の5%以上が精神科身体合併症管理加算の対象、精神科医による搬送患者の12時間以内の診察が毎月5人以上といった要件を求めます。今回の見直しで緩和されるのは算定対象入院料だけであるため、これらの要件は従来どおり満たす必要があります。

まとめ

精神科急性期医師配置加算の見直しは、算定できる医療機関を広げる2つの要件緩和です。加算1及び加算3では、クロザピンの新規導入実績を医療機関全体で評価します。加算2イでは、算定対象入院料に精神病棟入院基本料及び特定機能病院入院基本料の精神病棟の15対1入院基本料を追加します。いずれの緩和も、精神疾患と身体疾患を併せ持つ患者や治療抵抗性統合失調症患者への医療提供体制を全国に広げることを狙いとしています。届出を検討する医療機関は、クロザピンの実績集計と入院基本料区分の確認から着手し、今後公表される施設基準通知で具体的な水準を確かめてください。

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