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【令和8年度診療報酬改定】安心・安全で質の高い医療の推進|9つの重点施策を徹底解説
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【令和8年度診療報酬改定】安心・安全で質の高い医療の推進|9つの重点施策を徹底解説

身体的拘束の最小化、オンライン診療、がん医療など多岐にわたる見直し項目を整理

中央社会保険医療協議会(中医協)総会第640回において、令和8年度診療報酬改定に向けた「これまでの議論の整理(案)」が示されました。本稿では、このうち「Ⅲ 安心・安全で質の高い医療の推進」について解説します。

今回の改定案では、患者安全体制の強化、医療DXの推進、救急・小児・がん・精神医療などの重点分野の充実、感染症対策、歯科医療、薬局機能、イノベーション評価の9分野で見直しが行われます。身体的拘束の最小化に向けた新評価の創設、オンライン診療の拡大、電子処方箋の活用促進など、医療の質向上と患者の利便性向上を両立させる施策が盛り込まれています。

患者にとって安心・安全に医療を受けられるための体制の評価

患者が安心して医療を受けられる体制を整備するため、治療と仕事の両立支援、医療技術の評価見直し、検査体制の充実など多岐にわたる施策が示されています。

療養・就労両立支援指導料については、対象患者、算定可能な期間及び評価が見直されます。健康診断や検診、予防接種等の受診後に保険診療を実施する場合の初再診料等の算定方法も明確化されます。

手術等の医療技術については、医療技術評価分科会の検討結果を踏まえた新規技術の評価が行われます。新規医療材料等として保険適用され現在準用点数で行われている医療技術にも新評価が設けられます。外保連試案を参考にした評価見直し、整形外科領域のKコード分類の見直しも実施されます。ロボット手術については、年間手術実績に応じた新評価が創設され、高額医療機器の効率的活用と集約化が図られます。

全身麻酔の評価は、麻酔の深度、気道確保デバイスの有無及び麻酔管理体制に応じた評価に見直されます。ゲノム医療については、遺伝学的な情報に基づく療養指導の回数等の要件が見直されるとともに、指定難病の診断に必要な遺伝学的検査の対象疾患が拡大されます。

検査関連では、フィブリノゲン製剤の適正使用のための迅速測定、新規臨床検査として保険適用され現在準用点数で行われている検査、骨粗鬆症治療管理での骨塩定量検査、近視進行抑制薬の処方に係る検査について評価の見直しや新設が行われます。検体検査管理加算の要件見直しやカルタヘナ法遵守のための新評価も導入されます。

心不全治療については、急性心不全で入院した患者に対する早期からの多職種介入と退院後の地域連携による治療継続に新評価が設けられます。透析医療では、人工腎臓における災害対策やシャントトラブル連携について新評価が設けられます。経皮的シャント拡張術・血栓除去術については、シャント閉塞及び高度なシャント狭窄とその他の場合の治療効果の違いを踏まえ算定要件が見直されます。腹膜透析についても、基幹病院とかかりつけ医師の連携により在宅自己腹膜灌流指導管理料の算定要件が見直されます。

身体的拘束の最小化の推進

身体的拘束の最小化は、患者の尊厳を守る観点から重要な取組です。

質の高い取組を行う場合の体制について新たな評価が創設されるとともに、身体的拘束を行った日の入院料評価が見直されます。認知症ケア加算については、認知症を有する患者へのアセスメントやケアの充実を図りながら身体的拘束の最小化を推進する観点から評価が見直されます。

医療安全対策の推進

医療安全対策加算については、患者への安心・安全な医療提供を更に推進する観点から、要件及び評価が見直されます。

アウトカムにも着目した評価の推進

医療の質を客観的に評価するため、アウトカム評価の推進とデータ活用が進められます。

回復期リハビリテーション病棟では、リハビリテーション実績指数の算出方法及び除外対象患者の基準が見直されます。入院基本料や特定入院料における平均在院日数、在宅復帰率の計算対象も明確化されます。短期滞在手術等基本料3を算定する患者は特定入院料の患者割合等の計算から除外されます。また、1病棟で届け出ることのできる特定入院料の種類数が明確化されます。

データを活用した診療実績による評価の推進

データ提出加算に係る届出を要件とする入院料の範囲が拡大されます。外来医療についてもデータ提出に係る評価が見直されます。在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料及び終夜睡眠ポリグラフィーの要件・評価も見直されます。

医療DXやICT連携を活用する医療機関・薬局の体制の評価

医療DX関連施策の進捗状況を踏まえ、診療録管理体制加算、医療情報取得加算及び医療DX推進体制整備加算の評価が見直されます。普及した関連サービスの活用を基本としつつ、更なる活用による質の高い医療提供が評価されます。

電子処方箋システムによる重複投薬等チェックの利活用の推進

向精神薬の処方実態を踏まえ、情報通信機器を用いた診療において向精神薬を処方する場合には、電子処方箋管理サービス等による重複投薬等チェックが要件化されます。情報通信機器を用いた医学管理において重複投薬等チェックを行い電子処方箋を発行する場合には、新たな評価が設けられます。

外来、在宅医療等、様々な場面におけるオンライン診療の推進

情報通信機器を用いた診療の施設基準には、チェックリストのウェブサイト等への掲示及び医療広告ガイドラインの遵守等が追加されます。

D to P with Nによるオンライン診療については、診療時の看護職員の訪問に関する評価、訪問看護療養費等との併算定方法、検査及び処置等の算定方法が明確化されます。D to P with Dについては、遠隔連携診療料の対象疾患が見直されるとともに、入院及び訪問診療における新評価が創設されます。

情報通信機器等を用いた外来栄養食事指導について、電話による指導の評価が見直されるとともに、情報通信機器による指導のみでの算定も可能となります。不随意運動症に対する脳深部刺激療法の遠隔プログラミングについても新評価が設けられます。

在宅療養指導料については、在宅自己注射指導管理料を算定している患者及び慢性心不全の患者に係る要件が見直されます。プログラム医療機器等指導管理料にも情報通信機器を用いた場合の規定が設けられます。

質の高いリハビリテーションの推進

リハビリテーションの質向上のため、退院時指導、医療機関外でのリハビリ、訓練内容に応じた評価など多面的な見直しが行われます。

退院時リハビリテーション指導料の対象患者の要件が見直されます。医療機関外における疾患別リハビリテーション料の上限単位数も見直されます。運動器リハビリテーション料等の算定単位数上限が緩和される対象患者も見直されます。

疾患別リハビリテーション料については、訓練内容に応じた評価に見直されます。リハビリテーション総合計画評価料の評価等は書類簡素化の観点から見直されます。リンパ浮腫複合的治療料も実態に即した評価に見直されます。

発症早期からのリハビリテーション介入の推進

入院直後における早期リハビリテーション介入を推進する観点から、より早期に開始するリハビリテーションが評価されます。

土日祝日のリハビリテーション実施体制の充実

休日であっても平日と同様のリハビリテーションを推進する観点から、休日におけるリハビリテーションについて新たな評価が設けられます。

重点的な対応が求められる分野への適切な評価

救急、小児・周産期、がん、精神、難病の各分野について、専門性に応じた評価の見直しが行われます。

救急医療の充実

救急医療機関における夜間休日を含めた応需体制の構築を踏まえ、院内トリアージ実施料及び夜間休日救急搬送医学管理料等が見直されます。救急外来医療を24時間提供するための人員・設備・検査体制等に応じた新評価が創設されます。

救急患者連携搬送料については、高次救急医療機関と他の医療機関との連携強化、適切な転院搬送の推進の観点から要件及び評価が見直されます。

小児・周産期医療の充実

周産期医療体制の適切な維持のため、母体・胎児集中治療室管理料の要件が見直されます。新生児特定集中治療室管理料2については、低出生体重児の新規入院患者数に関する実績基準が見直されます。

成人移行期の小児について、難病外来指導管理料の要件が見直されます。小児入院医療管理料等及び小児科外来診療料は、高額な検査・薬剤の必要性等を踏まえて見直されます。6歳以上の小児の薬剤調製における無菌製剤処理加算の評価対象も見直されます。

分娩件数の減少に伴う産科病棟の混合病棟化等を踏まえ、母子の心身の安定・安全に配慮した産科管理や妊娠・産後を含む継続ケアの体制について新評価が設けられます。

質の高いがん医療及び緩和ケアの評価

外来腫瘍化学療法診療料については、要件の見直しとともに皮下注射を実施した場合の評価も行われます。がんゲノムプロファイリング評価提供料及び検査は、エキスパートパネル省略可能な症例の知見を踏まえて見直されます。

強度変調放射線治療(IMRT)については、遠隔の医師と共同で放射線治療計画を作成できるよう医師配置の要件が見直されます。がん患者指導管理料は、意思決定支援や心理的不安軽減の観点から算定要件が見直されます。

遺伝性乳癌卵巣癌症候群について、乳癌・卵巣癌未発症患者への予防的手術のエビデンスを踏まえ、BRCA1/2遺伝子検査及びがん患者指導管理料の要件が見直されます。抗がん剤ばく露リスクを踏まえ、閉鎖式接続器具使用時の無菌製剤処理料に新評価が設けられます。

緩和ケアについては、末期呼吸器疾患患者及び終末期腎不全患者を対象に加えた上で、緩和ケア病棟入院料の包括範囲が見直されます。

質の高い精神医療の評価

急性期等の入院料における精神保健福祉士、作業療法士又は公認心理師の病棟配置について新評価が設けられます。小規模医療機関や病床削減に取り組む医療機関が、多職種配置による質の高い入院医療と地域定着支援を一体的に行う場合の新評価も創設されます。

精神科リエゾンチーム加算の要件・評価が見直されます。精神病床入院患者の高齢化に伴う身体合併症への対応として、精神科以外の医師による継続的管理の新評価が設けられます。維持透析を必要とする精神病床入院患者への対応も推進されます。

精神科救急医療体制加算の要件・評価が見直されます。精神科救急急性期医療入院料等については、医療保護入院等の割合に係る要件が緊急的な入院医療の必要性等に関する指標に見直されます。精神疾患と身体疾患を併せ持つ患者の医療提供体制普及のため、精神科救急急性期医療入院料等の要件も見直されます。

長期入院患者の地域移行推進のため、人員配置基準の低い精神病棟入院基本料の長期入院患者評価が見直されます。精神疾患と身体疾患を併せ持つ患者、急性期の精神疾患患者及び治療抵抗性統合失調症患者の医療提供体制普及のため、精神科急性期医師配置の要件が見直されます。

通院・在宅精神療法の要件・評価が見直されます。同一の精神保健福祉士による継続的な伴走支援を推進するため、病棟に専従配置されている精神保健福祉士に係る要件が見直されます。心理支援加算、認知療法・認知行動療法の要件・評価も見直されます。

児童思春期支援指導加算、早期診療体制充実加算の要件・評価が見直されます。情報通信機器を用いた精神療法についても、新たに策定された指針を踏まえて要件が見直されます。公認心理師の養成状況を踏まえ、臨床心理技術者に係る経過措置も見直されます。

難病患者等に対する適切な医療の評価

脳死臓器提供管理料については、認定ドナーコーディネーターの配置による効果や脳死判定基準改正を踏まえて評価が見直されます。臓器採取術及び臓器移植術、臍帯血移植についても新評価や評価見直しが行われます。

抗HLA抗体スクリーニング検査の対象患者は、臓器生着率向上の観点から見直されます。

感染症対策や薬剤耐性対策の推進

抗菌薬の適正使用推進のため、薬剤感受性検査の要件が見直されるとともに、一部感染症に係る検査の要件も見直されます。感染対策向上加算1については、微生物学的検査室を有する医療機関への新評価が設けられます。

結核病棟の維持が困難になっている状況を踏まえ、ユニット化病床やモデル病床等における重症度、医療・看護必要度等の対象患者範囲が見直されます。特定感染症入院医療管理加算及び特定感染症患者療養環境特別加算の対象疾病範囲も見直されます。

口腔疾患の重症化予防等の生活の質に配慮した歯科医療の推進

障害者歯科治療を専門に担う歯科医療機関の歯科医学的管理について新評価が設けられます。歯科疾患管理料、小児口腔機能管理料及び口腔機能管理料の要件・評価が見直され、対象患者も拡大されます。

新製有床義歯管理料の算定単位、歯周病安定期治療及び歯周病重症化予防治療の評価体系、小児保隙装置の調整・修理・製作についても見直しや新評価が行われます。

歯科矯正治療については、連続する3歯以上の先天性欠損歯を有する者が対象に追加されます。周術期等口腔機能管理計画策定料等の評価見直し、口腔機能指導加算の評価体系見直し、歯科技工士連携加算の評価範囲・施設基準見直しも行われます。

CAD/CAMインレー・冠の活用促進のため、大臼歯の咬合支持等の要件やクラウン・ブリッジ維持管理料の対象範囲が見直されます。局部義歯のクラスプ・バーは原則として貴金属材料以外を使用する運用に見直されます。CAD/CAM冠製作時の光学印象、3次元プリント有床義歯についても新評価が設けられます。

歯科点数表については、解釈が示されていない内容の明確化、類似項目や算定実績がない項目の整理、算定告示と算定要件の整合、麻酔薬剤料が算定できない項目の整理が行われます。歯科固有の技術についても、医療技術評価分科会等での検討結果、歯科技工料調査の結果、臨床現場の実態を踏まえた評価・運用の見直しが行われます。

地域の医薬品供給拠点としての薬局に求められる機能に応じた適切な評価

「患者のための薬局ビジョン」策定から10年が経過した現状を踏まえ、調剤基本料が見直されます。立地依存から脱却し薬剤師の職能発揮を促進する観点での見直しです。特別調剤基本料Aの対象薬局の要件、地域支援体制加算の要件も見直されます。

調剤管理料については、内服薬の調剤日数による4区分が見直されます。重複投薬・相互作用等防止加算等、かかりつけ薬剤師指導料及び服薬管理指導料の評価体系も見直されます。

保険薬局におけるインフルエンザ吸入薬指導について、吸入薬管理指導加算の要件・評価が見直されます。服用薬剤調整支援料も要件・評価が見直されます。調剤報酬の簡素化のため、類似する算定項目の統合も行われます。

イノベーションの適切な評価や医薬品の安定供給の確保等

医薬品・医療機器等のイノベーションの適切な評価と安定供給確保のため、「令和8年度薬価制度改革の骨子」及び「令和8年度保険医療材料制度改革の骨子」に基づく対応が行われます。

まとめ

令和8年度診療報酬改定における「安心・安全で質の高い医療の推進」は、患者安全体制の強化から医療DXの推進、重点分野の充実まで9分野にわたる包括的な見直しとなっています。身体的拘束の最小化やオンライン診療の拡大など患者の権利と利便性に配慮した施策、データに基づくアウトカム評価の推進、救急・小児・がん・精神医療など専門分野の充実が図られます。医療機関においては、今後の告示・通知等を注視し、算定要件や施設基準の変更に対応した体制整備を進めることが求められます。

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